爆弾のレビュー・感想・評価
全812件中、581~600件目を表示
前半はなぞなぞバトル、後半は喪黒福造合戦
予告を観た時は、その興味深いシチュエーションに強く惹かれた。
日本映画は、観客の興味を引くような状況設定、いわゆる「掴み」を作るのが上手いと感じる。
ただ、多くの日本映画に共通して感じるのは、話が進むにつれて物語の粗が目立ち始めること。
原因としては、まず魅力的なシチュエーションを考え、後付けで「なぜそうなったか」という理由を構築しているからではないかと思う。
そのため、リアリティよりも物語の都合が優先されがち。
その結果、特に日本映画では、後半になるにつれて「そんなわけあるか」と白けてしまうことが多くなる印象。
この作品を観ていて、まさにそんなことを考えてしまった。
話が進むにつれて真相が判明していくわけだが、これに関わった人々の行動が不可解に感じることが多かった。
「あの状況で、そんな行動は取らないだろう」と思うことが多く、納得できず頭が爆発しそうになった。
爆弾犯の思う壺なのかもしれない。
佐藤二朗演じるスズキタゴサクの犯行動機が明かされる場面を観ていて、東野圭吾の小説『容疑者Xの献身』を連想した。
『容疑者Xの献身』は、犯行に及んだ男の動機が丁寧に描かれていて共感できる部分もあったのに対し、『爆弾』の映画版だけ観ているとそのような内面はあまり描かれていない。
そのため、登場人物たちが物語の辻褄を合わせるために都合よく動いているようにしか思えなかった。
スズキタゴサクは『バットマン』のジョーカーのようなサイコパスな犯罪者として描きたかったのだと推測する。
しかし、ああいうキャラは、こちらがハッとさせられるような深層心理を突いた鋭い言葉を投げかけるものだが、スズキタゴサクは人をからかうような言い方で、どこかで聞いたことがあるようなありきたりな鬱陶しい発言をしてくるだけ。
そのせいで、だんだん会話劇が退屈になってしまった。
繰り広げられる会話劇は知的な会話風なだけでたいして中身がなく、雰囲気だけに感じられてきて飽きてくる。
さらに、後半になるにつれて説教くささが増してくるので、観ていてイライラしてしまった。
前半は、スズキタゴサクが仕掛けた爆弾の場所に関するクイズを出してきて、警察が対応していく展開。
このクイズが驚くほど普通のなぞなぞだったことに、逆に衝撃を受けた。
なぞなぞとしては問題が分かりにくく興味が持てず、答えを聞いても「あ、そうですか」といった感じに終わる。
山田裕貴演じる類家がエリート刑事として登場するが、普通の刑事ドラマであれば「誰が犯人なのか」とか「犯人はどうやって犯行に及んだのか」で頭を悩ませるものだと思う。
それなのに、他の大量の警察関係者が事件対応でてんやわんやしている中、類家だけが一人でなぞなぞの答えを必死に考えている姿はなかなか斬新だった。
後半は類家とスズキタゴサクの一対一の取り調べの場面になっていく。
最初は知的な会話のバトルが繰り広げられるものと期待したが、実際はお互いに「あなたの本性はこうだ!!」みたいなことを決めつけで言いあうだけに感じた。
だんだん二人が『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造に見えてきた。
論理的に言っているわけではなく単なる決めつけで言い合っているだけなので、まるで幼稚な人間の言い争いを見せられている気分になった。
事件の発端となる警察の不祥事も理解に苦しむものであった。
あんなことで、不倫芸能人並みに記者が追い回すほどマスコミは暇ではないと思う。
警察の不祥事なら、痴漢、盗撮、パワハラ、横領、不当な取り調べ、情報漏洩、事件もみ消し、証拠捏造などなど、いくらでも世間を騒がせた事例があるのに、なぜあえてそんなことを事件の発端にしたのか、本気で意味不明だった。
原作未読。
最初から、佐藤二郎の演技に惹き込まれたのは確か。ラストまで緊迫感もあった。だけど…(ここからネタバレ)
そもそもの発端となった長谷部の行為に至る背景をもっと深堀りすればもっとストーリーの重厚感増したのに、いうなればただの性癖で済まされてしまってるのが残念。
なんだかんだ世の中に居場所をなくした息子が癇癪起こして爆弾魔になって、母親は手に負えなくなってタゴサクに助けを求めた?
