「人生がピークを迎えるときにその人を祝福するための演奏は、演奏する者と聴く者と両方にとって魂が震えるような力となります。見事な演奏でした。」ファンファーレ!ふたつの音 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
人生がピークを迎えるときにその人を祝福するための演奏は、演奏する者と聴く者と両方にとって魂が震えるような力となります。見事な演奏でした。
ノーマークの作品だったのですが、ポスター画像をみて
印象に残り、作品紹介を読んでいる内にどんな作品なのか
気になってしまったので観てみることに。
さあ鑑賞開始。
主役は世界的なスター指揮者の男。名はティポ。
練習中に倒れてしまい病院で検査をしたところ白血病…。
根本的な治療には骨髄移植が必要。 …痛そう
しかし、当然ながらドナーが居ないと話にならない。
さらに、適合するドナーでなければいけない。
血のつながった相手なら適合率は高い。1/4とか?
全くの他人が相手となるとかなり低い。数万分の1…とか。
ティポには妹が一人いる。渋る妹を説得し、適合検査。
結果は、「不適合」…。
" 1/4の確率でもダメだったか… "
妹に礼を言いながらも、つい無念が口をついて出る。と
" いいえ。 数万分の1の結果で、ダメだったわ "
妹とは血の繋がりが無かった事を知るティポ。
母が、追いかけるように説明を加える。
" あなたには、血を分けた弟がいるの "
希望の糸が、またわずかに繋がった。
実母と弟の暮らす場所へと、車を走らせるティポ。
会えた。弟も兄がいる事実を知らなかった。
突然現れた「兄」に「骨髄が欲しい」と頼まれた弟。
もう一人の主役。名はジミー。仕事は…料理人…?
" そんな話は聞いたこともねぇし "
" オレとは違う上品な世界の人間が "
" こともあろうに骨髄をくれだと? "
色々な情報と感情が絡まりあって、脳内大混乱の弟。…分かる
そんな弟を何とか必死に説得する兄。まさに命がけだ。
最後は納得した弟の協力を得て、手術も無事に乗り越える。
いやー、良かった良かった。
んで、復活コンサートも大成功。 で
兄弟でヒシと抱き合う感動のフィナーレ!
…って え? 違う? @o@;;
はい。違いました。
手術に成功し、指揮者に復帰するまでは良かったのですが…
# 移植手術に成功し復活した(ハズ)の兄 ← あっ ネタばれ
# 「絶対音感」の持ち主と分かった弟の、心境の変化や
# 弟の働いていた工場をめぐる閉鎖問題や
# そこで生活していた人たちの失業問題などなど うーん
次第に先行きが見えなくなってきてしまい…
さあ、どうなる。兄弟の、そしてみんなの将来は?
という、あれまぁ な展開になりました。@▲@;;
◇
観た直後は、納得感を感じたのですが
時間経過後に振り返ってみると、どうにも " もやもや " した
気分になってしまいました。@△@
鑑賞中は、展開の続きが気になって観ていましたので
面白い作品たったとは思います。
◇あれこれ
■寂れていく炭鉱の町
この作品、実話ベースなのかフィクションなのか。
「炭鉱の衰退」が描かれるということは、現代のお話と
いう事では無さそうな気がしたのですが、ならばいつの
時代を描いた話だったのでしょう。@△@?
