「キムタクシー」TOKYOタクシー 酔爺さんの映画レビュー(感想・評価)
キムタクシー
【所感】
タクシー運転手(以下、運)
「お客さん、どちらまで?」
酔爺(以下、酔)
「隣町までお願いします。近くて恐縮です。」
運「買い物のお帰りですか?」
酔「いえ、映画を観た帰りです。」
運「映画ですか、いいですねぇ。わたしも休みの日には映画観に行きます。」
酔「今日は、「TOKYOタクシー」 を観てきました。」
運「キムタクと倍賞千恵子のやつですね。私も明日観ようかと。どうでしたか?」
酔「では、なるべくネタばれしないように。」
運「私は気にしませんよ。」
酔「主人公の宇佐美浩二(木村拓哉:以下、キムタク)は、毎日タクシーを走らせながらも、娘の学費、賃貸住宅の更新料、車検費用のプレッシャーに悩む中年ドライバーです。」
運「私と同じ中年ドライバーなんですね。」
酔「もうひとりの主人公は、高野すみれ(倍賞千恵子:以下、さくら)は85歳という年齢で、高齢者施設に向かう途中で、自分の人生を振り返りながら、東京の思い出の場所を巡ることを望みます。」
運「すみれの花ではなく、さくらの花の小旅行ですね。」
酔「キムタクは、彼女の願いを受け止めて、都内を巡ります。」
運「面白そうですね。」
酔「正直、期待せずに観たのですが、予想以上によかったです。」
運「どこがよかったのか、少し教えてください。」
酔「まず、この1日の行程は、単なるさくらの送迎ではありません。彼女の人生の思い出をキムタクが聞きながら運転していくので、観客もキムタクと一緒に、彼女の話を聞きながらタクシーに乗っているような気持ちになります。」
運「まさに、臨乗(場)感ですね。」
酔「また、東京の思い出の地の描写は、観光的でもあり、隅田川や言問橋、夜の横浜などの風景も印象的でした。」
運「観光タクシーですね。」
酔「思い出の地で、すみれが過去の苦労と喜びを語る描写にも見入ってしまいました。」
運「シーンとするシーンですね。」
酔「キムタクも、彼女の話を聞きながら、自分自身の生き方を見つめ直すようになっていくのも自然な流れでした。」
運「清聴して成長するんですね。」
酔「タクシー内の撮影はほとんどセットですが、キムタクの運転する背景処理も不自然に見えませんでした。リアルさを追求するために新しい撮影技術が導入されたそうです。」
運「キムタク(卓)越した技術ですね。」
酔「物語は、ほとんど車内と回想を中心に進むので、物語が単調になるかと思いましたが、そんなことはありませんでした。」
運「回想(送)車ですね。」
酔「衝撃的だったのは、さくらの過去が想定外にかなり悲惨なこと。なので、次はどんな悲惨なエピソードが出てくるのか、ひやひやしました。」
運「冬なのに余計に寒かったでしょうね。」
酔「原作のフランス映画も同様に、マダムが悲惨な過去を語るようです。」
運「ところで、キムタクがタクシー運転手とは似合いませんね。」
酔「そうなんです。キムタクはやはりどう演じてもキムタクにしか見えません。かっこいいです。これがマイナス。」
運「ナイスガイなのに、マイナスガイ。」
酔「私的には、大泉洋が演じたほうが、もっと物語に笑いと涙が醸し出されたのではと思いました。」
運「陰ではなく、洋(陽)の物語になったでしょうね。」
酔「といいつつ、若い頃はかっこよかった男が、今は初老のタクシー運転手という役柄も合わないことはなかったですが、スター性、抜群の華、強いオーラ、姿勢・表情・声の説得力は隠せませんね。」
運「他の役者はどうでしたか?」
酔「さくらは、さすがの演技でした。失礼を承知で、ちょっといつものさくらさんより顔の年輪が目立ちますが、たぶん少し年輪足しているのではないかと。声はとても85歳と思えないほど若い時と同じで、劇中の「星屑の町」「とても静かな夜だから」の歌声もよかったです。」
運「さくら(すみれ)、百まで歌声忘れずですね。」
酔「笹野高史は、先日観た「港のひかり」の役柄と似ていて、ちょっと昨日の今日なので混乱しました。まあ、いつも似たような役をしていて、寅さんの時から山田洋次のお気に入りの俳優ですが。」
酔「蒼井優はなかなか熱演ですが、山ちゃんは気が気でないかも。さくらとは全然似ていないので、そこはどうかと。」
酔「DV迫田孝也は超むかつきました。彼はむかつく演技が似合っていますね。でも、DVの贖罪方法は想像を絶していて、少しかわいそうになりました。」
酔「子役は、アンパンの柳井たかしの子ども時代の子役ですね。」
運「人生いろいろ、役柄もいろいろですね。」
運「全体的にどうでしたか?」
酔「「人生の厳しさ」「人生のやさしさ」「記憶の重み」「人と人とのつながり」「贖罪」というテーマは心に響きます。山田洋次監督からのメッセージは力強く、キムタクシーならず、ヤマタクシーですね。」
運「いろいろ、ありがとうございます。あとは、観る時にタクシ(託し)ーます。」
運「大変すみません。映画の話に気を取られて、うっかり、遠くまで来てしまいました。」
酔「大丈夫です。戻るまで、今度は私の思い出話を聞いてください。」
<補足>
・ラストクレジットの山田洋次の字体は、寅さん映画の字体では?
・劇場は、ほぼ満席でした。観客は70歳から80歳代がほとんどでした。
・原作のフランス版も機会があれば観てみたいです。
・さくらが、寅さんの思い出をキムタクに語る話にすれば。おっと、それでは「お帰り寅さん」になりますね。
・ラストは賛否両論になるかもしれません。私的には、このラストは・・・。
いろいろ書きましたが、結構泣けました。キムタクシーに乗りたい方はぜひ劇場でご覧ください。
11/23 酔爺
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