ナイトフラワーのレビュー・感想・評価
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生きるために道を外れた彼女たちの行く末
フラワーカンパニーズの「深夜高速」を映画冒頭、主人公の夏希がカラオケでがなりたてるように歌う。それだけで彼女の心情や今の状況が瞬時に見えた気がした。名曲の歌詞の力と、やさぐれた北川景子が印象的なオープニング。
その後森田望智演じる多摩恵に出会うまでの結構長い時間、夏希の置かれた金銭的に過酷な状況がじっくりと描かれる。観ているこちらもちょっときつい、となった頃合いで多摩恵との出会いがあり、薬の売人の仕事が始まる。
危険だが実入りのいい売人の仕事によって、夏希は娘の小春にバイオリンを買ってやり、レベルの高い教室に通わせ、家族で外食もできるようになった。バディを組んだ多摩恵とは次第に私生活でも支えあうようになり、親子ごと擬似家族のような関係になっていく。そこで彼女たちは確かに「生きててよかった」という実感を得たに違いない。
序盤で嫌というほど夏希の不幸を見せられたので、犯罪に手を染めることもいとわず子どもたちを守ろうとする彼女を批判的に見る気にはとてもなれなかった。一方で、このまま夏希たちに因果応報がないままハッピーエンドを迎えることは考えにくく、どういう結末にするのだろうとも思った。
犯罪をエンタメとして描く作品ならそういう展開もあり得るが、本作は(一部リアリティに欠ける設定などはあるものの)社会派に属する作品だ。ざっくりした言い方になるが、本作には「追い詰められた人間が、子どもを守ろうとする母親が、犯罪に手を染める以外救われる道のないような社会でいいのか」といったメッセージが込められていると感じた。作品において犯罪が「最悪の選択肢」として描写されていなければ、このメッセージは力を失ってしまう。
そう前置きした上で、あのラストについて。
上記の見方に基づいた個人的な解釈だが、私は「少なくとも多摩恵と小春は死んでいるし、もしかすると夏希と小太郎も死んでいるかも」と思った。
直前、ジムで多摩恵がサトウの手下に殴り倒され、サトウに3つの質問をされた(内田監督によると、作品の他のシーンや、サトウのシャツの柄に質問内容のヒントがあったそうだ。私は鈍いので全く気づかなかった)。質問内容はわからなかったが、仲間の夏希に関することであれば多摩恵は答えないだろう。答えなければ殺される。答えても殺されたかもしれない。生き延びたと仮定しても、ラストのように何事もなかったような顔で帰ってくるはずがない。
また、星崎みゆき(田中麗奈)が小春に拳銃を向け、夏希が銃声を聞いたということはみゆきは少なくとも発砲はしている(そもそもみゆきのようなタイプの人間が、銃を入手して子どもを殺めるという流れ自体不自然に感じはしたが、サトウと繋がっていた探偵の岩倉がそそのかしたのだろうか)。弾が当たらなかったとしても見知らぬ女にいきなり撃たれそうになった小春が、あのように平然と帰宅するのもおかしい。だから、現実ではないのだと思った。
ベランダでは、真昼なのに月下美人が咲いていた。これは、4人の幸せな姿が幻であることの暗示ではないだろうか。
多摩恵が消されるのであれば、夏希のもとにもいずれサトウの手が伸びて同じ運命をたどるであろうことは想像に難くない。ラストシーンは、彼らがあの世で再会した姿だと解釈することもできる。
森田望智はやはりすごかった。作り込まれた肉体と立ち居振る舞い。総合格闘技の試合のシーンは手に汗握る迫力だった。北川景子も、すっぴんで髪を振り乱して頑張っていた。普段のイメージとはある意味真逆の役柄だが、変なわざとらしさがなくてよかった。盗んだ餃子弁当を頬張る時のなんとも言えない、様々な感情が混じった表情に胸を打たれた。
「ミッドナイトスワン」でも思ったことだが、内田監督は俳優の表情が役柄の内面を語る瞬間を映し出すのが上手い。表情のうつろいをじっくり映し、迂闊に台詞を当てたりしないから、観る側が「今こういう気持ちなのかもしれない」と想像する余地が生まれる。その余地こそが、観客の心と作品の深い結びつきを育むのではないかと思う。
監督のマスターベーションによる貧困ポルノ
展開がデタラメ過ぎて笑うしかありません。原因は監督が自分にとって都合の良い貧困を嘘八百で作り出してるからてすが、熱演している役者の皆さんが本当に可愛そうになります。以下が問題点
