ファンファーレ!ふたつの音のレビュー・感想・評価
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音楽で語り合う兄弟の絆
こういう展開かな?と予想していた展開に全くならず、2回ぐらい予想外な展開になり、最後は思わず条件反射で「ブラボー!」って言って拍手したくなる衝動を必死に抑えた。
まさかこんなラストが待ち受けているなんて思いもせず、涙もろい私はあんなことされたら秒で泣いたよね。
生き別れになった兄弟が、兄の病気をきっかけに再会し、そこから始まる交流の描き方が本当に素晴らしい。
スマートな兄と無骨な弟。裕福な兄と貧しい弟。育った環境は真逆で、複雑な思いもあるけれど、そんなことを越えて音楽で絆を深めていく。
ぎこちない会話も、音楽になったら饒舌になり、硬い表情も柔らかくなる。音楽の力ってすごいなと思わせられる。
現実はうまくいかないことが多くて、急に不幸は降りてきたりもするけれど、それでも諦めずに助け合って、支え合って、何度だって立ち上がる。
芸術を愛するフランスだからこそ、芸術のもつ力を信じた作品のように感じた。
現在公開中の「8番出口」で不気味さの演出として使われている「ボレロ」が、作品違うだけでこうも違った曲に聞こえることにも驚き。
「ボレロ」は、孤独な踊り子が周囲を巻き込みながら舞い踊る様子を描いた曲。そんな「ボレロ」に合わせて、ひとりじゃないよと伝えるかのような圧巻のラストを是非映画館で体験してほしい。
ひとつ苦言を言うなら、エンドロールどうした?
こんなに素敵な音楽を聞かせてくれたのに、急にぶつ切り音楽で終わってしまって戸惑った。
幅広い観客を魅了する語り口と重厚さのバランスが秀逸
幼い頃に生き別れた兄と弟。そんな二人の思いがけない邂逅を描いたこの物語は、興味深いことにオーケストラとブラスバンド、クラシックとポピュラー音楽、さらには中央と地方、経済的格差など、様々な壁のようなものを融解させながら、誰しもを惹き込む語り口にて展開していく。私はクールコル監督がかつて脚本を務めた『君を想って海をゆく』(09)を愛してやまない一人だが、主人公の専門分野がこれまで向き合ってこなかった領域と重なり合い、そこで新たな自己発見が生じるという流れは本作にも通底しているように思えた。新旧様々な楽曲レパートリーが目と耳を充実した気持ちに浸らせる中、後半は地方経済や産業にもヒューマニズムあふれる視線が注がれる。そのタッチは懐かしき英国の名作『ブラス!』をも彷彿とさせるかのよう。音楽というものを一つの糸口として、やがて社会全般や労働者の尊厳をも包摂するドラマへ発展していく流れを大いに堪能した。
肩透かし
音楽は素晴らしい。
予告で想像するような単純感動ストーリーにしないのも良い。
血のつながりのない家族→弟との邂逅→闘病生活→寛解ののち音楽を通した交流→感動のボレロのラスト、とかなんとかだと予想していたので、それが裏切られたのは良かった。
が。
エピソードが細切れで感動に浸る間がない。
工場縮小の理由や背景がよくわからなくて労働運動に感情移入しづらいし、コンクールでやらかしたらそりゃダメだよねだし、兄弟の確執も中途半端だし、何より最後でずっこけた。リアリティがあるんだかないんだか。私がオケのメンバーなら世界初演のあとであんなことやられたら怒るよ。ちゃんと納得のいくボレロで感動したかったな。
良くも悪くもフランス映画
最後のボレロはもっと思いっきり盛り上げても良かったのになあ。せっかくオケが反応してくれたんだからティボがガッツリ指揮して欲しかったんだが。
すんなりハッピーエンドとならないところがフランスっぽくて良かったです。
2人とも母親(育ての)しかいない設定なのは多分養父が出てくると話の展開がややこしくなるからだろうなーと勘繰ってしまいました。
人による奇跡は起こすことができる
人の一生は運の巡りあわせやちょっとした偶然で、大きく左右されてしまう。
