「人生の終盤に見つけた心の寄り道」TOKYOタクシー leoさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の終盤に見つけた心の寄り道
今回も舞台挨拶の中継付き上映で鑑賞しました。
その様子は感想の中で触れます。
観客は約80名ほどで、女性7割、男性3割といった感じでした。
この映画はフランス映画『パリ、タクシー』が原案で、おおむねその流れを踏まえている。
物語の半分以上はタクシー内のシーンで、撮影はスタジオにタクシーを置き、周囲をVP(バーチャル・プロダクション)のLED壁で囲み、そこへ事前撮影した東京の街並みを映し出すという方法。大型ディスプレイを背景に演技するような形だ。
映し出される景色は、柴又を皮切りに、隅田川に掛かる言問橋、浅草、皇居、神宮外苑のイチョウ並木、渋谷スクランブル交差点、夕景の横浜ベイブリッジなど。
タクシーとは、他人同士が一時的に同じ空間を共有する“異空間”とも言える。そこに運転手役がキムタクとなれば、倍賞千恵子演じるすみれの気持ちも自然と高揚する。
倍賞千恵子は、木村拓哉との掛け合いが本当に楽しそうで、乙女のような雰囲気さえ感じられた。
木村拓哉は“キムタク”ではなく、完全に「木村拓哉」という俳優として、普通の個人タクシードライバーに徹していた点が好印象。
53歳とは思えない格好良さは相変わらずだった。
また、若い頃のすみれを演じた蒼井優は、若き日の倍賞千恵子(「男はつらいよ」のサクラ)を思わせる話し方や立ち居振る舞いで驚かされた。
山田洋次監督(94歳)は本作で91作目。アメリカにはイーストウッド(95歳)という“同世代のライバル”もいるが、ぜひお二人とも無理なく、ゆっくりと活動してほしい。
大人向けの映画で、特に50代以上には響くものがあるはず。
ヒロイックなキムタクを期待して観ると物足りなさを感じるかもしれないが、“俳優・木村拓哉”を見る映画としては十分楽しめる。
とにかく、山田監督には健康第一でゆっくりしてほしいと感じた。
〇初日舞台挨拶の様子
全国220館での舞台挨拶ライブビューイング。
壇上には倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴の俳優7名に山田洋次監督を加えた8名が登壇。以下に印象的なインタビュー内容を記載する。
【山田洋次監督】
・昨年の今頃に撮影しており、こうして1年後に無事公開できた。高齢の自分を周囲が気遣ってくれ、その温かさが映画にも反映されたと感じる。
・毎回、毎回、一所懸命に映画を作るが、本当に撮りたかった映画になっているのか不安になる。舞台挨拶で観客の反応を見て、ようやく“審判”が下る気持ちになる。
・良い俳優と出会えるかが監督の運命を左右する。芝居の上手下手以前に、人間としての魅力が作品を決めてしまうことが多い。どれだけ見ていても飽きない俳優こそ良い俳優だ。
【倍賞千恵子】
・撮影初日は柴又でのロケ。『男はつらいよ』の終着点だった柴又で、本作という新たなスタートが始まり感無量だった。
・84歳で映画178作、そのうち約70本が山田監督作品。最初の出演は『下町の太陽』で、当時脚本・監督の山田さんに挨拶に行った出会いが忘れられない。
・公開日を迎え、改めてスタートラインに立った気持ち。演じる前に“人としてどうあるか”が問われると感じ、自分はまだまだ未熟だと思う。
・木村拓哉さんは真面目で、どんな言葉を投げても受け止める度量がある。後部座席から掛け合うシーンでも、その懐の深さが自然と台詞に反映された。
【木村拓哉】
・本作に携わった人たちの想いが“作品の艶”になり、味わい深い映画が完成した。山田監督は台本通りに順撮りするため、非常にリアルな映画になったと感じる。
・自分は舞台挨拶が上映後になることが多く、鑑賞後の観客の表情がいつも忘れられない。それもまた出会いの一つ。
・倍賞さんは経験が桁違いで、最後は笑顔で包み込んでくれるような“優しい魔法”のような人。
【蒼井優】
・かつて山田監督作『学校』のオーディションに落ち、芝居に向いていないと思い一年半ほど休んだ。その後『おとうと』のオファーで再挑戦を決意した。
47都道府県あるので、今後“北海道タクシー”や“新潟タクシー”など続編が作れるはず。このメンバーでまた撮影したい。
以上
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