「僕が悪いんじゃない…、俺が悪かった…」俺ではない炎上 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
僕が悪いんじゃない…、俺が悪かった…
『6人の嘘つきな大学生』に続いての、浅倉秋成原作の映画化。原作も発刊当時に既読。SNSを介してのサスペンスということで、若い感性に彩られたテーマをモチーフに、張り巡らされた緻密なネットの罠と、逃亡者となった主人公の緊迫感のある心理状況が描かれている。原作を読んでない人にとっては、意外性のある結末に、固唾を飲んで見守ったことだろう。
自分の知らない所で、誰かが自分に成り済ましてアカウントを作成し、あたかも殺人
事件の犯人であるかのような内容をSNSにアップし、大炎上したら…!ネット社会にお
いては、こうした魔の手は、決して非日常な事ではなく、私達の生活にいつでも忍び込
んでくる怖さをも感じる。
また、本作の面白さは、逃亡者となった主人公の男の様に、がむしゃらに会社の為には働き、世の中や企業の上に立った昭和世代の人と、生まれた時からネット社会で、新しい情報に溢れて育ってきた若き世代の人との、それぞれの視点や考え方のギャップを、ストーリーの展開に練り込んでいるところにもある。
大手ハウスメーカーに勤めるエリート・サラリーマン・山縣泰介が、ある日突然、ネット上で、女子大生の殺人犯の嫌疑をかけられ、大炎上してしまう。身に覚えのない山縣だが、見ず知らずの人々やYouTuberから、カメラを向けられる中、身を護るために、必死の逃亡劇繰り広げるストーリー展開。
そんな中、自分をハメタ見えない犯人への怒りから、ある手がかりを元に、自ら犯人捜しに立ち向かっていく決意をする。しかし、犯人捜しは思うようにはいかず、世間やSNSからの厳しい目に曝されて、窮地に陥っていく。そんな中、何とか辿り着き、明らかになった女子大生の殺人犯と自分をハメタ見えない敵は、あまりにも意外な人物だった。
逃亡者となるサラリーマンには阿部寛が、いつもながら、眉間に皺を寄せながらも最後まで諦めない逞しい演技を見せていた。また大学生のサクラ役には、芦田愛菜が務めていたが、彼女が、ドスの効いたセリフで豹変するシーンでは、役者としての凄味を感じた。他には、藤原大祐、長尾謙杜等の若手俳優の中に、夏川結衣や美保純等のベテラン陣も脇を固めていた。
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「六人の嘘つきな大学生」で浅倉秋成原作の良さに気付いたので、今回も原作を読みながら鑑賞しました。阿部寛の演技は間違いがないし、芦田愛菜の演技力も爆上がりしているので全般的に楽しめましたが、犯人の犯行動機の描き方が希薄なのが気になりました。尺の関係で割愛する必要があったのかも知れないですね。

