劇場公開日 2025年11月21日

「日本のひとつの時代を生きた、ひとりの女性の定点観測」TOKYOタクシー 蓮華くんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 日本のひとつの時代を生きた、ひとりの女性の定点観測

2025年11月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

驚く

あらすじは、

個人タクシードライバーとしてあくせく働く宇佐美浩二(木村拓哉さん)が、妻(優香さん)と長女(中島瑠菜さん)と3人家族で生活に追われているところ、

急遽、腰痛で動けなくなった同業ドライバーからの代行の依頼が舞い込み、長距離の良い仕事を受けることに。

宇佐美が依頼された場所に車を回すと、高齢のマダム・高野すみれ(倍賞千恵子さん)が1人で乗車する。

彼女は85歳の戦前生まれで、神奈川県の葉山にある高齢者施設への転居を予定していて、「東京を去るその直前に、自分の思い出のある各地を見納めしたい」という依頼内容でした。

依頼を受けた宇佐美は最初はビジネスライクでしたが、車内ですみれが歩んできた人生の話を聞いていくうちに、その容易ならざる巡り合わせ・境遇に、圧倒され、次第に共感を覚えていく。

というものです。

私は山田洋次監督作品は、「幸せの黄色いハンカチ」だけを見たことがある程度だったので、最初は本作を「けっこうほのぼのした雰囲気の映画かな」と思っていたのですが、

見てみると、けっこう「ギョッ」とする過激な描写もあり、そして、山田さんの思想信条的に、「国家権力を良しとしない」バイアスが少しだけかかっているように感じました。

ただ、本筋としては、

時代の荒波に翻弄されながら、「確かに生きてきた」、高野すみれというひとりの女性が何を、どのように見てきたかという、

定点観測記録の伝承映画(作品としてはフィクションですが、そこにはリアルも多分に含まれていると思います)というのがメインであり、

実際、戦前生まれの方々も、高齢になってきているので、

その、まなざしから見ていたものを、映画を通して、体感して知ることができて良かったです。

あと、役者さんがみなさん素晴らしい演技でした。

倍賞千恵子さんは、もう、何も文句のつけられないような「高野すみれ」その人でしたので、感服しました。

木村拓哉さんは、非常に自然な演技で、「かっこつけない、かっこいい父親」になっていて、人柄が素敵だなと思いました。

あと、優香さんも、役作りの完成度が高くて驚きました。宇佐美の妻として作品にストンとハマり、作品全体にリアリティを感じることができました。

過去回想シーンでのすみれは蒼井優さんが演じていて、若々しい、昭和の時代にマッチした魅力ある女性を演じられていました。

個人的に、気に入ったのは、

作品冒頭と最後の方だけ出てくる、笹野高史さんが、コケそうなよろめきをする動きに、職人芸の神髄を見た気がしてとても満足しました。

終盤ではウルッと来るくらい感動したので、星4.5です!

蓮華くん
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