・指摘している方もいますが、何故に自己破産しないのか?全く理解出来ない。自己破産して借金が無くなれば裕福とはいきませんが、普通に生活出来ます。実際に多くのシングルマザーが生活してます。上手くいかない場合はお母さんの体が弱い場合。これはけっこう大変なことになりますが、本作のヒロインは体が丈夫そうだから問題なさそうです。
・役所で児童手当の前借りを頼むシーンがありますが、対応職員が生活支援課、若しくは困窮者相談係的な部署へ案内すると思います。そのまま帰すことはありません。例え自己破産を知らなくても、その課で対応してくれます。
・小学生と未就学児の二人だけで街角でお金を稼いでいたら、間違いなく補導されます。あり得ません。
・元刑事から300万で拳銃を手に入れる件。直ぐにバレるのに300万で刑務所に入る元刑事はいません。めちゃくちゃ目先の金に困ってるのならあり得るかもしれませんが、だったらそこを描かないと無理筋です。
・主婦が拳銃で敵討ち?一般的に考えて凶器は包丁を選ぶと思います。拳銃にしたのは荷造りしているヒロインに拳銃の発射音を聞かせたかったからではないでしょうか。不穏な空気を作り出し、その後のファンタジー的展開に繋げる効果音として発射音が欲しかった、その為に主婦が拳銃を手に入れるという不自然な流れになったような気がします。ご都合主義のシナリオ。
・これは貧困とは関係ないですが、髪の毛を青に染めてる意味があった方が良かったと思います。何方かも書いてましたが、青に染めてる主婦なんてほとんど見ないので、特別な何かがあった方がしっくり来ます。
ざっと以上ですが、あまりに評価が高いので驚いてしまい、書いてしまいました。貧困や何らかの理由で社会と上手く付き合えないような状況を描くのなら(『あんのこと』も酷かった、良かったのは『すばらしき世界』)、現在の日本におけるセーフティネット(福祉や困窮者支援等)を蔑ろにしないで欲しいです。多くの方のレビューはあまりに現実を知らなさ過ぎだと感じました。
もう一度観て考察したい
知り合いに面白かったと聞いて鑑賞。
内容はあまり伺っていなかったので、考察系だとは思いませんでした笑
まあラストはハッピーエンドなわけありませんよね…
想像、願望、幻と考えるのが妥当なのでしょう。
若干モヤモヤ感はありますが、めちゃくちゃ面白かったです。
この幸せはずっとは続かないんだろうな、と思いながら最後まで辛い気持ちになりつつ、ハラハラしつつ鑑賞できました。
どんなに辛くても真っ当に生きることが大事ですね。
どこかで引き返していたらハッピーエンドも有り得たのかもしれません。
北川景子さんと森田望智さんの演技にあっぱれ!
タイトルなし(ネタバレ)
夫が遺した借金に追われながら、二人の幼い子どもを抱えて働くシングルマザーの夏希(北川景子)。
明日の食事にも困り、弁当屋の廃棄弁当に手を出そうとしたある夜、偶然、ドラッグ密売人からドラッグを手に入れてしまう。
手に入れたドラッグを密売している現場を街を牛耳る非合法集団に見咎められ、ボコボコにされている夏希を助けたのは女性格闘家の多摩恵(森田望智)だった。
多摩恵はボディーガード役を買って出、夏希は組織からドラッグを手に入れて、堂々と密売を行うようになっていくが・・・
といったところからはじまる物語。
貧すれば鈍す。
最底辺の生き方の連続で、観ていてツライ。
なにがツライって、「鈍す」の方向にしか進路がないことだ。
「やけっぱち」ならそれなりの覚悟と美学があるが、彼女たちには、覚悟はあっても美学はない。
救われる術がないのだ。
映画的に隙はないのだが、それほど乗れないのは、そういうところかしらん。
終盤、物語が急展開し、観客に委ねる類の結末を採っているあたりは評価が分かれそう。
個人的には、終局手前でスパッと終わる手もあったかも、と思わなくもない。
なお、北川景子、神戸出身だったのね。
関西弁、上手いはずやん。
カンテレ製作で主役は関西弁。
大阪が舞台かと思ったら「北蒲田」(架空の地名)、資産家の地域は示されてはいないが田園調布あたりか。
ロケーションに違和感なく、画づくりが上手いことは忘れずに記しておく。
大スタア誕生
自分のことを不遇の人と勝手に決めているので、報われない系のキャラにはすぐに共感します。北川景子さんがかなり不遇の人なので、とうぜん涙腺ぶち切れでカタルシスがっつりだったのですが、なんか勘違いしてないか、私。
生活に困窮してドラッグの売人になるシングルマザーは、不遇じゃなくて、不幸なのでは?
