「大スタア誕生」ナイトフラワー ざむざむさんの映画レビュー(感想・評価)
大スタア誕生
自分のことを不遇の人と勝手に決めているので、報われない系のキャラにはすぐに共感します。北川景子さんがかなり不遇の人なので、とうぜん涙腺ぶち切れでカタルシスがっつりだったのですが、なんか勘違いしてないか、私。
生活に困窮してドラッグの売人になるシングルマザーは、不遇じゃなくて、不幸なのでは?
でもやっぱり不遇な人に思えるのである。
とにかく主人公に降りかかる不運の総量がすごい。そしてことごとく理不尽。どうして夫はいなくなったの?どうしてアルバイト先の上役はあんなに意地悪なの?どうして長男はわざとのようにトラブルを引き起こすの?泥酔した彼女に中華料理店のオヤジはなんでああ冷たいの?世界中が彼女を憎んでいるようだ。
主人公は打ちのめされつつ、災難に立ち向かうのだが、立ち向かい方が行き当たりばったりで努力が報われる兆しは最初からない。
なので、不幸な人でも強い人でもなく、不遇な人なのだ。
こういう展開はだんだんシュールになってガロ系のマンガめいてくるのが普通だが、シュールな方向にジャンプしないのは主演女優の熱量がものすごく、観客の頭に浮ぶ”?”
を全部吹き飛ばしてしまうのである。映画があまりにも北川景子さんに寄りすぎるから、親友になった女性格闘家との関係もやや説明不足だし、主人公が間接的に殺してしまった娘の母親の復讐部分も強引。あとは偶然手に入れたドラッグをなぜすぐに売れるのだろうか。
が、それも見終わった後感じたことで、見ている間中、賢くもなく強くもない彼女が世界の悪意を相手に奮戦したあげく、お母さんとして頑張っているという一点で、運命に打ち勝つどころか、自分を虐待していた悪党たちまで救ってしまう姿にただ圧倒された。
黙示録の終わり頃に救世主に身ごもってサタンの迫害に耐えてこの世を救う終末のマリアの話があって、ターミネーターや羊たちの沈黙のモチーフになっているのだが、まさにそれ。
こうしてみると夫というのは神で、餃子大好きな困った息子さんはキリストなのではないか、とまで妄想してしまう。
制作陣もキャストも北川景子さんを輝かせて大女優になってもらおうという意欲がすごく、そこにも感動。たぶんこのもくろみは成功するだろう。
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