「この世への置き土産としては過大に思うものの、それをさせてくれたことへの感謝も込められているのかもしれません」TOKYOタクシー Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
この世への置き土産としては過大に思うものの、それをさせてくれたことへの感謝も込められているのかもしれません
2025.11.21 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(103分、G)
リメイク元はフランス映画『Une belle cource』
ある老女を施設まで送り届けるタクシー運転手を描いたヒューマンドラマ
監督は山田洋次
脚本は山田洋次&朝原雄三
物語は、個人タクシーを営んでいる宇佐美浩二(木村拓哉)の日常が描かれて始まる
彼には妻・薫(優香)との間に中学生になる娘・奈菜(中嶋瑠菜)がいて、娘の音大付属高校に行かせるための資金繰りに困っていた
個人経営のため、タクシーの車検にもお金がかかり、家賃の支払いにも苦慮していた
妻はスーパーに働きに出ているものの、それだけではやりくりできず、私立に入るための入学金の工面に頭を悩ませていたのである
そんな彼の元に、同僚(声:明石家さんま)から、あるお客を送り届けてほしいという依頼が入った
その客は、自宅から施設に移ることになった老女・高野すみれ(倍賞千恵子)で、彼女は施設に向かうまでの間は下道で色んなところを回りたいという
宇佐美はその要望に応え、彼女の思い出が詰まっている場所を訪れながら、彼女の過去話に耳を傾けることになったのである
映画は、フランス映画のリメイク作品で、ネタ元を知った上での鑑賞
オチまで全部知っていたので、どこまで再現するのかな、と思っていた
日本の戦後を背景にして、東京の景色を眺めながら価値観の変遷を見ていくような作品になっていて、リメイク元とほとんど同じだけど印象が違ってくる
おそらく、どの国でリメイクしても、背景が違うので違った物語に見えるかもしれない
ネタバレはしない方が良いものの、予告編で「そのシーン見せちゃダメでしょ」というところまで見せているので、踏んでしまった人はご愁傷様という感じになっている
サプライズ出演(声)もあるし、要所要所で変わった配役があるものの、それは大した話題ではないのかもしれない
結局のところ、すみれの激動の人生にどれだけ共感できるのか、というところが命題になっていて、そこに寄り添えない人は合わないかもしれない
物語は、宇佐美にとってのサプライズで終わるのだが、この流れをこの家族で行うと、色々と後が大変だなあと思った
わずかな足しレベルだと経済観念に影響を与えないと思うが、あそこまでの額だと勤労意欲とか、経済的な倫理観が崩壊してしまいそうに思う
自らの努力でお金を稼いできた人は、その都度お金の魔力の洗礼を受けることになるが、このような感じでの大金の獲得は身を滅ぼすきっかけになることが多い
それゆえに、この家族は大丈夫かなあと思ってしまった
いずれにせよ、キャスト&監督映画であることは間違いなく、キムタクの運転で東京周回旅行をしたい人にはOKの作品であると思う
タクシーという奇妙な空間が織りなす、その場限りの人間関係というものは面白いもので、誰にも語れなかった物語を紡げる良い機会のようにも思える
コロナ禍以降だと、運転席との間に仕切りが設けられていたりと、映画のようには行かないと思うが、そう言うところは抜きにして、自分だったら彼に何を語るのだろうか、ということに思いを馳せても良いのかもしれません
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