でもやっぱり不遇な人に思えるのである。
とにかく主人公に降りかかる不運の総量がすごい。そしてことごとく理不尽。どうして夫はいなくなったの?どうしてアルバイト先の上役はあんなに意地悪なの?どうして長男はわざとのようにトラブルを引き起こすの?泥酔した彼女に中華料理店のオヤジはなんでああ冷たいの?世界中が彼女を憎んでいるようだ。
主人公は打ちのめされつつ、災難に立ち向かうのだが、立ち向かい方が行き当たりばったりで努力が報われる兆しは最初からない。
なので、不幸な人でも強い人でもなく、不遇な人なのだ。
こういう展開はだんだんシュールになってガロ系のマンガめいてくるのが普通だが、シュールな方向にジャンプしないのは主演女優の熱量がものすごく、観客の頭に浮ぶ”?”
を全部吹き飛ばしてしまうのである。映画があまりにも北川景子さんに寄りすぎるから、親友になった女性格闘家との関係もやや説明不足だし、主人公が間接的に殺してしまった娘の母親の復讐部分も強引。あとは偶然手に入れたドラッグをなぜすぐに売れるのだろうか。
が、それも見終わった後感じたことで、見ている間中、賢くもなく強くもない彼女が世界の悪意を相手に奮戦したあげく、お母さんとして頑張っているという一点で、運命に打ち勝つどころか、自分を虐待していた悪党たちまで救ってしまう姿にただ圧倒された。
黙示録の終わり頃に救世主に身ごもってサタンの迫害に耐えてこの世を救う終末のマリアの話があって、ターミネーターや羊たちの沈黙のモチーフになっているのだが、まさにそれ。
こうしてみると夫というのは神で、餃子大好きな困った息子さんはキリストなのではないか、とまで妄想してしまう。
制作陣もキャストも北川景子さんを輝かせて大女優になってもらおうという意欲がすごく、そこにも感動。たぶんこのもくろみは成功するだろう。
熱演に拍手!ラストは考えるなぁ
現代、世の中の縮図を観たような気がします。裕福でも家族が破綻している。貧しくても仲の良い家族。対照的な家庭を同時に描いて何が幸福か考えさせられる。罪を犯すということは誰かを不幸にする事であると強いメッセージを感じました。子供の為に犯罪に手を染める母親に同情的な面はあるが、ラストの笑って抱き合って終わることに、この後どうなるか観る人に考えてもらうのかなぁ?幸せに暮らせても、それは誰かの不幸の上に成り立っていることを!
北川景子の美しさよ…。
CMから北川景子の美しさにブチ抜かれ、鑑賞。
フタリウムのシアターってそもそも料金変わらないんだね。そして、1人の場合は最前のリクライニング席なんだね。すごく良かった。マッサージ機能もつけて←バカタレ
開始30分がとにかく辛かった。お金がないってここまで追い詰められるのかと。同情するけど、役所で髪染めてるなら〜と爺さんに吹っ掛けられてるシーンは確かにそう思う。その後の迷惑かけましたか?も理解できる。
主演2人もそうだけど、じわじわと忍び寄るお母さんが本当に狂ってる。あそこまで静かな狂気を感じることはなかなかない。
こうみると、家族と向き合わなかった世界線と、娘に言われてしっかりと向き合った世界線が見えて、上手く作られてるなぁと何とも言えないラストシーンを見ながら考えました。
北川景子の人柄が良かった
北川景子の人柄と、
娘とのテンポ良い関西弁の
会話がとても良かった。
重いテーマの映画の中で
随分救われた。
売人を処分するのは口封じ?
