「「縁起が悪い花」が咲くとき」ナイトフラワー ゆうばりさんの映画レビュー(感想・評価)
「縁起が悪い花」が咲くとき
良かったところ
娘の小春役
とくに給食のシーンの食べるペース。わかりやくガッツいてるのではないのだが、給食が小春にとってどれだけ待ち望んでいた時間なのかが食べるスピードでわかる。おかわりを同級生に陰口たたかれていたのが切なかった。
大好きな母親と同じ関西弁を使う小春は終始まっすぐだった。だからこそいじめの標的にされてしまったのではないだろうか。泣きながら弦をつなごうとする姿に胸が痛かった。
他の方も書いているが森田望智さん。
多摩恵は表情が乏しく言葉もぶっきらぼうなのが夏希家族との交流のなかで雰囲気が柔らかくなっていく。格闘技の試合では形勢を逆転しようともがく姿に、彼女の必死で人生に抗う叫びを聞いた気がした。
悪いところ
登場人物が多くて関係性が唐突。
ギャンブルで借金作ったオーナーや探偵、みゆきとその娘は必要だったろうか。探偵は娘の捜索依頼を受けているのに夏希たちの写真を見せてもう少し探ってみると言い、母親のみゆきはこの人たちに家族はいるのかと的外れな質問をする。娘の死後は拳銃と弾まで用意して夏希たちの居場所まで教えて「変なことに使わないで下さいね」と忠告する探偵。ここは夏希たちに迫りつつある静かな狂気の気配が緊迫感を生んでもいいはずなのに、雰囲気で押し通そうとする会話が冗談にしか見えない。田中麗奈さんは情緒が不安定な奥様を熱演されていたが、精神の危うい人ならこういうこともするとばかりに話の展開のために都合よく使われているように感じた。
夏希と多摩恵で命を狙う相手を変えてる意味。末端の売人が警察に目をつけられる度に関係者も含めて消す労力とリスクを考えると、サトウがそこまでするのは夏希たちが自分たち以外の組織の薬も売り始め裏切ったとかではないと割に合わないと思う。命を狙われる理由は初めに夏希が薬を盗んだ売人や常連客とのトラブルでも良かったのでは。
登場人物を減らし、夏希が踏み入れた世界の暗部や多摩恵と海の関係を掘り下げてほしかった。特に海が試合後に席を立ち、多摩恵のためにサトウのところに行ったのではと思える場面は、夏希と多摩恵の関係を海がどのように感じていて、それがリングでの二人を見てどう変化したのかをもっと見たかった。
ラストは、冒頭で一夜花は縁起が悪いと言っていること、何度も夜にしか咲かないと説明されているところから、あの昼のように明るいなかで咲いているのはありえない、現実ではないことを示唆していると思う。それでも彼女たちがなんの憂いもなく笑い合える世界がどこかにあるのなら、それは救いなのかもしれない。
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