「中身のない、あま~いスイーツ盛り合わせ。胃もたれ」か「」く「」し「」ご「」と「 Rさんの映画レビュー(感想・評価)
中身のない、あま~いスイーツ盛り合わせ。胃もたれ
まず、作品に携わった方々に、敬意を表します。
思わず、時間をとって長々と感想を書き記したくなるような、ある意味素晴らしい作品でした。
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映画は月1本ペースでみる程度の20代前半女です。デートで空き時間ができたため、ふらりと鑑賞。小説は未読です。そこそこ期待して入ったのですが、結果は…。
ここ数年で見た中で最も酷い映画でした。終盤何度も席を立とうと思いつつ、我慢してみましたが、大した結末は訪れず。
ただ、なぜ私にとってこの作品がこんなにも胸糞悪いのかを冷静に分析した結果、非常に多くの気づきがあり、その意味では逆に”面白い”映画だったのかもと思いました。
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低評価の理由
①「一緒の大学目指そう」という発想が気持ち悪い
大学受験期に気になる異性がいて、進路の葛藤とともに、恋の葛藤も…。
こんな状況は正直、"あるある"だと思います。大体の人は、冷静に現実を見て恋をあきらめるか、恋にうつつを抜かして失敗するか(まれに両立するなんてツワモノもいたりしますが)です。
そんな中で、三木は京に、「一緒の大学目指そう」というセリフを言うわけですが、自分の人生を大きく左右する大学受験で、(当時は)”ただのクラスメイト”の京にそんな、大胆かつ痛々しい迷惑発言を、本当にするでしょうか。。?
もし本当にしたとしたら、三木は相当京に入れ込んでいて、好きで好きでたまらなくて血迷って言ってしまったのだと思うのですが、そこまで好きで好きで血迷うまでの理由やストーリーがほとんど書かれていなかったので、こちらとしては「え??気持ち悪」という感想しか残らなかったです。
②他者との境界線が引けない若者たち
この物語の大きな特徴である「人の気持ちが少しだけわかる」という設定。5人全員が別々の形で人の心が見えてしまう能力を持っている(この発想自体は面白い)わけですが、これは「他人の気持ちを考えすぎて、分かってしまう。そして自分と他者は違うと線引きができない」という、人間の性質の隠喩だと思います。
記号や矢印が見えることはなくても、他人に共感しすぎて辛くなることがある人は、たくさんいるはず。誰かが怒っていたら、「自分何かやったかな」とびくびくしてしまったり、誰かが悲しんでいたら、自分も同じ気持ちになったかのように心配して泣いてしまったり。
このような行き過ぎた共感を5人が共通して持っているわけですが、程度の差があり、最も程度がひどいのが宮里でした。(他の4人は鼓動や気持ちの上下など、見えるのは一部でしたが、宮里は誰が誰に恋しているかという、踏み込んだところまで見える)
京が三木をあきらめようとしているのを見て「三木ちゃんが他の人にとられるの私は悔しい」と声を荒げたり、3人の図書館のシーンで、怒って三木が立ち去るとき京に「行って、今行かないと…!」と声を荒げたり、我々能天気な人間から見たら、おせっかいで到底理解できない行き過ぎた行動をしてしまうわけです。
私だったら、京が諦めると言ったら「フーンそうなんだ、おつかれ」って感じですし、
三木を追いかけない京を見たら「へー、好きって言ってもその程度のきもちなのね~」って感じですし。
三木をあきらめて京がひどく後悔しようと、自分の進路を貫きとおし、これで良かったんだと思おうと、”宮里には関係ない”と思うのです。だって、これは京の人生だから。京の人生は宮里のものではないから。
京が失敗しようと、傷つこうと、京自身が決めた決断の結果であれば、それは長い目で見て京の人としての成熟につながるはず。
だから他者は、求められてもない限り、口出しする必要はないんです、
宮里はこれが分からず、行き過ぎたおせっかい発言をして、ある意味京成長機会を奪ってしまったともいえると思います。まるで子供のことが心配すぎるがあまり、先回りして危険を取り除き、成長機会を奪ってしまう過保護の母親のように。