警察の手が伸びてないのに
余計コストやリスクになりそうだが。
そんなものなのか。
元刑事の探偵らしき人は
拳銃と個人情報を渡して
「変な事を考えてるんじゃないでしょうね」は意味がよくわかりません。
最後は、あの主婦が親子を処分したならば、あの主婦はリボルバーの腕前が
良いのだな〜。
ナイトフラワーやのに昼に咲く
原作未読。
観ててずっと苦しかった。あの家族のどんだけほのぼのとしたシーンも犯罪に手を染めた上での事と思うと悲しくなる。
バッドエンド不可避。
田中麗奈が拳銃向けたシーンからは夢なんやろな。小春や多摩恵が無事なんも。。。やってナイトフラワーやのに昼に咲いてんねんもん。
そうせんと何も救われへんもんな。
買って壊れるか、売って壊れるか。
金のためにMDMAを売ることになった
「普通の母だった」主人公と子供たち、
手を組んでクスリを売り、
その家族と仲良くなった女性格闘家という
設定からしてダークな物語。
クスリを買うのか、それとも売るのか
やっている事は反対でも
どうやっても破滅の道に足を踏み入れてしまう。
作中でさまざまな社会問題を描きながらも
それらが特に解決される事もなく
誰かの人生だけが虚しく終わっていく様は
悲しい事ではあるが、とても現実的。
娘が隠し事をしているのでなにかと思えば
生活費の足しにするために路上でバイオリンを弾いてたり
子供がMDMAをおもちゃにして遊んでたり
警察が動くかと思えばクスリ常習者となり死んだ娘の母が
拳銃を手に復讐に動いたりと
「そうくるのか」と思える意外な展開を見せてくれる。
主演たちをはじめ、どの役者も素晴らしかったが
特に田中麗奈さんの壊れた母っぷりが強烈で
役作りのためか顔つきまで変えて臨んでいる。
狂気を孕んだ演技には感服した。
全体的にとても良い作品だったが
個人的にラストが予定調和に感じた。
こういった悪事に手を染める系は
だいたいの作品が因果応報に終わる。
この作品も途中まで見た頃に
「因果応報で終わりそうだな」と思っていたら
まさにその通りに締め括られてしまった。
後腐れのないハッピーエンドを望んでいた訳ではないが
やはり後味が悪いことには変わりないし、
ラストも『これはどっちだ?』という希望すらなく
キチンと絶望して終わるので
比較的元気な時に鑑賞したい作品。
あとはいくつかの細かい点が少し気になったので星は4。
その気になった点をいくつか例に挙げると
・元警察の探偵、娘の捜索を依頼されているのに
『ヤクの売人の写真』を見せるだろうか
せめて『娘が売人とやりとりしてる写真』とかでは
・同じく探偵、銃まで用意しといて
『おかしな事する気じゃないですよね』は少し無理がある
良心の呵責か、犯行がバレた時の言い訳作りか
・売人をわりと気軽に始末する事を決めたり
ジムで殴り殺して遺体もそのままに去ったっぽいが
それこそ警察が活発に動いてしまうのでは?
