「まったく噛み合いませんでした。」TOKYOタクシー お悩み姫さんの映画レビュー(感想・評価)
まったく噛み合いませんでした。
原作のパリタクシーは未鑑賞です。あくまでも本作のみへのコメントです。
死期の近い裕福な老人が偶然出会った他人とひと時交流する機会を得、感銘を受けた老人が最後にその他人の彼(彼女)に大きな贈り物をする。そこそこ使い古されたモチーフですけど、流れは悪くない。経済的余裕無いけれどいい関係性の家族を持ちややぶっきらぼうでとっつきにくそうだけれど頼まれると断れない運転手宇佐美と、身なりは裕福だけど訳ありそうで気難しそうなすみれ、タクシーの狭い車内でのやり取りが、彼女の思い出話を挟みながら、ぎこちなく、時にはすれ違いながら少しずつ深まっていく。ちょっと疲れてくたびれた中年ドライバーとしての木村さんは男前が過ぎるけど。まあいい男じゃないと話が輝かないのかもしれないだろうから致し方ないか。
深まっていくって書いたけれど、実際にはあまりそうではないのよね。最初こそギスギス感があるものの、それが収まってしまうとあんまり波風も経たず、最後まで淡々と進んでいく感じ、全然深くないんだわ。語られる彼女の人生はというと散らかっているだけで、だからどうなの?と思わずにはいられない、東京大空襲も戦後でもなかなか向上しない女性の地位が背景にある数々の苦労も心痛むけど。で彼女の前半生が波乱万丈だけどお金とは縁がなさそうで、でも今の彼女は裕福そうで目的地も葉山の(おそらくは高級な)老人施設で、そこへどう着地させるのかと期待していたら、あっさりと済まされてしまった。唐突にネイルの話になったかと思うと、ムショ帰りで愛息も失った50近い女性が一念発起して一瞬でお金持ち、以上。
もう一点、最後のほうで気になったのが入居施設の描写。時間守らないことに対する最初の電話は仕方ないとしても、出てきた従業員すべて冷たい態度はやりすぎだわ。すみれの本心が入居に前向きでないことはそれまでにもなんとなく示されているし、夜景の寂しさを見て車から降りず拒否反応になっていることで十分すぎるでしょ。こうした施設への偏見と悪意があるとしか思えない。
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