「じゃあ、どうすればよかったんだろう。」ナイトフラワー AZUさんの映画レビュー(感想・評価)
じゃあ、どうすればよかったんだろう。
どうすればよかったんだろう。
鑑賞後にその問いがひたすら浮かび、どうしたら夏希一家は救われたのか、多摩恵が幸せになれたのかを考えてしまう。
けれど答えが出ない。それがこの作品を通して伝えたい社会へのメッセージだと思った。
2023年の調査で、OECD加盟国の平均的なひとり親世帯の貧困率は 約31.9%。それに対して日本の44.5%はかなり上という結果がでた。先進国でありながら、母子家庭での貧困は世界基準で見ても高い。
夏希のような家庭は、珍しくないということだ。
働いても働いてもお金が追いついていかない状況は正しい判断ができず、精神も不安定になっていくだろう。そんな時に薬の売人という方法でお金を稼ぎ、子供達を育てることが出来るなら、その道を選んでしまう夏希の気持ちもわからなくはない。
「ミッドナイトスワン」も日陰で懸命に生きる主人公が、小さな希望を見つけてささやかな幸せな日々を過ごす姿が印象的だった。今回の彼女たちも、踏み躙られ、底辺を這うような日々でも"生きていてよかった"と思えるように、最後まで諦めず、もがき、足掻く姿の生命力が切ないけれ美しい作品だった。
内田監督の、セリフに頼らず表情で登場人物の心情を語らせる手法が素晴らしくて、それを見事に演じた北川景子と森田望智の演技力はすごかった。
特に森田望智はこの役のために7キロ太り肉体改造をしたという。今までに無い役だったが、話し方から仕草、表情ひとつとっても完全に多摩恵というキャラクターに憑依していた。素晴らしかった。
決して楽しい作品ではなく、観た後くらってしまう人も多い作品ではあるけれど、最初から最後まで無駄がなく、没入して観ることができる素晴らしい作品だった。
私のラストの解釈は、昼に咲いた月下美人が答えだと思っている。
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