爆弾のレビュー・感想・評価
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心身共に元気な時に見てください
佐藤二朗でなければ出来ない演技。あまりにも気色悪い人物すぎる。映像であるからこそ、いつ爆弾の音が鳴り響くか分からない緊張と恐怖の中でテンポ良く繰り出される会話劇に、自然と見入ってしまう。この会話を聞いていれば、映像をしっかりと観ていれば、自分も爆弾を止められるのではないかと錯覚してしまうほどである。これを意図して撮られたのかは分からないが、おかげでとても集中して観ることができた。
最後に残る不気味さ、気持ち悪さも、この映画の長所ではないかと思う。最後までほんのりとまだ味のするガムを噛んでいるような。
驚きの「動」の怖さの中にずっと続いている「静」が、うっすらとある心の闇や、寝不足や微熱気味の体調不良をじわじわとどん底に落とすような不気味さを纏っていた。
ハラハラドキドキ!!!
会話劇だけでもお金を払う価値あり
失礼ながら、佐藤二朗という役者さんをこれまで「亡くなられた佐藤蛾次郎さんによく似た名前の役者さんがいるんだなー」と思うぐらいであまり知らずにいた。その佐藤二朗が不気味さ、怖さ、狡猾さ、そして弱さとかわいさを兼ね備えた全くつかみどころのないスズキタゴサクという怪物を緩急取り混ぜながら変幻自在に演じていて見事というほかなかった。それにしても顔の大きな役者さんですね。向かいに座ったどの刑事と比べても顔の大きさが1.3倍ぐらいあって、ちょっと遠近感が狂うほどだった。原作は未読だけど、原作読んだらもうこの人の顔しか浮かんでこないだろう。
感覚的には半分以上が取調室でのシーンじゃなかったかと思うが、緊迫感溢れるスズキと類家とのやりとりだけで映画館で見たかいがあった。死んだ魚のような目をさせたら右に出るものはいない染谷将太の抑えた演技もよかった。
この映画の登場人物に共通しているのはみなうんざりしているということ。スズキタゴサクは社会や自分の人生にうんざりしているし、類家は周りの無能さにうんざりしている。不祥事を起こした敏腕ベテラン刑事も、彼について「気持ちはわからなくはない」とコメントした等々力も、出世のためなら他人の手柄を横取りしたり、責任から逃れるためなら人が死んでも構わないと考えたりするような警察組織の力学にうんざりしていたのかもしれない。そして希望や野心を持ってリスクを取るものは片足をなくす。
しかし、どう考えてもあの巡査二人は迂闊すぎる。いくら手柄を横取りされるのが嫌だからといっても、爆弾事件の犯人のアジトかもしれない家に踏み込むのにあまりにも無防備すぎだ。トラップが仕掛けられてないわけなかろう、こいつらアホじゃないか、と観客の誰もが思って見ていただろう。ただ、この場面以外は、全般的に現場のシーンと取調室のシーンとの切り替えは絶妙で「どうせ爆発するんでしょ」と斜に構えさせない演出が施されているように感じた。
映画は、最後の爆弾はまだ見つかっていない、というナレーションで締めくくられる。この国の社会の閉塞感にみんなうんざりしているし、それがいつ爆発してもおかしくないのよ、ということか。爆発で全部終わらせたい人も増えてるだろうし。壊すより壊れるのを防ぐ方がずっと面白いという類家のセリフには首肯するが、そんな風に考える人は実は少数派ではないかと最近感じるのである。
先が読めぬ展開が面白かった。
心が辛くなる
たごちゃん沼
映像がシャープでクオリティが高い。佐藤二朗の独壇場のような映画。かなり見応えはある。
ほどほどに面白かった。
だが、脚色が良くないのか、ちょっと理解できないところがところどころあり、没入感がなく終わってしまった。
監督が「ジャッジ!」(2014)の永井聡で、これがシャープで結構上手い監督だと思った。CM業界でクオリティの高い映像作りをしてきた力だと思う。
映像イメージは「セブン」と「羊たちの沈黙」から影響を受けているのがわかる。冒頭の方の警察署内部の移動撮影が、ステディカムで撮ったようで、まるでアメリカ映画のような雰囲気がある。
そのほかでも、爆破シーンも日本映画らしからぬ迫力だった。
映画自体(演出や映像)は、とてもよくできていて、序盤は引き込まれる。
役者では、佐藤二朗の独壇場のような映画でそれなりに見応えはある。相手役の山田裕貴も良かった。それに染谷翔太や伊藤沙莉も良かったし、名脇役の正名僕蔵も良かった。寛一郎がいつもと雰囲気がちがってギラギラ感があり、かなりいい。
ただ、映像と役者の演出は上手いけど、ストーリーテリングが良くない。ところどころ腑に落ちないまま、なんとなく流れてしまう。それで本来なら「不気味さ」と、もしかすると「深い感動」で終わるであろうラストが、モヤモヤしたままで終わってしまった。
もう少しで傑作になったのに、取り逃してしまった!
