「大炎上御礼舞台挨拶」俺ではない炎上 toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
大炎上御礼舞台挨拶
10月8日 新宿ピカデリー スクリーン1にて
登壇者:阿部寛 夏川結衣 藤原大祐(ふじわらたいゆ)
※自分の記憶に頼っての報告。ここに書くことがすべてではないこと、
発言内容に微妙な違いがあるかも知れないことをご了承いただきたい。
上映終了後に行われネタバレOKの舞台挨拶。司会進行の出題に答える
形で各自の私的な面がうかがえた。
「実生活で”自分ではない”と思ったことや経験談」を振られて
藤原大祐は自分の名前が正しく読まれなかったり文字が違って
書かれていたりすることを挙げた。ちゃんと名前を覚えてあげよう。
阿部寛と夏川結衣の共演が夫婦役を含め今まで7回もあったこと、
お互いのことを信頼しあっているという話も聞けた。
映画が公開されてからの周囲の反響を聞かれて阿部寛は「この映画を
学校の教材にしたら良い」という意見があったとのこと。
(感想)
この映画はSNSに潜む恐ろしさや「自分は正しい」と信じ込むことの
危うさを描いており、思い込みや間違った正義感によって人の人生が
狂わされる、無実の人間が”でっちあげ”によって犯罪者の汚名を着せられる
という現代的な問題点を突いた作品だ。決して他人ごとではない。
自分が被害に遭わない、そして加害者にもならないためにこの映画を
教材にして認識を深めることは良いことだと思う。パスワードの管理を
厳重にするとか、フェイクニュースや成りすましのアカウントを警戒する
とか、トラブルに巻き込まれないために必要なことがたくさんある。
舞台挨拶の終盤、藤原大祐が役名の住吉初羽馬として書いた手紙が
朗読された。彼は主人公山縣泰介が”殺人犯”と決めつけられSNSで
拡散されるきっかけを作った張本人だ(殺人犯は別にいる)。
彼のうかつな行動が人の人生を狂わせてしまった。劇中では泰介に
直接謝罪していないので、この場を借りてお詫びしますという内容。
(感想)
事の重大さに気付いた初羽馬はもう二度と同じ過ちをしないだろう。
過去の過ちは取り消すことができないが、これからの人生をより良く
生きてくれると信じたい。
証拠もないのに自分が知り得た真偽不明な情報を信じ、誤った正義感で
拡散する阿呆。無実の人間の個人情報を世間に曝す阿呆。知りもしない
相手に対して攻撃的な発言をする阿呆。私人逮捕について誤った認識を持ち
”犯人逮捕”で自分のチャンネルの視聴数を上げようと息まく阿呆YouTuber。
炎上に加担していたくせに手のひら返しで味方のふりをする阿呆。
こういう輩が架空の話の中だけでなく現実社会にもいるから困ったものだ。
※私人逮捕が認められるのは現行犯の場合だけである。また、過度な
暴行や拘束は認められない。
彼らのやっていることは人道的に許されないが、多くの場合晒し者にされた
人が無実だと分かっても謝罪しない。罪悪感もほとんどないのだろう。
名誉毀損での立件は難しそうだが何とかならないだろうか。
真犯人も誤った正義感を持っていた。どんな悪人でも法に従って裁かれる
べきであり、私刑を行って良いはずがない。犯罪を犯していない人物に
汚名を着せることも許されない。動機ややることがもう理解不能。
社会になじめず自分の殻に閉じ籠って歪んだ人間になるとそうなって
しまうのだろうか。
理解不能な犯人と言えば「ブラック・ショーマン」とか「新幹線大爆破」
とか「金子差入店」とか、頭大丈夫か?という動機や行動の犯人が最近
増えた印象。これが現実世界の反映でなく絵空事であってほしい。
特定・不特定の困った連中が登場したが、山縣家の親子3人がこの件で
新たな信頼関係を築けたのは良かった。終盤、この3人が「私が悪かった」
「いや俺が悪かった」「一番悪かったのは私」と反省の言葉を言い合う。
思えばこの映画の中では登場人物誰もが「自分は正しい」と信じていた。
あるいは「自分は悪くない」と思い込んでいた。
何をもって正しい言えるのか。間違っていたらどうしたら良いか。それを
問いかける今作はコミカルな場面やミステリー要素を含んだエンタメに
仕上がっているが現代社会に警鐘を鳴らす良作だと感じた。
阿部寛・夏川結衣の夫婦役に加えて娘役の芦田愛菜もとても良かった。
小学生時代と現在を別の役者が演じていても同一人物だと察しは付いたが
自分は頭が悪いので物語の全体像は最後まで観ないと分からなかった。
”10年前”と”現在”の違いが映像で分かる工夫がしてあるとのこと。植栽
だったか時計だったか詳細はちょっと聞き逃した。よし、もう一回観て
確かめることにしよう。
共感ありがとうございます!
上映後のネタバレOKの舞台挨拶は、観る側としても無形のお土産を貰えた感じで、有料パンフを買うより嬉しいですよね。今原作を読みながら答え合わせをしているのですが、犯人の犯行動機が希薄なのが気になっています。
同じ原作者の「六人の嘘つきな大学生」の時もそうだったのですが、2時間の尺に納めるために物語に重要な「何か」を割愛した感じはあります。芦田愛菜の迫真の「キレ芸」がとても良かったのでプラマイ0という印象です。

