「観て幸せになる作品じゃないと映画を撮る意味がない、と言うが。」TOKYOタクシー にっくさんの映画レビュー(感想・評価)
観て幸せになる作品じゃないと映画を撮る意味がない、と言うが。
「観て幸せになる作品じゃないと映画を撮る意味がない」という趣旨のことを主張する、山田洋次監督の作品。
2022年仏公開の「パリ・タクシー」の舞台を、パリから東京に持ってきたリメイク。
人生の終末期を迎えた高齢女性すみれを倍賞千恵子、タクシードライバー(浩二)は木村拓哉が演じる。
葛飾柴又に、タクシー運転手が突然代わって、すみれを迎えに行った浩二は、経済的に少し困っていて(娘の学費がきついなど)、一見愛想が良くないが根は人情味あふれる人で
高齢女性すみれの思い出の場所を、都内⇒横浜⇒葉山 と巡っていくうちに
とんでもない思い出話にだんだん共感し、引き込まれていく。
すみれが幼い頃の言問橋の思い出を語るところは、自分もまだ生まれてないので
まさか言問橋で戦時中大悲劇の起こったことは知らなかった。
20歳になったすみれは、
在日朝鮮人と恋に落ち、でも男が朝鮮建国のために国に帰ってしまい、
その時おなかの中には男の子がいて、
生んでしばらくお母さんと育てていたが、やがて小川という男と再び恋に落ち、
小川は最初は「子供も自分の子として面倒を見る」と言っていて結婚したが、
次第にDVが激しくなっていき、ある時子供にも大きなアザを見つけると
もう我慢できず、小川の局所をやけどさせ男性機能を失わせてしまい
懲役9年の判決を受ける(育てていた男の子はその間に交通事故で死ぬ)。
現在の話に戻って、
横浜では美味しいというシュークリームを買い、
その頃にはもう打ち解けていたので、横浜のホテルで素敵なディナーを浩二とすみれが一緒にとる。
そして葉山の老人施設に遅れて到着し、おばあさんのすみれが
「暗くて今ここに入りたくない。さっきの横浜のホテルに泊まる」と駄々をこねるが
浩二は「それはできない」と常識的なことを言って、
ふたりを自動ドアが隔ててもう入れなくなってしまうが、これが最後の別れとなる。
一週間後に、未払いだったタクシー代の徴収と、浩二の奥さんにもすみれに会わせるために
奥さんと一緒に老人施設を訪れるが、その時にはすみれは心臓発作で死んでしまっており、もうこの世にはいない。
驚く浩二たちの前に、司法書士阿部(=笹野高史)が現れ、遺書を預かっているという。
遺書を読むと続きで小切手も入っていて、1000万円と額が書いてあって学費問題もクリアーで、ハッピー(?)エンドという話だった。
一応幸せを感じる映画だが、もうちょっと本当に幸せを感じたかったので、3.5点。
ちょっとおとぎ話感が強すぎかな?
笹野高史は昔から山田組と言っていい存在で(人を寄せ付けなかった渥美清と話ができた貴重な存在)、大河ドラマでは豊臣秀吉を演じ多方面で大活躍し(今年だけでも「ババンババンバンバンパイア」とか「港のひかり」など)、「どんな役にもカッコよさがある」ことを物事に取り組む姿勢としており台詞の裏に隠された役の深みを知るために台本の余白部分には担当役の履歴書を自分なりに書き込んでいるとの話通り、
いつ見ても安定感のある、でも意表を突いた演技をしている。もっともっと見たい俳優さんだ。
琥珀糖さん
こちらこそコメントを寄せてくださって有難うございます。
琥珀糖さんのレビューは、細やかで核心を突いていて、とても為になります。
「港のひかり」でも、笹野高史さんはある意味重要な役を担ってましたね。
また素晴らしいレビューを期待しています。
共感ありがとうございます。
笹野高史さんは本当に映画が温かくなりますね。
気難しい渥美清とが心を開いたのが笹野さんだったのですか?
「港のひかり」も、舘ひろしの三浦が唯一頼る相手でしたね。
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