「俳優陣の迫力の演技が素晴らしい」ナイトフラワー オーばやしさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優陣の迫力の演技が素晴らしい
出演者全員(ひとりも欠けることなく)素晴らしい演技だった。
子役(小春)の渡瀬結美さんのセリフが自然で、良い子過ぎて泣けるシーン多め。バイオリンも実際演奏してるそうで、そこも素晴らしい。
子役(小太郎)の加藤侑大くんの冒頭の「うるさい」演技が最初からギリギリで生活している母親(夏樹)の精神をささくれさせているのが一発で観客に理解させる演技と演出も良かった。
これまでクールビューティーなイメージしか表現する機会に恵まれなかった北川景子が、ネイティブ関西弁で体当たりで演じる姿に不自然さはなく、追い詰められて薬の売人になっていく(若干無理がありそうな)展開も、その表情で納得させる力があった。
廃棄された餃子弁当を持って帰ろうかどうしようか悩む母親の表情・・・ゴミ漁りしてそれを子供に与えるのか?というプライドとの葛藤。泣きながら食べるシーン。見ていて辛すぎるシーンが多いが、それほど役に入り込んでいた証だと思う。
この家族と一緒に生活し始める「孤独な格闘家」のタマエ役の森田望智は、これが「全裸監督」の黒木香役と同一人物なのか?と思わせるほどのハマりっぷり。トレーニングシーンは、女優ではなく、格闘家がジムで練習している風にしか見えないし、後半の試合シーンは思わず座席の背もたれから体が前のめりになるほどの迫力があった。
個人的には渋谷龍太の役どころがすごく好きだった。あの不健康そうな目が最高。
「3つの質問」ってなんだったんだろうか?
他の人も書かれていたけど、田中麗奈が映画「アバター」に登場する青い皮膚の原生生物ナヴィにしか見えない・・・んだけど、演技力は特に凄かった。
娘が死んだと警察から聞かされた直後に、旦那からコーヒー!と言われ、数秒考える時間があるが、結局「はい」と従う時の演技に、この物語に登場するもう一人の母親の後悔と怒りと悲しみがないまぜになった言語化できない感情を演じきっていたし、ラストシーンの拳銃をカバンから出そうとする時の表情も凄まじかった。セリフはほとんど「はい」だけ。全部を表情と立ち姿の演技だけで表現しきる演技力に脱帽する。
しかしながら、実際こういう状況に追い込まれたシングルマザーが。こういう行動をするだろうか?
家出した娘の死にたいして、逆恨みして拳銃を入手するだろうか?普通ナイフじゃない?
元警察官の探偵が拳銃を依頼主に売るか?
タマエを紹介しただけなのに、幼馴染だけ殺されて山に埋められて、主人公たちは逃亡するのか?
そんなに貧困なのに住める場所はあるんだ。とか、そもそもバイオリンとか、最初から考えもしないと思うんだけど・・・
という設定で没入感を妨げる要素がいくつもあるのが、この作品の残念なところ。
役者の演技だけなら★5は確実。
もし、ラストが夏樹の妄想です!ってことなら、脚本としてはゼロ点ですね。そんなの夢オチと同じ。
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