売人の住み処を把握していないのも迂闊
といったところ。
ユメカウツツカ
抜け出せない貧困、背中合わせの裏社会、みんな優しく薄情で、誰しも母ちゃんがいる⋯それが日本。
ずっと痛くてずっとやるせなかった。登場人物全員が2枚あるカードの間違いばかりを引いていく。それはやはり知恵が無く、情報が無く、視野が狭いから。だがそれは、本人のせいなのか、誰のせいなのか。
役者全員全力の好演。特に森田望智は存在がもう痛々しく美しかった。北川景子演じる母は「あぁこれは私だ」だった。渋谷龍太は空気を揺らし、佐久間大介は弱く儚い普通の青年だった。
内田監督はオールラウンダー。これは「ミッドナイトスワン」の流れ。一緒に観たJKの娘「授業で見せるべき映画」たしかに。
命の花
「くだくだ文句言ってねえで、生きて生きて生ききって見ろや!!」と語りかけてくるような、主演二人(北川景子・森田望智)と娘のまなざしがよい。
あんな目で見られたら、つまらないことでクヨクヨしてられなくなる。
そんな映画。
特に、格闘技の女子選手を演じる森田望智が、格上の元チャンピオンの選手にどんなに殴られても、絶対に目を瞑らず、あきらめず、こちらを凝視する目つきはこの映画のハイライトだと思う。
この社会のあらゆる理不尽を一身にその身に受ける人々の、そして女たちの、生の魂のこもった目だ。
主人公たちは一度も、生きることをあきらめなかった。
犯罪に手を染めることは、決してよいことではない。だが、主人公がシングルマザーの母親として、二重三重の借金を背負わされながら2人の子どもを育てるには、それしかなかったのだということが、しっかり描かれている。「これが私の全財産です、助けてください」と、彼女が財布の中身の数百円を投げ出したとき、行政は何もしなかった。だが、同じ金額を投げ出したとき、犯罪組織は彼女を助けたのだ。
行政も、教育も、親も社会も誰ひとり助けてくれない、法律も何一つ守ってくれない、そんな人間を助ける(そして利用する)のが犯罪組織であることは、もう我々の現実の摂理になってしまっている。
この世界には「悪人」がたくさん出てくる。彼女らを利用する犯罪組織、娘の貧しさを見下して危害を加えるいじめっ子、妻を道具扱いする冷酷な金持ちの男、主人公にモラハラとセクハラを長期間繰り返す上司、殺人幇助する探偵、役所の窓口で泣きながら訴える主人公を勝手な偏見で罵る老人⋯⋯。
しかし大悪人の存在を忘れてはならない。彼女たちから搾取するだけ搾取して、好き放題に逃げ延びている三人の大悪人。
一人は、主人公の夫である。借金を作れるだけ作って、全て妻に押し付け、自分はさっさと高飛びして、一銭の養育費も払わない。彼女の不幸の根源であり、犯罪に走らせた根本原因だ。
二人目は、森田演じるバディのジムのオーナー。彼女が昼は格闘技、夜はデリヘルで稼ぎ続けているのは、全て、ジムを潰したくないと思ってオーナーに渡すため。それを全て知らんぷりで搾取し続け、挙句にギャンブルで失敗したら高飛び。彼女を破滅させる原因は、コイツに間違いない。
三人目、というより三つ目は⋯⋯こんな状況の人たちを助けることもできない、歪んだ現実を持つ社会である。社会は人の総体だから、私たちもそれぞれ「人を傷つけても家族を守りたい悪人」なのだ。
また、悪人ではないが、2人とは対極の人物の弱い人間として描かれるのが、金持ちの妻。彼女にはおそらく学歴もあり、金もあっただろう。本当にやろうと思えば、道具扱いする夫から脱出できたはずだ。なのに、運命を甘受して諦め、冷酷な夫のロボットに成り下がり、自ら生きる意思も抵抗する意思も捨て、起こったことは人のせいにして逆恨みをする。どうしょうもない人である。
この映画のラストが気に入った。
この手の悲劇というのは、物の筋として、主人公が犯した「罪」には「罰」が下らないといけない。違法薬物を売りさばいた「罰」は、「逮捕」または「死」しかない。子どもをただただ守りたかっただけの彼女には、「逮捕」は罰として重すぎる。だから「死」しかなかった。子どもたちだけ生き残らせる死、が最も軽い罰であったはずだ。が、残念ながらそうはならない。
ラストは解釈が分かれるように上手く作ってある。誰も殺される場面は描かれていないが、ハッピーエンドに見えるラストは、不自然にカットが分かれており、変な画面切り替えが一瞬見えるようになっている。そして窓の外には、夜しか咲かないはずの花が咲いている。そして「行き先は楽園」「楽園には何でもあるねん」というセリフ。このカットが現実ではないということを示すように作られている。
だが、待てよ。途中で、主人公は「懺悔」していた。売り物の薬物を幼い子どもが誤飲しそうになるシーンを経て、「ごめんな、お母さん、あほやった、こんなこと、するんやなかった」と後悔し、懺悔している。それから「みんなで遠くへ旅行に行こう」と言っているから、売人を辞めて逃亡しようとしているととれる。犯罪組織がそう簡単に足を洗わせてくれるわけがないので、逃亡しかないはずなのだ。
悪行を「後悔」し、「懺悔」した人間には、許される機会が与えられるべきではないか?