人なんかちっぽけでとるに足らないものだなと思う。
この世はままならず、どう抗おうとも変えることができないものばかり。
世の無常さへの無力感で、人として生きていることに何の意義があるんだろうかと思ってしまう。
白血病に罹った世界的指揮者のティボは、骨髄ドナーを探す過程で、実の弟がいることを知る。
兄・ティボは、幼児期に実母のネグレクトで養子に出され、音楽教育に理解ある義両親に引き取られて高名な指揮者になったが、弟・ジミーは、兄同様に音楽の才能がありながら環境に恵まれず、廃れた炭鉱町の学校の食堂で働き炭鉱のシロウト楽団で吹奏楽を演奏するのが唯一の楽しみな生活。気は良いのにキレやすく粗野で無教養、叔母(叔母の夫も)は愛情をもって育ててくれたようだが、実の母の虐待からの辛い環境で育った影が色濃く見える。貧しく、自分に自信がなく、人生をあきらめているよう。
ティボは、ドナーを引き受けてもらった「恩」を弟に返したいというより、弟の不遇を全力で埋め合わせするつもりだったように見える。全く同じ両親から生まれ、遜色ない音楽の才能があるのに不公平すぎると思ったよう。「ター」で見たようなどろどろの足の引っ張り合いの音楽業界(多分)、こんなにピュアで善良な人が生き残れるのが不思議だが、穏やかで辛抱強いふるまいが作用したかも。ティボは意識して諍いを起こさないよう、人の恨みを買わないよう慎重に行動しているように見える。大好きな音楽で生きていくため。その一心かも。
ジミーの育ての親である叔母がティボに申し訳なさそうに、「兄がいるのを知っていたらジミーと一緒に引き取ったのに」と言うが、ティボはちょっと困った顔をする。そうでなくて良かったと心から思ったから。叔母も(おそらく叔母の夫も)愛情深い良い人たちだが、音楽の教育と環境は授けてくれない。
ティボはその逆で、どうして弟も引き取ってくれなかったと養母を責める。引き取られていたらジミーも音楽の才能を伸ばせたかもしれないのに、というのだが、それは養母に対して酷すぎる。穏やかなティボがむきになって言い立てるのが意外だったが、彼女の前でなら素のティボが出せるのだろう。恨み言が止まらないティボに罪悪感丸出しで言い訳する養母、遠慮のいらない母と息子以外の何ものでもない。
ティボの骨髄移植の際に駆け付けた時も、ジミーはティボの実の弟なのに、ジミーに会うなり「うちの息子のために、ありがとう」と泣かんばかりで、この母がどれほど長男に愛を注いでいるかよくわかる。ジミーはその間ずっと浮かない顔。ティボは、ジミーにないものをたくさん持っているのだ。富と名声、母親の愛情も。ジミーは兄は好きだが、半端ない劣等感と羨望に悩まされていたと思う。兄に引換えこの俺は、とつい卑屈な感情に囚われてしまっだろう。
登場人物の、心の機微が言葉でなく表情や行動で描かれているところがとても良い。
そして、話は、おとぎ話で終わらない。とても現実的だ。
ティボが肩入れしようが、炭鉱町の工場閉鎖は免れないし、骨髄移植は失敗、もはやティボの命を救う手立ては皆無。
無慈悲に、粛々と迫ってくる現実を、ティボもジミーも受け入れるしかない。
新曲の完成披露コンサートは、ティボの最後の指揮になるだろう。
コンサートのアンコールで起きた(起こされた)前代未聞のハプニングで、この映画が伝えたいことが見えたよう。
どこからか聞こえてきたドラムスティックのリズム。特徴ある、ボレロの冒頭。
自信がなく、やろうとしなかったジミーが指揮を執る、炭鉱楽団の面々の歌声が聞こえてくる。
合唱なので、楽器を撤去されても大丈夫。肉体と言う楽器があればよし。
歌声に合わせ、オーケストラの楽器が加わり始める。最初はクラリネット、小節が進むごとに別の楽器が代わる代わる入ってきて、オーケストラと合唱、全員参加の胸熱くなるクライマックスへとなだれ込む。
世界が注目する舞台で、一流オーケストラの演奏とシロウト楽団のコーラスのコラボという、ありえない奇跡が、ティボのために実現された。
