「色々と「?」の部分が多いのが難点で、そのあたりを整理すればネタバラシもうまく行ったように思えた」事故物件ゾク 恐い間取り Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
色々と「?」の部分が多いのが難点で、そのあたりを整理すればネタバラシもうまく行ったように思えた
2025.7.28 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(113分、G)
原作は松原タニシの『事故物件 怖い間取り4』
事故物件に住むことになった駆け出しのタレントを描いたホラー映画
監督は中田秀夫
脚本は保坂大輔
物語は、福岡にて工員をしている桑田ヤヒロ(渡辺翔太)が描かれて始まる
10代の頃から勤務し、同僚たちに慕われるヤヒロは、工場長の山中(滝藤賢一)から昇進の話を持ちかけられてしまう
だが、ヤヒロには夢があって、それは幼少期に出会った憧れのタレントのようになることだった
かつて俳優を目指していた山中はヤヒロにチャンスを与え、登場時代にお世話になった藤吉清(吉田鋼太郎)を頼るようにと告げた
東京に来たヤヒロが藤吉を尋ねると、「まずは住みますだな」と言い、近くの不動産屋を紹介した
そこでは「いわくつきの事故物件」を取り扱っていて、不動産屋の社長(じろう)から、「駆け出しのタレントたちは安い物件に住むんだよね」と言われてしまう
仕方なく「事故物件」に住むことになったヤヒロは、その日から奇妙な夢や出来事に苛まれることになった
その後、ようやくCMのエキストラ役の仕事を得たヤヒロは、CMタレントの亀梨和也(本人役)と出会い、カップル役をすることになった女優志望の夏鈴(畑芽育)と急接近することになった
ある日のこと、ヤヒロの部屋に来た夏鈴はただならぬ違和感を覚える
彼のスマホが見当たらずに掛けてみると、そこから奇妙な女の声がしてきた
夏鈴は引っ越した方が良いというものの、ヤヒロはそこに住み続けざるを得なかったのである
映画では、合計5つの事故物件(実際に事故物件なのは3軒)に関わることになるのだが、そのつながり自体はスムーズだと思う
最初のマンションから「ロケ先の旅館」「ネカフェに限界が来てシェアハウス」という流れになっていて、そこから「ウチ来る?」からの夏鈴の部屋へと向かう
そして、事務所だと思われていた場所が事故物件のような扱いになっているのだが、いわゆる「住人が死んだ物件ではない」ところに無理があるように思えた
物語としては、大オチは面白いと思うものの、だとしたら「どうやって仕事を得たの?」という疑問が湧くし、夏鈴との恋愛関係も表現はないのに色々とすっ飛ばしていて変な感じになっていた
女優を俳優と言い換える今時の配慮もなじまず、観客には女の子に見えているけど、ヤヒロには男の子に見えているというネタバレがあるのかと思っていたがそんなこともなかった
ヤヒロの一目惚れはわかるものの、そこまで恋愛感情があるように見えない夏鈴が「ウチ来る?」というのも不思議な流れで、そこは表情を豹変させて「ある人物が乗り移って言わせている」とか、かなり関係性が深まっているので「自然にそうなった」という方が良かったように思えた
ホラー映画としてはそこまで怖くなく、いわゆる「ライトホラー」の部類に入るのだが、怖がらせ方は「ジャンプスケアのみ」で、個人的に一番怖かったのは夏鈴の部屋で物色した後に彼女に睨まれるシーンだった
あの無言の圧力と目力は本物で、何かが憑依しているように思う(おそらく父親が娘の部屋で何している?というテイスト)
ただ、それ以上の怖さというものがない(人によっては幽霊の造形は怖いかもしれない)のが残念だった
幽霊に関してもほぼ一瞬で、ラストのエレベーター内の少女(笹原妃栞)だけがはっきりと映っているくらいだった
社長の正体がわかるまでの流れは良いと思うのだが、やはり導入としての「いつの間にか別人だった」に無理がありすぎる
なので、事故物件に住むことは業界の通例みたいな感じで本当の社長が説明して、その先の不動産屋の社長もしくは関係者が藤吉で良かったと思う
社長がヤヒロを選んだ筋道(優しいから取り憑いた)をきちんと描かないと、どの時点からヤヒロは誘導されていたのかがわからなくなってしまうのではないだろうか
いずれにせよ、タレント活動と住みます案件を同時に成立させるための論理的なストーリーテリングが必要で、最初の事故物件が実は藤吉が結婚する前に関係していた女とかでも良かったと思う
その後、藤吉は夏鈴の母親と出会うものの、過去のことがあって夫婦間はうまくいかなくなって、それで事故が起きるという流れでも問題ない
本作では、ヤヒロと夏鈴がどのように結びつくかが鍵となっているので、あのスナックに誘導するのが「街角でバッタリ出会った不動産関係者」とかでも良いのだろう
このあたりを詰めて「?」をなくしていけば、もっと驚きを増幅できたのではないか、と感じた