タゴサクなんで助けたの?
あと長ったらしくなりそうだから気になった点。
・渡部さん、途中から威厳どこいった?
・秋葉原、画面上から伝わってくる爆弾威力の割に死傷者少なくない?
あと声を大にして言いたい。
警察関係者、被害無さすぎだろ?坂東さんぐらいは、セオリー的にお涙頂戴殉職すらなく、ラスト見舞いシーンいる?息子は警察には恨みないんかな。あっても良さげだけど。
スッキリしない
原作もすっきりしないが。
ミステリーは映画に向いていない。結局、内容が謎解説になりがちだからだ。
延々と言葉遊びを続けるだけで、なるほどと思わせる内容がない。爆弾犯の動機もこじつけっぽいし、刑事の息子や母親の動機もこじつけっぽい。こねくるための設定にしか思えない。そもそも爆弾犯の正体がただのホームレスというのが苦しい。頭脳的な駆け引きをするのだから、正体不明だが何か過去を匂わすエピソードなり欲しい。
結局、爆弾犯が勝って大量に人死が出るオチはあたりまえだがエンタメとしてはスカッとしない。それはそうで客は最後に爆弾犯をやり込めるのを期待して映画を見るのだから。しかしそれを狙いとしないのであれば、刑事VS爆弾魔の対決として盛り上げるのはインチキっぽい。せめて何か別のカタルシスを用意してほしいところだ。
阿佐ヶ谷駅に爆弾が仕掛けられてるのに、封鎖解除というのもありえない。その時点で秋葉原を皮切りに大事件になってるはずだ。
キャストの演技が緊迫感がありまだ見れるが、一見緻密なようでご都合で構成された内容はいただけない。
まあ、原作がそうだからなんだけど。
消化不良
天才的推理力を持った刑事とIQバカ高の犯罪者が織り成す心理戦を期待しとったので残念。もっと山田裕貴役と佐藤二朗役のパーソナリティを描写して欲しかった。2人とも頭はええのやろうけどその根拠が薄い。
結局山田裕貴君勝てへんかったし事件もちゃんと解決してへんし。
渡部篤郎の役は居らんでもええやろと思う。
どっちゃにしても何やもっと振り切って欲しかった
佐藤二朗の怪演が吉と出た良作
原作未読。冒頭の散髪カットから伏線は張られており最後まで濃密な展開で目が離せない。
佐藤二朗が全編にわたり物語を牽引。佐藤二朗というと福田作品のクセ強キャラというイメージがだったが、今作では主軸を担う怪演を見せ、終盤真相が明らかになると別の感情で揺さぶりにくる。素晴らしかった。
主演の山田裕貴は見せ場が後半に集中。佐藤二朗との演技対決は見もの。
また取調べ1番手の染谷将太と次ぐ渡部篤郎も重要なポジション。寛一郎、坂東龍太も見逃せないが、やはり伊藤沙莉がすごい。
出番の多少に関わらず、全ての役が事件の傍観者という立ち位置ではないので緊張感が途切れることがない。事件の真相も含め間延びすることがなくおもしろかった。
もし続編などがあるなら、類家にスポットを当てたものが観てみたい。
見せつけられた、じぶんの心の形
会話劇なのに退屈しない × 狂気の中の人間味
佐藤二朗さん、山田裕貴さん、染谷将太さん、坂東龍汰さんなど、好みの俳優がそろったキャストに期待していた作品です。
「スズキタゴサク」役の佐藤二朗さんはまさに適役。
言動のすべてが観客を苛立たせるほど圧巻で、「この俳優しかあり得ない」と感じさせる存在感でした。
ほぼ取り調べ室での会話劇でありながら、退屈することなく最後まで見入ってしまいました。
一方で、物語が進むにつれ登場人物が増え、苗字だけの呼び方も多かったため、誰が誰なのか把握しづらい場面がありました。
終盤、スズキが「もじゃもじゃ頭の、類家さんです」と初めて類家の名を口にする場面があります。
狂気の中にふと人間味がのぞく瞬間で、特に印象に残りました。
原作の深みと映画の尺の問題における相克。
