「『高野すみれ』という映画」TOKYOタクシー らぐさんの映画レビュー(感想・評価)
『高野すみれ』という映画
ザ・ヒューマンドラマ!
個人タクシーしてる宇佐美浩二と奥さん、その娘が高校で音楽学校に行くのに私立でバカ高くて
その上車検とか家賃の更新とかもあってお金が無い、となる。
とある日、高野すみれというおばあさん(85歳)をタクシーに乗せるが
その人が東京から神奈川のめっちゃ海沿いまで行きたいとか言うて、実はその海沿いが介護施設で
そこに行くまでに1日、色々その宇佐美とすみれが東京や神奈川を色々回って
すみれが自身の過去を語りつつ、最終的に親切にしてくれた宇佐美へお金を遺す話。
映画を、見た、という感じ。
ショーシャンクの空に、に近い終わりかも。それよか切ないですが。
すみれの過去は壮絶で
・東京空襲から始まり、父を失う
・飲食店を経営している母で暮らしてた
・北朝鮮人と恋に落ちたけど、その人は復興で北朝鮮戻らなきゃで お互い好きあってはいたけど結局国に戻っちゃって、でも実はお腹に赤ちゃんいました!北朝鮮人のその男とは二度と会うことがありませんでした。
・しばらくしてその赤ちゃん(勇くん)育てながらまた普通に恋愛して、結婚した
・しかしその男がとんでもなくクズで外面いいけど家庭内暴力、結婚前は勇くんを自分の子供のように育てるって言ったのに、実際はすみれが給食費とか足らないからもうちょっとお家にお金入れてほしいって言ったらあいつ俺の子供じゃねーし、お前の金でやれ。ってめっちゃ冷たく当たってる(なんなら普通にすみれのことも殴ってた)
・そのくせ「俺との子供作ろう」って何度も何度も迫ってて、二人きりになりたいってしつこいから、勇はおばあちゃんのところあずけて旅行へ
・旅行から帰ってきたらおばあちゃんが「勇の体にとんでもない跡がある、問い詰めたらあの男にめっちゃ殴られてる、でもお母さんには言わないでって泣きながら言ってた」って聞いてしまう
・その夜、勇をおばあちゃんのところに預けてすみれは睡眠薬を男に盛る
・「勇はずっとおばあちゃんの家に預けておこうよ」と男は言いつつ、すみれに迫る
・事後、火にかけてた煮え湯を男の股間にザッパーン!
・すみれが言うには「あの昭和の時代は家庭内暴力は普通だった」「旦那が妻や子供に暴力を振るうのは多々ある話だった」とのこと
・時代が時代だから(これは時代関係あるのか?とは思いましたが)殺人未遂で刑務所に9年入ってて、やっぱり「家庭内暴力で男の股間に煮え湯をかけた女」として大々的にニュースにもなった
・勇くんも後ろ指刺されて、グレちゃって仲間たちとバイク乗ってて事故って亡くなった
・すみれは出所して、美容室で働いてたときにネイルのきれいな海外のアスリートをテレビで見てネイル、これは流行る!って一人でアメリカ行ってネイル技術学ぶ
・日本帰ってきてネイルサロン経営して生きてきた。
強い女すぎる。
最終的に、老人ホームに着いて 「私、やっぱりまだこの1日を終わらせたくない。どこかホテルに泊まりたい」とすみれが言うんだけど
宇佐美が「わがまま言わないでください」って怒ってしまい。
そのまま別れるが、閉まった自動ドア越しに「あっ!タクシー代払うの忘れてた!」ってすみれが思い出し
「俺また来ます、今度は妻も連れて!」ってお別れしたあと、1週間後にその施設へついたら、もうすみれさんが亡くなっていると発覚。
葬式行ったらお手紙預かってますと言われ……
最初のシーン、介護施設に行く前に家を引き払うシーンがあるのですが
ネイルサロン経営や家を売ったお金、私にはもう必要ないから、親切な運転手さんありがとう、って言う感じの遺書と共に大金の小切手が同封されていた。
葬式帰り、家族を乗せた宇佐美がタクシーを運転しながら涙を流して…のシーンで終わる。
北朝鮮人との恋。後ろ指刺されるだろうに。
子供を抱いた日。そも、昭和のあの時代にシンママをするという気概。
DVに立ち向かった夜。やっぱり女は男に直接は勝てないから自分が殺されたって仕方ないのに。
煮え湯をぶっかけた瞬間。息子を守るという母の心。
息子を失い刑務所を生き抜いた9年間。看守さんには監視の目がつくけど葬式に行ける、と言われたけど行けるわけない、自殺も考えたけど刑務所内では簡単に死ねない、トイレで声を上げて泣いた、としっかり「人としての覚悟」を持ってる。
アメリカ行きを決めた瞬間。普通これを学ぼう!って思ったときに海外の片道切符だけ取って実際に行っちゃう探究心・行動力。
最期の遺書。それを人に分け与えることが出来る優しさ。
高野すみれ、最高にロックです。
ただ☆5にしたかったんですけど、☆4にした理由としては
個人的にこの作品における他の女が好きではなかったです。
その描写、必要ある?と思ってしまったのもあります。
高野すみれを上げるために、宇佐美浩二の妻と姉を落とした感じがしちゃって。
最初、宇佐美の妻が「ねえ、お義姉さんにお金借りられない?」「もう私の実家売るしかないわね、もう私の妹にも話つけてきたから。あーあ、妹も悲しんでたわ」って言ってたり
宇佐美の姉も「私も育ち盛りのが二人もいてそんなに金貸せるわけないでしょ!?(それは本当にそう)」とか
それを狙っているのであればうまい作り方してるけど、それをする必要があったのかな?とも。
どうしても宇佐美が「お金がないです!!」っていう描写をするならもっとあったのでは…?
そんなことしなくても、高野すみれという人物は十分に魅力的だったし、この映画のスポットライトを浴びてる主人公のひとりだったと思います。
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