それともフランスでは、最近までの石炭採掘が盛んに行わ
れてきたということなのか。はて。
■カントリーダンス
ジミーたちの炭鉱楽団を応援するワケでもなく、むしろカント
リーダンスの奨励に力を入れているのが、ジミーたちの暮らす
町の女性市長。で、カントリーダンスって何?と調べてみると
「17世紀から18世紀にイングランドで流行した民族舞踊」
だそうで
「カントリー・ハウス(領主の館)で踊られたことに由来するとされている」
のだそうです。 (ウィキ先生ありがとう♡)
特段、フランスに縁のある舞踊でもなさそうです。
これに注力する市長は、何を考えているのかが分かるかと
思ったのですが、調べても良く分かりませんでした。
■楽団の制服
兄(ティボ)の演奏会場に、弟(ジミー)たち炭鉱楽団
メンバーが全員(?)特別席?のような席に座ってました。
良くチケット購入できたなぁ とか
あの揃いの制服で良く入れたものだ とか感心。
そこから始まるボレロの口演奏に、途中から兄のオケが
合流して大合奏・大合唱になる場面。
理屈は抜きで、良かった。
■ファンフーレ って
「主に式典などで演奏される、ごく短い華やかな楽曲」
ということらしいのですが (ウィキ先生♡)
演奏場面を具体的に想像してみました。
うーん あっ あれですか?
昭和の某アニメで、ちびメカ発進のときに流れる音楽。
♬ ♫ ♫ ♬ ♫ ♫ ♬ ♫ ♫
" 今週の びっくりどっきりメカ "
毎週替わるメカが大好きでした。やったー。
◇最後に
エンディング直前の演奏は、サプライズとして良かった。
無事に兄へのはなむけの演奏となったでしょう。
けれど…
これで終わり?
という感覚が残ったのも正直な感想で…。
兄は多分、その後亡くなったのでしょうし
弟は、どうなってしまうのやら。再婚する?
工場は閉鎖。食堂の仕事も、多分ない。
指揮者で食って行ける? たぶん無理
演奏者で食べて行ける? これも難しそう。
あの楽団全員として、やっていける? うーん どうだろう。
と。
エンディング後の、明るい展望が思い浮かばないのです。
華やかなフィナーレを飾るコンサートではありました。
けれど、どうしても消える前の一瞬の輝きなのでは?
と思ってしまうのです…。
あの地点から、どうやって未来へと歩きだすのだろうかと
いくら考えても、その先が思い浮かんでこないのが悲しい。
感動的なエピソードで終わったけれども
そんなこんなで、まだ悶々状態が続いてます。
(最後に が長くなってしまいました)
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
ティボが炭鉱楽団に肩入れしていたことはニュースショーなんかで美談ぽく語られていたので、炭鉱楽団一同末席にご招待されたんだろうと思っていました。持ち込む楽器もないからサプライズにはうってつけかな、と。
共感ありがとうございます。
テンガロンハットをかぶっていた所からも、アメリカかぶれへの批判と見ました。
家族→生活→生命と不幸が段階を上げていくのはちょっと辛かったですね。
レビュー目を通してくださり、有難うございます
私と重なるジャンルがお好きなようで、フォローもさせて頂きます^_^
単館系の映画はスタッフさんのお手製コメントや、映画評の切抜きとか掲示してあって、鑑賞後のデザートとして必ず読んでます
(混雑していたら、スマホで撮影し後で熟読)
この映画のインタビュー記事は、まさにデザート
確かにあのラストだと、何ひとつ救いがないままに終わりますよね
記事中に”子どもの楽団の指揮者”とだけ書いてあって、今改めて物語として構成を考えると
ジミーが学校の食堂で働いてたことがヒントかな、と
学校(中学か高校?)で昼間は学食、夕方から学校の吹奏楽部で指揮するみたいな、ダブルワークなら可能かもしれませんね
ティボのように世界を飛び回る一流指揮者にはなれないけれど、子どもが好きそうなジミーにはピッタリかもしれません
(久しぶりに会えた我が子は小遣い貰ったら帰ってしまう薄情者でしたが…)
音楽で生計を建てるまではいかないけど、子どもに教えることで音楽と共に歩く人生になりそうです
映画であれど、そう簡単に薔薇色の人生にならない所が、フランス映画らしいかもしれません
監督のインタビュー記事を読んだので、その後の顛末を私のレビューに書きました
よろしければご一読ください^_^
そんなに単純に物事がいい方に変わらない、現実的な映画なのに、ラストシーンが良かったですね♪