あの場面は――「昼間は咲かないはずの花が咲いている」という、ありえないはずのことが起きているラストの場面は、何千何百もの破滅の中で、「許し」が認められた唯一の世界線だったのかもしれない。少なくとも自分は、主人公を許したいと思った。そういう想いが集まって生まれた可能世界だったのかもしれない。「3つの質問」をした犯罪組織のリーダーが、殺さず見逃す選択をし、金持ちの女は引き金を引く前に目が覚めて、人殺しを諦める。おそらく何百、何千分の一でしかない可能性を収縮させ、やっと彼女たちを逃がしてやれたのではないか。楽園へ。この世の何処かにある楽園へ。
なお、「武士は食わねど高楊枝」みたいな価値観を手放せなさそうな人には、向かない作品である。
救われない物語、現実
開始から予感してた結末
結末で一瞬だけ
「ハッピーエンドだヮーィ\(*´▽`* )/三」って思った
しかし
他人を不幸にしておいて、自分たちだけが幸せになるなんてのは
物語として「ありえない」し「許してはいけない」
とはいえ
主人公達が不幸にもつまづいてしまった事に本人たちには全く責任なんかない
だからこそ「ハッピーエンド」を望んでしまう😭そこを見越してあの結末に震える
夜しか咲かない月下美人が咲いたことを
「奇跡が起きた」と能天気に受け止めても
「夢まぼろし」なのか...と悲観的に受け止めても
どっちを選んでも
モヤモヤする...
前者なら田中麗奈さん報われなさすぎだし
後者なら子供たちが不幸すぎて
どちらを選んでも涙が止まらない
鑑賞後に思うのは
「どうにかなるルートはなかったのか」
あの時点であの選択をしなければ、職場のセクハラ上司がいなければ、救う方法はきっとあるんだとそこに希望を持ち、自分が生きる世界にこういう悲劇があるのではないかと想像して、そうならぬよう生きていく事を考えることにする
もう一度見たいかと言うと辛すぎて観たくない😭
それでも一度は観るべき
北川景子さんのシャウトと森田望智さんのハイキックは何度観ても良い✨
子供は幸せになれるのか?
愛する我が子の為に必死で働く中、やがてドラッグ売買に手を染めてでもお金を掴もうとする母親(シングルマザー)を北川景子が演じる。母として、なりふり構わずに子供を守る姿は、愛とか強さとか愚かさを超越した存在として目に焼き付く。しかしながら、どこかで行き詰まってこの生活が破綻する時、子供達は幸せになれるのだろうか?どんな結末を迎えるのだろうかと思っていたが、かわされたようなラストシーンにはモヤッとする。ただ、それで良いのかも知れない。この映画の見所は結末ではなく、母として生きく決意の凄まじさを描いたプロセスにあるのだと思い納得した。
「あかんかった」そんな事ない、森田凄いで!
2025.12.8(月)
新宿ピカデリーで「ナイトフラワー」を日本語字幕版で。
日本語字幕版の上映は少ないのでなかなか観る事が出来ないのだけれど、機会があれば観るようにしている。字幕版だと聞き取れなかった言葉などが文字情報として入って来て理解が深まる場合がある。
半年のトレーニングで7キロ増量した森田望智が素晴らしい、いや凄い。完全に格闘家である。「ウォリアーズ」のリングに上がってからの試合のシーンは「ロッキー」みたい。迫力満点。ここ完全に主演森田望智である。
私は総合格闘技の試合の中継を良く見るのだが(昔、ヒクソン・グレイシーvs船木の試合を東京ドームで生観戦した)、実戦と遜色ない。
今までのふんわりと、おっとりとした雰囲気(例えば朝ドラ「虎と翼」)とはまるで違う森田望智である。
あれ、森田望智の事しか書いてない。
で、本作は北川景子と森田望智のバディの映画であり、母親の映画でもある。
夏希(北川景子)は二人の子供の母親で、タマエ(森田望智)と海(佐久間大介)は母親を亡くした事を語っており、星崎みゆき(田中麗奈)は娘を失った母親で、サトウ(渋谷龍太)は母親にばかりこだわっている。
父親は問題にされていない。
夏希の夫は借金作って逃げ、子供たちも父親の事は一切口にしない。