③中身のない(ように見える)登場人物たち
物語序盤は5人の登場人物がどんな人物なんだろう、と比較的ワクワクしてみていました。
結論から述べると5人とも何の中身もなく、(小説では書かれていたのかもしれませんが)
むしろ中身がないことが中身なのでは、これが現代の若者のリアルということを言いたいのでは、、、?と深読みして混乱してしまうほどでした。
・三木
いつも明るくにぎやかでクラスの中心、でも進路のことで悩んでいて…。
ここまでは共感、どんなストーリーになるかワクワクしてたけど、結局何もないどころか想像以上に薄っぺらい(同じ大学目指そう事件)でしたね。
深刻に進路に悩んでるかと思いきや、修学旅行であっけなく進路が決まっていたことが分かり(古典が好きという謎の理由)、その進路さえもただのクラスメイトによって変えそうになる、、。自分の意志がないのは、高校生だから仕方ないし、リアルだとは思うけど、もう少しだけ真剣に悩み・葛藤シーンを書いてほしかったです。さすがに好きな人に合わせて進路をきめる、、は浅はかすぎて理解できない。
しかも、そこまで京を好きになる理由、思い入れる理由が(小説では書かれていたのかもしれないけど)一切分からなくて、心底理解できない、中身がないな、と思わざるを得なかった。京の何が好きなの?顔?(今作の奥平大兼はそこまでカッコいいビジュとは思えなかったけど)
同じ原作者の、キミスイでは、二人がなぜ惹かれるのかの内面や、出会ってから最後までの二人の心情の移り変わり、精神的成長がかなり丁寧かつ文学的に描写されていて、そんな展開を期待した自分が悪いです。
出口夏希は、確かにかわいい。絶世の美女です。
でも、そのかわいさ、明るさ、陽キャ感が裏目に出て、悩みや苦しみ、暗さといった人間のネガティブな側面はあまり表現できないのでは?と疑問に思ってしまいました。
そして、確かに、かわいい、かわいいのですが、私かわいいでしょ間満載のキラキラ笑顔も、最初は見とれていましたが、後半は胃もたれ、キャラクターとも相まって「うるさい」としか思わなくなりました(出口さんが悪いのではなく、キャラクターと、その描き方ですかね)。まあ一緒に行った連れは感想で「出口夏希かわいい」と真っ先に行っていたので、出口さんの大ファンにはいい映画なのではないでしょうか。
・パラ
仲のいい女友だちのことを恋愛的に好き、ということに関して悩みや葛藤があったと思うのですが、映画ではあまり触れられていなかったので特筆事項なし。
考えすぎて眠れないほど繊細な性格なのに、クラスで一番に文化祭の劇の提案をし、半ば強引にクラスメイトを引っ張って成功させるジャイアン的行動力は、
矛盾しているようで、こういう人いるかもと思い、個人的には共感できた。
まあ、そんなに無理してたら修学旅行でぶっ倒れて、ヒコロヒーにお世話になるわな。
・京
主演とは思えない程、特筆事項なし。
三木のことは文字通り憧れで、「何としても自分のものにしたい」みたいな気持ちは、隠し事とかではなく、本当にないように見える。乱暴に言うと、、対して好きじゃないのでは、と思える。宮里に流されて思いを伝えたっぽいけど、何を伝えたかは、不明。(多分しょうもない薄っぺらい思いを伝えたんだろう)そこは観客の妄想力に委ねるということか、、向き不向きがある。私にはそのような素晴らしい妄想力はなかったです。
自分に自信が持てなく、自分なんて思いがち。でもなんでそう思うかとかまでは言及されてない。
あまりしゃべらなくてミステリアスで、しゃべったら普通に優しくて、顔はそこそこ整っていて、隣に明るい風の陽キャ男子がいる(←重要)男子って、、
以外と影でモテてて、クラスのマドンナ女子にひそかに好かれている。
これはなんか心当たりありました。
陽キャの隣にいる控え目男子モテる、これってあるあるなんですかね。
・宮里
シャンプー変えたの気づかれて動揺し、京に嫌われたと思い込み2か月も学校を休む。
