「人生を動かす出会いと別れの物語。」TOKYOタクシー コウさんの映画レビュー(感想・評価)
人生を動かす出会いと別れの物語。
★4.2
試写会にて観賞。
原作(パリタクシー)鑑賞済。
舞台がパリから東京に変わるとどうなるのかと思っていたけれど、とても良い作品でした。
主演のお二人は共に原作のイメージとは違う印象だったけれど、東京を舞台にした今作にはとても合っていて素敵でした。
舞台が変わっているので原作とは異なる箇所が多いのですが、個人的に良かったのが、倍賞千恵子さん演じるすみれの職業がネイリストになっていたこと。序盤からすみれさんの手元の美しさにはっとさせられていたので、ディナーでの会話で明かされた時にそうきたか〜!と嬉しくなりました。
原作に寄せると、フェミニズムや女性権利獲得の歴史、ミソジニーについてという点がもっと強めに描かれるのかと思っていたのですが、すみれさんの職業がネイリストになった事で、それらが良い意味で緩和された印象を受けました。
原作がそれらに重点を置いているのは理解していますが、舞台が日本となると、刑期を終えてから活動家として生きたすみれというのはやはりちょっと違うかなと。今作で描かれたように、アメリカに単身で渡り、自分の努力でもって知識と技術を得てネイリストとして自立した彼女の人生の方が、より身近に感じられ、個人的には良い変更点だなと感じました。
また、ネイルだけでなく、すみれのファッションと佇まい自体がとても素敵でした。あんなに鮮やかで素敵なパープルのコートを着こなせるマダム、憧れちゃいます。
サングラスからメガネにチェンジした姿も、コートを脱ぐと少し落ち着いた印象に変わる着こなしも、首元のネックレスとイヤリング(ピアス?)も、とっても素敵でした。
私も歳を重ねたら、あんな素敵なマダムになれるように頑張りたいなぁなんて。
木村拓哉さん演じる宇佐美が、すみれとの出会いを通して自分を省みる事ができた点は原作と同じなのたけれど、彼の家族とのあり方は原作よりも多く描かれていて、自分が変わる事ができれば人生も良い方向に変えることが可能なのだと分かりやすくメッセージとして伝わって、こちらも良い変更点だなと感じました。
全てを終えた帰り道のタクシーで、運転中にすみれを思いながら静かに涙を流す宇佐美のシーンが切なくて悲しくて、泣けました。
出会う人によって、人の人生って大きく変わるものだなぁとしみじみ感じましたね。それは宇佐美が結果的に大金を手にしたという物理的な面だけではなくて、すみれとの出会いが宇佐美の心理に変化をもたらし、ここからまた新たな人生が再スタートしたというような、悲しさの中にもどこか清々しさが感じられたからではないかと思います。
どんな映画にも言える事だと思うけれど、見る人のステージによって心を動かされるポイントがかなり違う作品ではないかと思います。
人生の最期に自分の一生を振り返った時、どんなに辛い過去があったとしても、最後に素敵な人との楽しく美しい出会いを得る事ができたすみれが、とても羨ましく感じました。
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