137分あっという間でした
なかなか評価は割れそうだ
原作は読んでいない。
山田裕貴と佐藤二朗が見事だった。
それに免じて2.5としたいところを「3」にした。
山田裕貴は、今年は『木の上の軍隊』『ベートーヴェン捏造』に続いて3作目だが、本当に素質もガッツもある良い役者だと思う。
一方で、個人的にはふだんの佐藤二朗は大袈裟でわざとらしく見える演技ばかりで苦手だし、それしかできない風にしか見えなかった。
しかしこの『爆弾』では変質的な役がハマり過ぎていて、怖いくらい見事だった。以降、かえってこの役のイメージがあとを引くのではないかと余計な心配をしてしまう。
取調室での山田と佐藤の台詞のぶつけ合いは、いろいろ毀誉褒貶があろうが、私はじゅうぶん楽しめた。
爆発シーンも昨今のVFXを駆使して迫力がある。
本格的ミステリーファンからすれば、思いつきのような類家刑事(山田)の謎解きは荒唐無稽過ぎるのかもしれないけれど、私としてはギリギリでエンタメの範囲内だと思えた。
ただし後半の謎解き?伏線回収?をはじめとしたストーリーテリングがグダグダに思えたのは私だけではないようだ。このサイトのレビュアーさんにも共感される方が多い。原作小説のAmazonでのレビューも、二極化して荒れに荒れている。
また、私がどうしても奇異に思えたのは、かつて事件現場で不適切な行為を繰り返していたことでその後自死した刑事・長谷部の心理描写がほとんどなかったので、単なる性的倒錯者にしか見えないこと、その後一家離散した妻が爆弾事件に絡む強い動機とそのケリの付け方のところである。
この部分、ある種グロテスクであるし、人間のドス黒い部分、弱い部分をぶつけられるので気分が悪くなる人もいるかも知れないが、少なくともそれをエピソードとして持ってきている以上は「ちょっと触れました」程度ではなく、きちんと、徹底的に描いてほしかった。
原作では丁寧に描かれているのだろうか? 原作を読んでいないのでわからないのだけれど、映像化するに当たって尺の制限があるならあるで、そこをどう伝えるのかが脚本と監督、ひいては制作の腕では・・・と思う。
人間の多面性
めちゃくちゃ面白かったです!!
初めに登場人物のキャラクター性がとても分かりやすい。
なのに変なわざとらしさや如何にもフィクションですって感じる所があまり無い。
いや普通に考えたらスズキタゴサクや類家のような人はそうそう居ないだろうとは思うのですが。
でもそこに違和感を感じさせる隙が無い作りになってるんですよね。
もう自分でも気付かないくらいスッと気持ち良くこの作品に没入してました。
脚本がいいのはもちろん、カメラワークなど演出もすごく上手い!
そしてその上に俳優さんたちの配役が見事にピッタリと収まっているのです。
私がこの映画で感動したのは人間の多面性の描き方。
白黒どっちか、なんて人は居ない。
どの人も良いところがあって嫌なところがある。
考え方は一人一人違う。
この辺りの描き方が本当に多面的で絶妙なバランスで面白い!
そして皆んな心に爆弾を隠し持ってる。
ほとんどの人は自分で爆発させないようにコントロールしてる。
でも現実問題、制御できなくなってしまう人もいる訳で。
制御できなくなるぐらい人を追い込む怖さ、思い込みの恐ろしさ、人と交わる大切さを思い知らされます。
最後に偏見ですが、出演者の中にアイドルや韓国系の方が見当たらなくて良かった。
極論を言う訳ではありませんが、これらの方々がいると変なバイアスが入りがちだと思ってるので…。
気持ちを否定はしないが、俺はやらない
めっちゃ面白かった!
