「エピソードが弱いけど」TOKYOタクシー オーばやしさんの映画レビュー(感想・評価)
エピソードが弱いけど
小説が原作とか、漫画原作を映画化ということであれば「別物として」というスタンスはあり得るが、今作は映画「パリタクシー」の東京版リメイクなので、確実に比較される。
まず誰もが思うのが「タクシー運転手男前すぎる」ということ。パリタクシーの運転手は短気でイラつき、すぐ怒る、怒鳴る、見た目オッチャン。東京版は男前キムタクで、怒鳴らない、殆どイラつかない。これがエピソードの弱さに直結する。
パリタクシーで主人公は医者である兄に金の無心をするが、関係性は最新から最後まで良くない。
東京版は、公務員の姉に頼むが、姉も余裕は無い!程度のエピソードで終わってしまう。
自分のだらしなさが招いた困窮というのがフランス版だが、東京版は、可愛い娘の為の困窮。キムタクの人柄の良さだけが際立つ。
フランス版はキレ気味の運転手が、少しづつほぐれて、最後には夕食を一緒に楽しむところまで行く、しかも運転手が払う。その心の動きの高低差がドラマなんだが、東京版は高低差が少ない。
旦那のDVっぷりもフランス版と日本版では、日本版の小物っぷりが目立つ。理不尽さが小さいので、アレでソコまでやられちゃうの?って思う。もっと酷い男として描くべきだったと思う。
老人ホームでの別れのシーンもフランス版の方が納得感が高い。そもそも優しい運転手が優しく対応しました。あくまで職務上のサービスです。って匂いがしちゃうのが東京版。
フランス版は本当に心の交流が感じられるので、別れのシーンの描かれ方も情緒が高まる。
しかし、ラストシーンがフランス版は「え~~~!」って思った。遺産を手にしたと知った奥さんの喜びようが感動を根こそぎ奪っていくのだ。
日本版は、優香の抑えた演技が、遺産よりも悲しみに暮れる旦那の心情表現を消すことなく効いている。
また、キムタクの最後の後悔は蛇足と判断される可能性もある追加シナリオだが、その後悔がこれからの人生で後悔しない生き方を選ぶ布石になるのだろう。そういう演出であった。