天による奇跡はきまぐれで齎されるのを待つしかないが、人による奇跡は起こすことができる。
人として生きているからこそ、できるのだ。
曲が「ボレロ」と言うのがちょっとずるい。
それまでがどんな風に流れてこようが、この曲だけで感動を呼んでしまう。
でも、この映画はそれでいいと思う。
障害を持つ人たちが普通に出演しているが全然不自然ではなかった。
ティボ役のバンジャマン・ラベルネも、ジミー役のピエール・ロッタンも、役に合っており好演。特にピエール・ロッタンが人好きする感じで、一目見た時からいい顔、と思いました。
難病物語もフランス映画になると・・
白血病を発症した高名な指揮者が骨髄移植のドナーを探していたところ、自分には生き別れになった弟が居た事を知るというお話です。
となると、迫り来る時間に追われながらその弟を懸命に探して、最後には移植が成功して感涙のラストになるのかと思いきや、物語は意外な展開を見せます。骨髄移植はあっさりと成功して、お話はそこから始まるのです。
この様に単なる感動の難病物語にはせず、現実の厳しさ酷薄さも描き切るのはフランス映画ならではの持ち味なのでしょうか。でも、その辛さを超える終盤の展開には、「そりゃあもう反則だろぉ、そんなの誰でもウルウル来てしまうよぉ」と結局、客席でハンカチを取り出してしまいました。やられたな。
慈愛に満ちたボレロ 追記:2回目はハッピーエンドで☆5
音楽が好き、人間ドラマが好きな方にオススメの映画です。期待を裏切らない良い作品で満足しました。号泣とまではいきませんでしたが、涙腺を呼び起こされました。主人公のティボ(兄)がピアノを弾くシーンも素敵だし、ジミー(弟)と二人で即興で弾くシーンも興奮と共に涙腺も緩みました。
いつボレロが聴けるのかなと楽しみにしていましたが、まんまとやられたって感じです。もちろんいい意味で。この映画のボレロはとても意味深い。考えさせられるし、芸術として美しく心を動かされました。終わり方がまた素晴らしかった。(心の中で拍手喝采)
やっと地域のミニシアターで今日から始まりましたが(2週間だけらしい)、音楽も素晴らしいのでシネコン【DolbyAtmos】の大きなスクリーンでもやって欲しい。【DolbyAtmos】は無理だとしても、多くの人が訪れるシネコンでもやって欲しい。ストーリー展開からのボレロが圧巻で、この感性は年齢問わず響くと思う。
※追記
「ティボは生きている」ハッピーエンド説
ラストのサプライズにとても感動したのでもう一度観たくなり、今度は友達と一緒に観に行きましたがやっぱり最後は二人とも泣いてました。そして友達がシアターを出たあと興奮して「結果みんな助かったんだよ」と言ったのです。「ティボはあのあとジミーから腎臓を移植してもらって成功したんだよ!腎臓は2つあるさー。ジミーの仲間達も、みんな幸せになったんだよ!」「考え方次第ってことなんだよ〜私はそう考えるよ。ハッピーエンドだよ」と…目からウロコでした。
・ティボが電話でジミーが必要だと言っていた。それは楽団に戻って欲しいという意味と、拒絶反応が出て臓器移植が必要になったから助けて欲しいという意味もあった。
・最初の骨髄移植のあとにティボが悪戯心で「今度は臓器が必要なんだ」と言った(ジミーは一瞬真に受けた)そのジョークが現実になった。
との指摘、なるほど〜!
そうか〜、はいはい、違和感シーンがありました…ティボが吹奏楽団メンバーから炭鉱ヘルメットをプレゼントされスマホで撮られた時に「ネットにあげないで欲しい、仕事に差し支えるから」と言ったアレです。アレは映画内では描かれないシーンの伏線だった。
それはサプライズボレロを会場にいた誰かがスマホで撮りネットにあげる!プロオーケストラと失職した炭鉱労働者の感動のボレロと世界中で話題になり、支援者が現れメンバー達も働く場を得られ無事ハッピーエンド!
