劇場公開日 2025年11月21日

「老婦人の身なりは、みすぼらしい方が良かったと思えてならない」TOKYOタクシー tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 老婦人の身なりは、みすぼらしい方が良かったと思えてならない

2025年11月23日
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倍賞千恵子と木村拓哉のアンサンブルは楽しめるし、柴又の帝釈天から始まる小さな旅の物語は、「寅さん」に対する郷愁を掻き立てる。
フランス映画の「パリタクシー」のリメイクだが、序盤から、東京大空襲だとか、在日朝鮮人の帰還事業だとかのエピソードが盛り込まれて、邦画としてのオリジナリティーが感じられた。
老婦人の凄惨な過去が、比較的早い時期に明らかになったところで、もしかしたら、バブルの崩壊とか、東日本大震災とかに関連した、更なる苦難が語られるのかとも思ったのだが、中盤以降に、あまり日本らしさが感じられる展開がなかったのは、やや物足りなかった。
老婦人が「殺人未遂犯」になった経緯にしても、息子に手を上げた夫を許せなかったことは理解できるものの、妻や息子が、それほど酷い暴力を受けていたようには見えなかったし、「そういう時代」であっただけに、彼女の行為に爽快感を覚えるどころか、「いくら何でもやり過ぎだろう」と思えてしまう。
何よりも、彼女が、最初から裕福そうに見えたのは、だから、運転手は、彼女に親切に接したのだということになるし、ラストの展開も容易に予想できてしまうので、失敗だったとしか思えない。
終盤に、彼女がネイルサロンの経営で成功したということを明らかにするのであれば、サプライズを演出するためにも、彼女はみすぼらしい身なりをしていた方が良かったのではないかと思えてならない。
運転手の親切も、確かに手厚いと思えるのだが、徹夜明けで無愛想だった運転手が、どうして老婦人に親切にしたのかがよく分からなかった(身なりが良かったから?)ので、例えば、老婦人を自分の母親と重ね合わせたからといった理由が示されたならば、彼の行為にも説得力が増したのではないかと思われる。その他にも、妻や娘のことだけでなく、彼が、いつから、どういう理由でタクシーの運転手になったのかということも気になった。
それから、都内の道順がおかしいのではないかと思ったり、みなとみらいで食事をして、元町でケーキを買っていたら、とても葉山まで1時間で行くことはできないだろうと突っ込みを入れたくなったのだが、こうした映画を楽しむためには、そうした、重箱の隅をつつくような野暮は慎むべきだと自らを戒めた。

tomato
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