「どこかほっとさせる映画」TOKYOタクシー TSさんの映画レビュー(感想・評価)
どこかほっとさせる映画
原作の「パリタクシー」を観たときに、かつてパリを旅した記憶が呼び起こされたが、この作品でも、かつて東京や横浜に住んでいたときの記憶が呼び起こされた。
自分が訪ねたことのある場所が舞台となっているということは、映画への親近感を高めることになる。
東京の街は、パリと異なって中世以来の街並みなどほとんど皆無、明治以降、近代的な建築が更新され続け、パリではエッフェル塔が頑張っているが、東京では東京タワーと、その二代目と言うべきスカイツリーが立ち並ぶという様相。タクシーで巡る街並みの豊かさの差を感じざるを得ない。
一方で、物語は、原作のあらすじを上手く日本版に落とし込んでいて、違和感は感じなかった。1人の女性の愛と戦いの歴史。日本でリメイクされると、ウェットな話、重い話になるのではないかと危惧していたが、すみれ(倍賞千恵子)のさっぱりした性格と、宇佐美(木村拓哉)の冴えない感じのキャラクターのやりとりが、ある種のおかしみを感じさせる。なんとなく「男はつらいよ」に通じるものがある。
原作もこの作品も、「人に歴史あり」、「一期一会の出会い」がテーマなんだろう。映画のように大金の遺産を1日会っただけの人間に譲ることなど無いとは思うが、1日の出会いが人生を変えるきっかけになることはあり得るかもしれない。
宇佐美の「あのとき我が儘を聞いてヨコハマのホテルに泊めてあげれば・・・」という後悔は、その出会いがかけがえのない、素晴らしい体験であったことの裏返しでもある。
正直、あまり期待せずに観に行ったが、後味の良さを感じる良作でした。流石山田洋次監督。
共感ありがとうございます!
本作は御年94歳の山田洋次監督の90本目の作品だそうです。パリタクは未鑑賞なのですが、山田洋次監督が日本仕様にアレンジしてオリジナルのような作品に仕上げたことは容易に想像できました。
人情味にあふれた山田オリジナルの作品を、これからも楽しみにできる良い作品でした。
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