それでポスター(チラシ)の2人なんですよ〜、映画内ではあの場面、2人一緒の画は無かった…ポスターは物語の続きで、元気なティボのあの素敵な笑顔…という私の脳内完保です。
『考え方次第で結末は自由、あなたの人生あなたのもの』ってことか!オシャレにもほどがある、参りました。結末をこちらに委ねられてもこれなら満足です。ティボ生存ハッピーエンド説は友達と私だけかもしれないけどーーー。
2回目でもラストのボレロでは泣けました。これって一体何なんでしょうね。ティボの表情や、驚きながらも泣き笑いで、さり気なく指揮をするのも素敵でした。
Boléro
見逃しに見逃し続けていたのでなんとか滑り込みで鑑賞。
痛快明快な人間ドラマで分かりやすい展開が続くものの、役者陣のパワー込みでしっかり観れる作品に仕上がっていました。
白血病になってしまったティボのドナー探しの中で、血のつながっている弟のジミーが見つかり、そこからドナーを依頼するが…という話で、病状はそこそこに音楽に焦点が当たっていく作品で、プロの指揮者であるティボと地域の楽団でトロンボーンを吹いているジミーがそれぞれの音楽の価値観で近づいていく兄弟ものとしてもなかなか面白かったです。
最初はウザがっていたジミーが徐々に心を開いていく様子はなんだか愛おしく、照れながらも兄弟であることを受け入れていくところだったり、ツンデレ気味なところだったり、ティボと一緒にレコードを聞くところなんかもめっちゃ良かったです。
指揮の練習や鍵盤の練習なんかもとても良かったですし、音楽の芯にどんどん近づいて仲が良くなっていく王道展開、めっちゃ好きでした。
ティボの病状自体は治ったかと思っていましたが、まさかの病状が悪化していたという展開は、そこまで重くする必要性はあるのかな?とは思ってしまいました。
骨髄移植が成功した時点でてっきり良い方向に向かっていると思っていたもんですから、唐突に死の匂いがやってきてしまったのが惜しいなと思いました。
その後の展開のためと思うとやむなしとは思いつつも、死に頼らなくてもなんとかなったのではとも思ってしまいます。
ジミーの働いてる工場の取り壊しが決まったニュースなんかも、なぜ良い方向に進んでいるものを悲劇的な方に捻じ曲げてしまうのだろう?と思い不思議で仕方がなかったです。
ラストシーンは壮大なボレロが披露され、演奏を終えたばかりのティボにジミーが指揮をし、歌が始まり、ティボのチームも演奏に加わり、観客も音を奏でていくというホールが一体になってのボレロは圧巻でした。
病状は深刻で、頬も痩せこけているティボに向けたプレゼントで笑顔が戻っていくのが素敵でした。
それだけに悲劇的な展開の数々がお膳立てにしかなっていなかったなと思いました。
要所要所に惜しいポイントがあって傑作にはなりきれなかったなという印象ですが、音楽映画や兄弟映画としてはかなり見応えのあった作品だったので、合う人には抜群に合うんじゃないのかなと思いました。
鑑賞日 11/5
鑑賞時間 9:30〜11:15
フランスの音楽愛。兄弟が響かせる悲しきハーモニー。
世界的指揮者である兄。あるリハーサルで特定の楽器にアドバイスを送る。するとたちまちその奏者の音色が変わる。そんな瞬間を見事に映像化させたこの作品は、とても音楽を大切に扱っている。音も素晴らしい。
そんな兄が突然、白血病の宣告を受ける。必要なのは骨髄移植。妹は快諾してくれたが、思わぬ結果が・・・。実はほんとうの兄弟ではない、ことが判明する。ドナーを探すなか、遠く離れた地方に、実の弟がいることが分かった。彼は鉱山の音楽隊でトロンボーンを吹いていた。彼には絶対音感があることを、兄は発見する。
弟と楽団を取り巻く環境は厳しく。音楽を続けることが難しくなる。兄が手を差し伸べる。反発する弟。そんな中、一度は回復したかのように思えた兄の症状が悪化し始める。
フランス映画ですから、ハッピーエンドではありません。そして、B級作品のような雑なカット割りも気になるところです。しかし、楽器一つ一つの音が美しく、音楽愛にあふれた作品と思いました。感動のラストシーンでは誰もが知っているあの名曲が流れます。涙なしでは見れません。
音楽好きにはお薦めの感動作品です。
物語最後のボレロに向かって、地味にリズムを刻んでいく…
「ボレロ」は、2種類の旋律を繰り返すという斬新なバレエ曲。
この映画は、普通ならドラマにするエピソードを大胆に省いているところが斬新だ。
例えば、主人公が本当の家族を探す過程とか、突然現れた兄のドナーとなることを最初は拒絶した弟が思いなおす過程とか、ヘソを曲げて演奏会への参加を拒絶した弟が楽団に戻る過程などが省かれている。離ればなれの家族を見つけなければ物語にならないし、兄弟が仲違いしたままではいい話にならないのだから、わかりきった結果への過程で共感を得ようとはしていない感じだ。
