「良くも悪くも山田洋次らしい作品」TOKYOタクシー 愛を求めてさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも山田洋次らしい作品
<総評>
良くも悪くも山田洋次らしい作品だと思いました。
話の流れに違和感がなく、ところどころポリコレが散りばめられているものの、そこまで主張の激しさや強引さは感じられないので、許容範囲だった。
ただ、山田洋次らしさが強すぎて、話のスケールが寅さん時代から広げられていないと感じた。
<あらすじ>
家族を養うために個人タクシーで運転手として働く宇佐美浩二(キムタク)。夜勤明けに新規で予約が入り、その予約客が高野すみれ(男はつらいよのさくら)というマダムで、そのマダムに振り回されつつもお互いに打ち解けていく…というストーリー。
<気になった点>
すみれマダムの過去話を聞きながら展開が進んでいくのだが、話の内容やスケールが寅さん時代から使い古されているようなネタが多く、焼き直しレベルにしか見えない。
ただ、この手のネタが好きな人にとっては問題のない完成度の構成だと思われる。
以下、使い古されたネタと感じたもの一覧
・若い頃に好きな男とできちゃったものの、子どもができたことに気づかずに別れてしまう
・子どもを育てながらも、男を作って映画館にいちゃつく(その間子どもは母親に預ける)
・結婚した男が亭主関白で、前の男の子どもが気に食わずに虐待する。すみれには自分の子どもが欲しいと言って、カラダの関係を迫る(結婚して夫婦の関係なのにね)
・すみれが刑務所に入ったことで、息子がグレてバイクの事故で亡くなる…などなど
一番すごいなと感じた点は、結婚した男の「昭和の男」らしさというか、幼児性をうまく表現できていたと思う。
この男はおそらくそんなにモテるわけではなく、コブ付きのすみれを狙って結婚まで持ち込んだものの、己の欲求(甘えたい、自分の子どもが欲しい)が満たされないがために妻や連れ子に当たり散らし、結果破局してしまうのは救いがないように思える。
裁判で男性機能がなくなった旦那に対して、すみれの「世の中のためになったと思います!」という発言は、山田洋次らしい発言のように思える。リアルに考えると、性機能がなくなるどころでは済まないレベルだと思うが…
刑務所に入るまでがクライマックスで、ここから話のスケールが一気に限界を迎える。出所後は美容院で働き、外国人のネイルに憧れて渡米し、働きながら勉強してネイルアーティストになって…と膨らませられそうな話題が出てくるものの、ここからの描写は段々と言葉だけ済ませられる。このネイルアーティストの設定のおかげで、すみれはリッチなマダムになれたのだが掘り下げがないせいで無駄設定と化しているように思える。これならお金持ちの人と再婚したほうがまだ自然なように感じる。
この辺りの描写の少なさから、下町スケールの話しか組み立てられないのではないか?と感じました。それが悪いと言いたいわけではないが、感動するには物足りなかったです。
ただ、よかったと感じるシーンもありました。
キムタクが、すみれの旦那の虐待話を聞いたことで反省し、喧嘩していた奥さんに電話で謝ろうとするシーンにはほっこりとさせられました。
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