これだけでは意味不明なので、後半宮里がここまで繊細で自意識過剰になった、切ない過去とかが明かされるのかと思いきや…。最後まで何もなかったですね。
ただの奇抜な人でした。
・ヅカ
にこにこしてて人当たりがすごくよくて、、でも実は人一倍辛い過去があって闇を抱えていてみたいな人っているよね、どんな過去があるんだろうと思いながら見ていましたが、
そこまで踏み込んだ描写はなし。
5人それぞれの視点で物語は書かれていくわけですが、ヅカのターンだけ圧倒的に短かったですね。
映画では、ただただニコニコしてて、全然心拍数の変わらない、だけの人でした。
④青春という名の虚像の詰め合わせ、ちぐはぐ感、胃もたれ
スミマセン、9割私情です。気分害す人いるかも。
頭良くて金持ちで、顔もよくて友達も好きな人もいる。青春のキラキラ詰め合わせで胃もたれしました。
まず高2の2月に進路が決まってて遅いって、そこそこ頭のいい進学校だと思います。
で、そんなそこそこの進学校って男女のキラキラとか基本ないと思うんですよ。
せいぜい、あの女子かわいいよな、ってひそひそ話してて文化祭で告白、くらいでしょう。
男女5人でグループ、受験期の夏休みにカフェに集合とか、カラオケでスクリーンに顔映して誕生日パーティ(^^♪…とか、ありえないですよ。
というか普通の高校でも、男女混合グループって、一部の青春強者たちだけが獲得できる珍しいもので、我々一般市民とは基本縁のないものだと思うんですよ。
ましてや全員が考えすぎる繊細過ぎるあの5人の組み合わせで?まあありえないでしょう。
しかも、学校も食堂付きのきれいな私立高校で、3泊4日?の修学旅行、豪華なホテル、都会のお金持ちはこんな生活してるんだと、言う気持ちになりました。はい、嫉妬です。羨ましい限りです(超個人的理由です。すみません。)
服も高校生にしてはオシャレで高価で、メイクもめちゃ上手。都会の高校生ってあんななんですか?田舎出身の私からしたら、とんだカルチャーショックでした。
ただ、「こんなの普通じゃね?」とか思ったそこのあなたは、飲み会とかでひそかに反感買っている可能性あるんで自覚した方がいいです。普通じゃないです、相当恵まれています。気づかないだけで。。
まあ単純に言うと、のどから手が出るほど羨ましい。この一言なんですよね。
過酷な受験勉強、コロナその他もろもろで失われた私の青春、、その恨みは底知れぬです(こじらせって怖いですね)。傷がえぐられる思いでした
⑤同性愛であることを”転”にしないで
「実は同性が好きでした」「マジか!」と起承転結の転に同性愛を持ってくるのは違和感ある。
自分にとってのあたりまえを、異質なものとしてコンテンツ化され、消費されるのは違和感。
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良かったところ
①全部知りたい?→いいかな のシーン
パラが血迷って三木に「私のこと全部知りたい?」と聞いたとき、三木が「(別に)いいかな」というシーン。
相手のことを全部知るなんて不可能だし、それを本気でやろうとしている人がいたら、なんか気持ち悪いので、この意見は共感できた。
三木が別にいいというその理由が「その方が楽しそうじゃん」という、曖昧っぽいけど的を得ている感想が、個人的には腑に落ちた。
②ヅカからパラへの激励シーン
なんか、「人の気持ちや、何が善か悪か的な抽象的なことは考えすぎなくていい。行動だけを見れば十分」「もっと気楽に」的なことを言ってた気がする。
セリフが難解だからか、演者のパーソナリティや技量か、全然内容入ってこなかったし、思い出せないけど。。
まあ、何かしらまともなことは言っていたのだと思います。。投げやりですみませんが、これが精いっぱいです
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たくさんの気づきをありがとうございました。
小説は映画では触れられてない、登場人物の内面が触れられていると思うので、そちらも機会があればチェックしたいと思います。
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