まず言えるのはプロの仕事だと言う事である。完璧な出だしと、最後の最後までエンターテイメントに徹した職人技の作品。佐藤二朗の独壇場である。しかしその凄みが最後のエンディングでは纏め切れずコントロールを失ったかのような収束を迎えたのは誠に残念。トップスピードのママ胴体着陸を試みてオーバーランした飛行機の様な終わり方であった。あの全速力感とあの過剰な盛り込みが無ければあの緊張感はあの時間に渡って維持は出来なかったであろうが、それにしてもつくづく映画の持つ2時間の壁という枠組みは大きな足かせでもあり、改めて作品を作品たらしめる偉大なる規範でもあるのだと言うことを思い知らされる。無理して突っ走れば収束せず、上映時間を意識し過ぎた作品にはインパクトは残せない。この二律背反は映画に限らず芸術作品に突き付けられる古くて新しい無視できない問題でもある。
それにしてもあの佐藤二朗演じるスズキタゴサクと言う無垢の視線からの知性や良心良識の持つ規範を凌駕した怪物観をもう少しコントロールして欲しかった。それゆえ原作が今回は強く気になる。読んでみてもいいかもしれないと言う気にさせられたエンディングであった。原作とセットでこの映画の評価がより拡大解釈されるとしたらそれはそれで新たな映画の在り方となる。
⭐︎4.3 / 5.0
これはもう佐藤二郎の作品で佐藤二郎の奇才っぷりにどっぷり浸かる覚悟...
いやー話術って本当に凄いよな。だって人のこといとも簡単に操ることが...
完璧な配役
もうこれに尽きる。
配役が完璧すぎて感動。そのおかげか、話に入り込めました。
佐藤二郎は不気味なところと感情を出すところのギャップが凄く、山田裕貴の淡々としつつ、癖のある演技がよく、染谷将太のあまり感情出さない感じも良いし、渡部篤郎の取り調べシーンの感情爆発するシーンも良いし…
いやー、凄かった。
話も良いですね。徐々に背景が見えてくるのが良く、複数キャラの視点から進むのも話の流れをより分かりやすくしてる。
テンポも良く、バランスが良いですね。
山田裕貴と佐藤二郎の会話をもっと見たいなぁ…
気持ち良く終わるわけではないが、満足度は高い作品でした。
久しぶりにツボに入った良作でした。
天才VS変態 極限のサスペンス
原作未読。
佐藤二朗、山田裕貴、染谷将太…この3人がメインで繰り広げられるサスペンス・ミステリー。演技合戦とでも言いましょうか、俳優陣の素晴らしい演技に引き込まれ、ストーリー、謎解きに夢中になり、異様なまでの没入感を味わえました。
佐藤二朗はさすがですね。この人が醸し出す不穏な空気、得体の知れない不気味さが作品全編に渡って漂います。劇中の人物達だけでなく、観客をも惑わせてしまう、まさに「怪物」そのものでした。
山田裕貴演じる類家と染谷将太演じる等々力も素晴らしかったです。ただの天才、優秀な刑事というだけでなく、どこか後ろ暗い側面を覗かせるキャラクターも非常に魅力的。こういう絶妙な人物描写が「この次、この人は何を言い出すのか?」といった期待に繋がってスクリーンに釘付けにさせられます。
3人がメイン…と言いましたが、他の俳優陣の名演も見逃せません。特に清宮役の渡部篤郎はMVPをあげたいほど。彼が置かれた立場、スズキタゴサクとの極限の会話劇、焦りや怒りを抑えつつも徐々に蓄積されるフラストレーションを見事に演じていました。
演技の話ばかりになってしまいましたが、演出においても作品をよりリアルで不気味なものにする効果があったと思います。オープニングのスタイリッシュさも、観客を一気に作品に引き込ませる興味深いものでした。
スズキタゴサクとは一体何者だったのか。現代社会における何かの暗喩でしょうか。卑屈で冷笑的で社会に絶望し、怒りを向けられても「欲望されている」と曲解する歪んだ精神…。