原作は未読です。
長谷部の不祥事に対して等々力が口にした「分からなくはない」。
そういう気持ちになることもあるだろう、否定はしないが、俺はやらない。
そういうことだ。
そして、世の中の大方の人は、不満はあっても、世間と折り合いをつけて生きていることに大きな安堵を得ており、そういう生活を捨てようとは思っていない。
好きではないかもしれないが、嫌いではないのだ。
タゴサク氏は一連の犯行を吐いた後、署内ですれ違う等々力に、自分とお前は同類、俺はお前のことが良くわかっている、とばかりに自信たっぷりに畳みかけるが、等々力の答えは「そうだ、だが俺はそういうのは嫌いじゃない。」
タゴサク氏は一瞬、え、そんなぁ、という顔をする。
自分は、自分と似た境遇の名もなき多くの人々、名前を知っている人の中では等々力からの、大っぴらにできないが強固な共感とリスペクトを得るダークヒーローだと思っていたのに。
俺ってひょっとしてピエロ? という気持ちの揺らぎが見えたような気がした。
言葉巧みに若い刑事を操り、ひょうひょうとした外面と違って実は自分の頭脳に絶対的な自信があり、周囲を見下しプライドが高い類家を、わざわざその他大勢のように名前を覚えていないふりをして苛立たせるタゴサク氏は、人の心理に詳しく、頭が切れて行動力もある。
なのに、育ちやら見かけやらのせいで社会からも世間の人々からも軽んじられ馬鹿にされ踏みつけられてきた(と少なくとも自分では思っている)のだろう。優秀な俺なのに世間から不当に扱われてきたと、恨みと自己顕示欲と承認欲求を溜めこんでいたかも。
最初に取り調べをした所轄署の等々力が、卓越した能力がありながら不遇なのを見抜き、目を付けた。同類感をチラ見せして等々力の共感を掴んだと思って調子に乗った部分もあったよう。
類家が指摘した通り、この男はとても分かりやすい、というかわざわざ分かりやすい言動でもって世間を挑発し愚弄しているよう。
自己顕示欲と承認欲求は、自分が仕組んだことを解説付きで提示して自身の知力、能力の高さを誇示することでかなり満たされると思う。
やがて、連続都内爆発事件は、明日香がタゴサク氏に「自分たちのヤラカシを被って欲しい」と依頼していたことが発端で、タゴサク氏は主犯ではなく他人の描いた絵に便乗、若干の加工を施しただけ、というのが分かる。
明日香のあまりの厚かましさ、というかタゴサク氏に対する舐めっぷりが度を越していて怒りを覚えてしまった。他人の私ですらそうなので、彼としては呆気にとられた後、ふつふつと怒りを滾らせたと思う。信頼していた分、感情が激しくなっただろう。バカの振りをして話を飲んだ体で彼女を爆弾魔の実行犯の一人にする、さらに彼女の息子殺しと彼への仕打ちをあからさまにしてやるつもり。そして、それらも一緒くたに纏めて世間への復讐を果たすことにしたのだ。
なにしろタゴサク氏は、犯罪を犯して世間に反旗を翻しても、守るものどころか失うものすらない「最強の人」なのだ。極刑ですら恐れていないかも。
そして、まだどこかに、彼しか知らない爆弾が眠っているらしい。
タゴサク氏の、世間と世間の人々への復讐は、成功したと言えるのではないか。
だとしても、彼は、承認欲求を拗らせて一人で勝手に踊っているピエロかも、という気もする。
佐藤二朗のスズキタゴサクが、この人以外にできない名怪演。だけどいつもの佐藤二朗の範疇。役になりきるというより、役をちから技で自分の方に引き寄せた感じ。
関わる刑事たちが皆キャラが立っておりそれぞれ熱演で、タゴサク氏との取調室の攻防、言葉一つ聞き逃せない心理戦に息詰めて見入ってしまう。爆発のバリエーションが、回を追うごとに規模が大きくなってそれぞれ見せ場があるのでダレない。駅の自動販売機が次々爆発するなんて、自動販売機で飲み物を買うのを躊躇しそう。そして単純に謎解きも面白かった。
映画長いにもかかわらずぐいぐい引き込まれて飽きなかったが、巡査二人の行動も入れているので欲張りすぎて見ている側の情報処理能力が追い付かない気もする。小説なら問題ないだろうが、映画なので涙を呑んでどこか少し削ったら良かったかも。
山田裕貴のお父さんは、昔中日ドラゴンズの選手だったというのも楽屋落ちですかね
タゴサク氏の、折られた指痛すぎ!
類家の推理のシャーロックばりのキレのよさと清宮との信頼関係がいい感じだし、能力に一目置いている等々力とは、良い相棒になりそうな予感。
清宮と等々力と類家、巡査ふたりをメンバーにしたシリーズもの希望。
タゴサク氏のゲームで今回は弄ばれてしまった類家だが、冷静沈着洞察力ピカイチな等々力と繋がりができた。残りの爆弾をめぐっての続編があっても良いと思う。
引き寄せられる会話劇
最後がちょっと……
佐藤二朗の演技につきる
本作における佐藤二朗の演技は、観客を引き込む素晴らしいもので、まさしく「怪演」という言葉がぴったりです。それだけでも一見の価値があると思います。
ただし、それ以外の部分については、残念な点がいくつか見受けられました。
まず、このような犯人と刑事の知恵比べを描く作品において、周囲のキャラクターが無能だったり、行動に必然性がなかったりすると、せっかくの頭脳戦が台無しになってしまうと常々感じています。
例えば本作では、聞き取り役の刑事が犯人の言葉を真に受け、他の刑事には内緒で知り合いの警官に指示を出したり、その警官も勝手に行動したりする場面がありますが、「普通そんなことしないでしょ」と思わずツッコミを入れたくなります。
また、一般市民が爆弾が仕掛けられているかもしれない駅に押し寄せたり、犯人が「そこは安全だ」と言った場所に集まったりする描写も、リアリティに欠けていて残念でした。
さらに、自動販売機の中の商品に仕掛けられた爆弾についても、いつ誰が購入するかわからないはずなのに時間指定がされている点など、設定に矛盾を感じてしまいます。
極めつけは犯人の動機で、「なぜ爆弾犯になりすまそうとしたのか」という核心部分があまり描かれておらず、この手の作品では重要なオチが弱く感じられたのは残念でした。
冒頭にも述べたように、佐藤二朗の演技が素晴らしかっただけに、取り調べ以外のパートについても、もう少し丁寧に描き込んでほしかったです。
全1160件中、581~600件目を表示
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