「ちょっと中途半端だった感じ。もっと我儘に監督の好きな様に作れば良かったのに。」TOKYOタクシー saburoさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっと中途半端だった感じ。もっと我儘に監督の好きな様に作れば良かったのに。
まず最初に原題のパリタクシーは話の構成以外は本作の存在に重きをなしていないと感じました。本作はパリを東京に置き換えたパリタクシーのリメイクに見せかけた山田監督自身のレミニセンス作品だと感じました。
「山田・倍賞・柴又出発」これだけで判る人は判るようにこれは山田監督の昭和~平成(山田映画の黄金期だった時代)へのレミニセンス作品なのです。そして同時に時代の流れと共に移り変わっていった日本へのレミニセンスも込められています。レミニセンスを語る為に倍賞さんが演じる「時代の語り部たる高齢者」が各地を巡ると言う設定の最優先目的を達する為にタクシーが必要で、そのために原作としてパリタクシーの構成・設定を利用したのでしょう。
リメイクに見えるこの映画に隠された主題は山田監督のレミニセンスであり渥美清亡き後それを共に共感できる倍賞さんを軸にして作った作品だと感じました。パリタクシーのリメイクだとか木村拓哉を中心にして映画を観ると先入観で目が曇ってしまって、この映画の本質を捉えられないでしょう。それ以前に時代の背景や心理・行動はその時代を生きてないと共感しづらいとも思える。(昭和はハラスメントと言う言葉が無い時代だからね。親も教師も言葉より殴って聞かせてOKな時代。初期の寅さんなんて今だとハラスメントの権化みたいな人だからね。w)
そうなると観ている若い観客は倍賞と木村の掛け合いだけを共感対象として観る事になってしまい、映画全体に隠されている魅力を味わう事ができないので酷評が立つことになると思われます。
最後に本作は、例えるならば『宮崎映画を全部見た挙句にマニアックな設定集や自伝を読まないと「君は~」の良さが理解できない』等とオタクっぽい評論家やジブリマニア達が口を揃えて言う様に、「男は~」シリーズをある程度見ないと本作に込められた山田監督のレミニセンスを感じ取る事はできないといえるでしょう。できれば寅さんシリーズを最低20作以上見てからもう一度鑑賞しなおしてみてください。時代を生きた年寄りでなくてもまた違った感覚が湧くと思います。
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