「【今作は名匠山田洋次監督による人生の喜怒哀楽が詰め込まれたロードムービーであり、大女優倍賞千恵子さんと木村拓哉さんの演技に支えられた人間性肯定映画であり、鑑賞後の余韻が大変心地良き作品でもある。】」TOKYOタクシー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は名匠山田洋次監督による人生の喜怒哀楽が詰め込まれたロードムービーであり、大女優倍賞千恵子さんと木村拓哉さんの演技に支えられた人間性肯定映画であり、鑑賞後の余韻が大変心地良き作品でもある。】
ー ご存じの様に、今作は2022年公開のフランス映画「パリタクシー」を原案にしているが、名匠山田洋次監督の手にかかると、これが見事に人間性肯定映画になるのである。流石と言うほかはない。(勿論、「パリタクシー」も佳き作品ですよ。私はオリジナルとリメイクを比較する事は、余り好まないのでどちらが良いのかという事は書かない。敢えて書くなら、”どちらも良い。”である。)ー
<Caution! 以下、内容に触れていますので、鑑賞後にお読みください。>
■休みなく働くタクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、夜シフトが終わり早朝に帰宅する。妻(優香)もスーパーで働いているが、彼と娘(中島瑠菜)の為にキチンと朝食を用意してくれている。
娘は、念願の名門音楽私学への推薦入学が決まるが、その高額な学費を聞き、夫婦で金の算段を考えるている時に、仲間から”腰を痛めたので仕事を代わってくれ。”と連絡が入り、彼は指定の葛飾の柴又帝釈天まで車を出すのである。
そこに居たのは、品の良いお金持ち風の老婦人高野すみれ(倍賞千恵子:若き時は蒼井優。名女優共演である。)であった。すみれの行き先は、神奈川・葉山の高齢者施設であったが、彼女の希望で東京内の彼女の想い出の地を巡りながら葉山に向かう二人なのであった。
◆感想
・すみれが指定する場所は、父が第二次世界大戦末期の東京大空襲で亡くなった橋であり、初恋の朝鮮人青年と過ごした場所である。この作品は、山田洋次監督が激変する東京の中で戦後の面影を残す場所を探すが如きロードムービーなのだが、残念ながらその面影は殆どない。
・そして、すみれが朝鮮人青年の子を宿しながら、青年が朝鮮戦争により祖国に帰った後に結婚した愚かしきDV男の話に移って行くのである。
その際に彼女が言った言葉。”あの頃は男が女、子供に手を上げるのは普通だったのよ。DVなんて言葉も無かったし。”けれども、その後に彼女はこうも言うのである。”あの頃は、どの町でも活気があったわ。住んでいる人たちも元気があった。”と。
・愚かしきDV男に対するすみれの所業は原案とした作品でも同様の事が描かれているが、すみれは”それでも、女性達の多くが支援してくれたわ。ウーマン・リブっていうのかな。”と言うのである。
すみれは、刑務所内で息子が事故死した事を知った事や、出所後に女子陸上選手のジョイナーに影響を受けて、米国に渡り勉強しネイルサロンを開いた事を語るのである。因みにすみれの爪が綺麗な事に宇佐美は気付いている。
ー タクシー運転手さんは、客の服装、態度で人品を見抜く話を直接タクシー運転手さんから聞いた事があった事を少し思い出したシーンである。ー
・そのタクシー内の会話の中で、宇佐美浩二はすみれから促されて妻との出会いを語り、”素敵な奧さんなんでしょ。愛しているって言いなさい!”と言われたり、一時停止違反で警察に呼び止められた際にもすみれの名演技により(そりゃ、そうだ。)違反切符を切られずにすむ中で二人の交流は進み、夕食を共にするのである。
宇佐美浩二のすみれが立ち上がる時にさり気無く腕を貸す振る舞いなどが、ぎこちないながらも善性溢れる姿であり、それを木村拓哉さんが絶妙に演じているのである。
観ている側は、それにより宇佐美の奥さんがキチンと栄養バランスの取れた朝食を作り、娘が宇佐美に懐いている理由が分かるのである。良き男には、良き家庭があるのである。
そして、すみれの願いで二人は夜の街を腕を組んで歩くのである。すみれの嬉しそうな顔を観ていて、こちらも嬉しくなるのである。
・漸く高齢者施設に到着した時に、すみれは”夕食を摂ったホテルに泊まりたい。”と駄々をこねるのだが、宇佐美はその誘いを断り二人は別れるのである。
すみれはお金を支払い忘れるが、後日宇佐美が妻と訪問する時に支払う・・という事で。
・後日、宇佐美夫婦が高齢者施設を訪れると、すみれは数日前に亡くなっていた事が分かる。律儀に葬儀に出席した二人に近づいてくる柴又帝釈天ですみれを見送った男(笹野高史)。彼は司法書士の名詞を差し出し、”お時間が有れば、事務所にお越し頂けませんか?奥様からお預かりしている手紙があるのです。”と言い、二人にすみれの手紙を渡すのである。このシーンでの、すみれを演じた倍賞千恵子さんの張りのある美しい声で読み上げられる手紙に綴られた文章は、聞いていると涙が出そうになるのである。
そして、封筒内に入っていた一億円の小切手。驚く宇佐美夫婦であるが、これこそまさに”賢者の贈り物”であるよな、と思ったシーンなのである。
<今作は名匠山田洋次監督による人生の喜怒哀楽が全て詰め込まれたロードムービーであり、大女優倍賞千恵子さんと木村拓哉さんの演技に支えられた人間性肯定映画であり、鑑賞後の余韻が大変心地良き作品でもある。>
共感ありがとうございます!
まさに倍賞さんと木村さんの自然でありながら、確りと二人が心を通わせていく演技に引き込まれました。原作の仏名優さんも良かったですが、私は本作の二人の方に魅了されました。原作よりも本作の方が東京巡りの良さも加わって、私にはグッときました!
共感ありがとうございました。「男が女、子供に手を上げるのが普通だった、というセリフにはちょっと引っ掛かりました(が、普通ではないけどDVという意識が無い時代だったのは確か)でも、良い映画でした。
木村さんは、さりげない気配りがカッコ良すぎず、ぎこちなさの1歩手前で演じていて、良い感じでした。
共感ありがとうございます!
自分はフランス映画の鬱々としたところが苦手なのでパリタクは未鑑賞なんですが、そういう前置きなしで山田洋次監督の作品として本作に出逢えたことが、物凄く幸せに感じる作品でした。
事業を興して財産もあるのに、田園調布とか麻布十番とかではなく、女手一つで育ててくれたお母さんの思い出の残る下町、それも柴又の帝釈天近くに住んでいるなんて、山田洋次節炸裂で感激しました。ロケ地に選んでくれた横浜元町も地元なので、子供の頃家族で出かけた思い出も一緒になって、宇佐美とすみれが腕を組んで歩くシーンで、すでに涙腺が壊れてしまいました。
お褒めのコメントありがとうございます!
他にも候補があって…(笑)
「少し遠回りな寄り道デート」と「優しい木漏れ日の差す部屋でのサプライズ」で悩んだのですが🤔
「金髪」は期待せずに行ったんですが楽しめましたよ!
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