絶対音感は幼少期に訓練を受けなければ、身につけることが難しいとされている。一流オーケストラの演奏家たちでさえ、演奏前の楽器のチューニングでは基準音をもらって合わせていく(相対音感)。訓練もなく生まれつき絶対音感をもつ人こそ、いわゆる天才と呼ばれる人たちで、10万人に1人とも20万人に1人とも言われている。
世界的な指揮者であり作曲家のティボ(バンジャマン・ラヴェルネ)が、生き別れだった弟ジミー(ピエール・ロダン)に絶対音感を見つけると、弟がもし自分と同じ境遇で育っていたら自分を凌ぐ音楽家になっていたかもしれないと思ったのは当然だ。
ジミーの音楽的才能を目覚めさせたいとティボは考えるのだが、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(’97)のように埋もれていた天才が指導者によって開花して巣立つ物語なのかと思えば、この映画はその期待も裏切ってくれる。
かつては炭鉱で栄えていたが、現在は地場産業も衰退した北フランスの貧しい町に暮らす人々。
別世界に生きてきたティボが思わぬ事で彼らと出会い、炭鉱町伝統のアマチュア吹奏楽団の団員のほとんどが努める工場の閉鎖と労働争議などの実情を知ることになる。
映画に登場する100年を超える伝統の楽団〝ワランクール炭鉱楽団〟のメンバーを演じているほとんどが実際の炭鉱労働者楽団の人々だというから驚く。演奏シーンに流れる音楽も彼らが演奏しているらしい。
かつての炭鉱町が、その栄華は今は昔となっているのは世界共通だろう。
産業が廃れても、伝統のコンテストが華々しく開催されていることに主催者たちの努力を感じる。
30数年経って始めて兄弟の存在を知った二人は、お互いのことをよく知らなくてもいつの間にか心が通い始める。これが血縁というものなのかは分からないが、この映画は兄弟の絆、その兄弟がいなかったら生まれるはずがなかった世界的指揮者と貧しい町の人々との絆を描いて、胸を打つ物語だ。
この、ユーモアと温かみのある物語は、しかしある面でシビアでもある。
絶対音感を持つジミーは、ティボによって夢を抱くようになるものの世の中は甘くない。
ティボは、弟がドナーになってくれたのに、白血病は完治していなかった。
恐らく、あの町の工場の再開も難しいだろう。
それぞれの現実は現実のままなのだが、それでも夢のようなボレロの大合唱・大合奏が、ひと時の幸せを登場人物たちに、我々観客に、もたらしてくれるのだった。
全ての音楽好きに、捧ぐ
最後絶望しかないけど
ほんとは哀しいけどハッピーエンド
見始めるまでフランス映画だって気づいてなかった。
最近、日本でヒットするタイプのフランス映画のタイプかな?テーマとしては重いのに、どっか温かい気持ちが残る映画。
白血病を発症した男性が骨髄移植を家族から受けようとして、37歳にして初めて養子だったことを知る。
血縁の弟がいることを知り、移植してもらう。
一度は元気になり、自分と違って貧しい境遇で育った弟をなんとか手助けしたいと思うも、再発してしまう。
指揮者の彼の恐らく最後となるコンサートで、弟とその仲間達が合唱するボレロで涙が止まらない。
恐らくこの先は白血病により彼は亡くなるのだろうけど、映画はそこまではない、ただただ心が温かくなる、そして涙が止まらないボレロで幕は閉じる。
素晴らしかった
主人公の新曲があまりに尖っていて、現代音楽はこうなるかと思ったのだけどその直後客席から始まる『ボレロ』に鳥肌が立つ。
弟は不愛想だけどその分芯の優しさが際立つ。けっこうエモい男で素敵な人柄だ。彼は絶対音感がありながら場末の吹奏楽団で演奏していて、一瞬メジャーな楽団のトロンボーン奏者を夢見て、即破れる。クラッシックは敷居が高いのだけど、ジャズやロックならその才能を発揮できただろうに、なぜそうしない。今やスマホがあれば世界に扉が開いているというのにな。そうあってもしない人がいるだろうけど、彼はオーディションを受けるようなタイプなので、しない理由が分からない。周りにロックやジャズを一緒に楽しんでくれる人がいなかったのだろうか。家に楽器がたくさんあったので、楽器屋に行けばいくらでもいそうだ。まさか通販で買っていたのだろうか。
離れていても音楽がつないでいた心。終盤までの抑えた展開が丁寧でリアルでいい。それがラストでは率直に感動する。
音楽っていいね
テンポ良く話が進むし、音楽映画は楽しいし、退屈はしませんでした。でも、階級の差のしんどさを見せつけられると鬱々としてきた。それを音楽の力でカバーしている感じ。
後半になり、二人で生まれた街を訪ねて、なんやかんやで二人の顔付きが兄弟らしく見えてきたなーと思った途端、朝ドラ「カムカムエブリバディ」のジョーさんのように服を着たまま海に入っていく兄。
フランス映画特有の不幸終わりかーと思っていたら、多幸感と切なさに包まれた感動のエンディング。涙が出てしまいました。
兄貴に褒められ 自己評価の高い弟
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