サスペンス・ミステリーとしてだけでなく、社会の暗部を映したかのような衝撃的な内容。名作です。
海外リメイク争奪戦になりそう
これは海外でリメイク権争奪戦だろう。そんな言い方不遜か。面白かった。原作がかなり面白いと噂だけどなるほど面白い(予告で流れてた『君のクイズ』然りちょっと前のミステリの映画化がわっとやってくる予感)。『ラストマイル』とかもそうだけどこの手のパニックサスペンスものを映画化するのが上手くなってきた邦画。爆発など相変わらずVFXはそんなにうまくはないにだけど、そんなところで爆発やるの!ここは省略するけどこっちは見せます!みたいな気合いが入っていた。
予告を見るに「密室の取り調べ室に現れる気の抜けた浮浪者みたいなのがやがてとんでもない連続爆弾魔の犯人とわかり、それを阻止すべく謎解きのゲームが始まる」風な設定だけども、それ以外の何が見れるかが見せ物としての勝負。
『殺人に至る病』の阿部サダヲと双璧とも呼べる佐藤二郎なのだけど、ほぼ喪黒福造のようなマンガキャラで阿部サダヲの方が数段上な感じはあるが、それは山田裕貴にも言える。予告編観て思った通り、ちょっと髪型やメガネ、衣装に盛ったわざとらしさがあり、それが佐藤二郎の盛り具合と同じなので演出なのだと思うけど、あれだけ盛ってるから興醒めか、あれだけ盛ってるからバタ臭くて面白いのかどちらかわからない。ただ自分の好みではない。しかし、プロットが面白い。だからリメイクしたくなる外国のプロデューサーが多いのではないか。それは原作の勝ちである。
もちろん取調室の中の悪魔(というか天才)、みたいな設定はいくつもあるが、それを日本でやるとこうなるか、という意味での展開は素晴らしい。澱みがない。最初の爆発、次の爆発、知恵比べ。隣りのお兄ちゃんがビクッ!ビクッ!としてたのは『ドールハウス」の時と同じで観客にフィットしている面白さ。
ただ、個人的にはお芝居がちょっとやり過ぎで興醒めしてはいる。この演出ならあんなサイコパス映画のようなノワール照明などしなくてよかったと思う。佐藤二郎もおそらくあんな照明になってると思ってないのではないか。テレビっぽく誇張っされた芝居にシネマチックな照明があってない感じ。あの照明ならもっとリアルに演じたらいいに、と思う。逆に染谷将太、寛一郎らが出てくるとホッとするような感じだった。
それはともかく『ダイハード3』『ユージュアルサスペクツ』『羊たちの沈黙』的な要素をかき集めた原作に乾杯!みたいな気持ち。観て損はなしの娯楽映画だった。
佐藤二朗演のスズキタゴサクを観るだけでも価値あり!
劇場の予告編で佐藤二朗を目にした瞬間
映画館へ足を運ぶと決めていた作品。
よく覚えられたなというくらいの膨大なセリフ量と
スズキタゴサクの話し方、表情に
どんどん引き込まれていきましたね。
素晴らし役者さんはたくさんいますけど
佐藤二朗以上にスズキタゴサクを
演じられる役者さんはいないです。
ありきたりですけど怪演オブ怪演。
例えるならこんな感じ。
-----
セブン→ケヴィン・スペイシー
羊たちの沈黙→アンソニー・ホプキンス
真実の行方→エドワード・ノートン
-----
等々力(染谷将太)、清宮(渡部篤郎)
類家(山田裕貴)と対峙するシーンは楽しめました。
また、倖田(伊藤沙莉)、矢吹(坂東龍汰)の
コンビもよかった。
この演技で日本アカデミー賞助演男優賞を
受賞できないならどんな演技をすればいいのかと
思わせる作品でした。
まぁ受賞することがすべてではないですけどね。
全812件中、581~600件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。












