「人情物語に心温まる」TOKYOタクシー おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
人情物語に心温まる
■ 作品情報
監督: 山田洋次。主要キャスト: 倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香。脚本: 山田洋次、朝原雄三。製作国: 日本。原作: 2022年のフランス映画「パリタクシー」
■ ストーリー
経済的な問題を抱えるタクシー運転手・宇佐美浩二は、85歳の高野すみれを東京・柴又から神奈川・葉山の高齢者施設まで送る依頼を受ける。すみれは東京の見納めのため、浩二に自身の思い出の場所への寄り道を頼む。当初、無愛想だった二人は、道中の交流を通して徐々に心を通わせていく。その中で、すみれは浩二に自身の壮絶な過去を語り始める。彼女の人生には、戦後の日本の女性が直面した困難や個人的な喪失、葛藤が含まれており、たった一日の旅が、しだいに二人の人生に大きな影響を与えていく。
■ 感想
予告編の時点で涙が溢れそうになり、期待して公開初日に鑑賞してきました。ストーリーの大筋は予告で把握していましたが、たった一日の小旅行を通して深まる、すみれと宇佐美の交流が実に心地よく、静かな感動をもたらします。
物語の核となるのは、老婦人・高野すみれの過去です。過酷な経験をしてきたはずなのに、それを明るく、赤裸々に語る現在の彼女の姿は、観る者の心に強く焼き付きます。その圧倒的な存在感と人柄に深く引き込まれます。
そんなすみれの話し相手となる宇佐美の変容も、本作の見どころの一つです。最初は無愛想だった宇佐美が、すみれの言葉に促されるように徐々に心を開いていく様子に、観ているこちらまで穏やかな気持ちになります。妻との馴れ初めや家族の話を語り、妻への態度を電話で素直に謝罪する姿は、彼の内面の変化を鮮やかに映し出しています。
物語の結末は、良い意味で予想を1000%裏切りません。意外性こそありませんが、「観たいものを期待通りに観せてもらえた」という、この上ない安心感と満足感があります。劇的な出来事が起こるわけではない、すみれの過去が淡々と語られる構成だからこそ、旅の終わりが近づくにつれて、なんだか寂しくなり、じんわりと心に沁み入るものがあります。
タクシーの窓から流れる東京の景色とともに、まるで自分ものんびり東京観光をしているかのような疑似体験を味わうことができ、さらに深く人情の機微に触れることができた、本当に幸せなひとときでした。
共感ありがとうございます!
山田洋次監督の人情物作品は、ハズレがないから安心して観られますよね。パリタク未鑑賞なので、他の監督だったら観るか観ないか迷っていたと思います。
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