みゆきの夫は娘の事は母親に任せきりで、娘も父親に声をかける事もない。
サトウも母親たる夏希を気にしているが、父親という言葉は口にする事もない。
元刑事の探偵?は、みゆきの依頼で娘の居場所を捜すが、持って来た情報は売人の存在?何じゃ、それ。
おまけに娘が死んだら300万で実弾とリボルバーをタオルにくるんで持ってくる。「変な事考えていませんよね」って何じゃ、それ。
で、問題のラスト。
もしサトウがタマエを3つの質問で赦していたとすれば、みゆきが小春を撃てずに諦めたとすれば、夜咲くナイトフラワーが昼咲いているのはあり得ない事が起こったとの暗喩で、4人はその後幸せに暮らしましたとさ、でも良いんじゃねえ。
海だってボコられたけど死ぬところは映っていない。あの後何処かに埋められたのなら、タマエもあの時ジムから連れ出されていたはずだ。
人の善意(サトウも根は善人。タマエの賞金もらったのにジムで競馬の予想していてギャンブルで夜逃げした光石研は善人じゃないけど)と映像に示されたものを素直に受けとめて、ハッピーエンドという事にしておきます。
最初に北川景子がカラオケで歌っていたじゃないか。「生きていて良かった。生きていて良かった!」
森田望智で星4つ。
よかった。念のためネタバレにしておきます。
最後まで観させる映画。
ラストは最高だと思う。
誰かの幻想なのだろう。
後味は悪くないのではないか。
なにも重篤な犯罪を犯さなくても、その美貌とコミュ力とへこたれないメンタルで金稼げたろうに。
犯罪組織の皆さんの脇の甘さ。
元刑事さんのやったことの必然性のなさ。
が気になった。惜しいと思う。
娘役が最も素晴らしい!!
ずっと、ずっと抉られ続ける映画。
2人の娘を育てるシングルマザー。別れた父親の借金と日々の支払いに追われ、生活もままならない。
現実に今の日本では、普通に生活する事も厳しい。そして一度貧困に追いやられると、そこから這い出す事は難しい。もっと豊かな筈だったこの国はいつからこんなに貧しくなったのだろう。
ちょっとした事で犯罪に陥ってしまう。それはもはや他人事ではない。
母性。この作品のテーマだ。
夏希は母ゆえに深い闇へと堕ちてゆく。
片や、彼女の用心棒となった多摩恵は父性に近い。
この2人は恋愛感情などサラサラないが、子供を挟んで、疑似家族となる。その関係性も面白い。
この映画は主演2人が素晴らしい‼️
そして、それ以上に、娘を演じた子役さんがスゴすぎる!「ミッドナイト・スワン」に続き、内田監督はどうやって子役を見つけて来るのだろう?
バイオリンは初めから上手いのだが、ラスト近くは数段上達している、のを表現している!スゴい!
また、バイオリンが壊された時の芝居や、試合中、母に声をかけるところ(ここはすごく重要!)、何てスゴい芝居をするのか!?
ラストが近づくにつれて、全員殺されて終わりなんて単純な終わり方にならないでよ、と思いながら観ていたら、まさかのラストは観客に投げられる。
サトウが多摩恵にした3つの質問は何だったのか?
ラストは本当にハッピーエンドなのか?
このラストは賛否が分かれるだろうが、自分には、単純に殺されてENDよりは、よっぽど良かった。(まぁハッピーエンドな訳はない)
現代日本を暗喩した傑作!
余談ですが、主人公の1人北川景子さん演じる夏希が、前日に観た「兄を持ち運べるサイズに」の満島ひかりさん演じる加奈子のその後に感じながら観てしまって、絶望的な気分になった…。
#ナイトフラワー
終わり方もストーリーも満足
ナイトフラワーの出し方で、ラストの結末を幻想のように表現して実は亡くなってますっていう表現が凄く綺麗でした。
北川景子の演技もリアルであのようなダークな世界に足を突っ込むと不幸せしか待っていないという啓発的な意味も含めて幸せになってしまうと世の中の顰蹙を買うのであのようなバッドエンドはとても良かったと思います。
全150件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。










