「静かに心をほどく寄り道の旅」TOKYOタクシー 藤宮・アーク・紗希さんの映画レビュー(感想・評価)
静かに心をほどく寄り道の旅
『TOKYOタクシー』は、派手な事件も劇的な展開もないのに、観ているうちに胸の奥がじわっと温かくなる…そんな静かな余韻のある作品でした。
人生にちょっと疲れてしまったタクシー運転手・浩二と、人生の終盤を静かに受け止めようとしている老女・高野すみれ。ふたりの関係は、特別なドラマがあるわけではないのですが、その“ささやかさ”がかえって心に深く届いてきます。
すみれが東京を「見納め」に巡っていく姿には、長い人生を締めくくろうとする静かな覚悟があって、私はそのたびに胸がきゅっと縮むような感覚になりました。
一方の浩二は、日々の生活にくたびれきっていて、どこか前を向く力を失っている人物。でも、すみれと過ごすわずかな時間のなかで、彼の心がほんの少しずつ動き始めるのが伝わってきます。
倍賞千恵子さんの佇まいは圧倒的で、木村拓哉さん演じる浩二との対比もとても自然。静かな会話のひとつひとつに“人生の重み”が滲んでいて、気づくと物語そのものに寄り添っている自分がいました。
観終わったあと、誰かの人生にそっと立ち会ったような、あたたかくてちょっと切ない余韻が残る作品です。
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