「全てはこの男の掌の上だった……。」爆弾 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
全てはこの男の掌の上だった……。
日本映画史上一番のヴィランが生まれてしまったかもしれない。
坊主頭に十円はげ、メタボ体型のオッサンなのに、全てがその男の掌の上。取調室という薄暗い密室の中から、東京の街全体を掌握してしまう安楽椅子テロリスト。それがスズキタゴサク。
前評判が良かったので期待して鑑賞しましたが、期待を軽く超えてきてくれました。
日本のミステリ映画ではトップクラスの作品です。大迫力大音量の爆発シーンがあり、逆に呼吸音すらうるさく聞こえる静寂の緊迫したシーンも素晴らしく、ぜひ映画館で鑑賞していただきたい作品でした。
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東京都野方警察署の取調室に、一人の男が連れられてくる。スズキタゴサク(佐藤二朗)と名乗るその男は、酔った勢いでちょっとした暴行事件を起こした小汚い中年男性。取り調べの最中スズキは、自分は霊感でこれから起こる事件を予知することができると言い始めた。10時ちょうどに秋葉原で何か大きな事件が起こると話すスズキに呆れながら取り調べを続けていた刑事たちだったが、スズキの予言通り秋葉原で大規模な爆破事件が発生したことで、取調室の空気が一気に張り詰めるのだった。
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「タイトルが出てくるシーンが良い映画は、例外なく名作」
これが、7年ほど映画を観続けてきた私の経験則です。5分から10分のアバンがあり、見せ場のシーンで映画のタイトルが画面上に映し出されるというパターンが映画では多いんですが、映画の顔とも呼べるタイトルが画面に登場するシーンでテンションが上がる映画はほぼ例外なくいい映画です。
本作は、スズキタゴサクが取調室で「秋葉原で事件が起こる」と予言をし、その予言通りの時刻に秋葉原で爆発が起こるシーンでタイトルの【爆弾】という文字が表示されます。大迫力の爆発と、耳をつんざく轟音。人間や車が吹き飛ばされる容赦のない描写、そして爆風で宙を舞うメイドを映しながら、【爆弾】というタイトルが画面いっぱいにデカデカと現れる。多分今まで観た映画の中で、トップクラスにテンションの上がるタイトルシーンでした。私はこのタイトルを見た時点で「あ、この映画は面白いぞ」と確信しました。秋葉原の爆発シーンから一気に物語が動き出したのが感じられて、そこからは怒涛の展開の連続で、あっという間にエンディングを迎えました。
本作の魅力は何といっても俳優陣の鬼気迫る演技にあると思います。
佐藤二朗さんの演技は言うまでもありませんが、山田裕貴さん・染谷将太さん・渡部篤郎さんなどの役者陣の演技がとにかくよかった。動きの少ない取調室の密室会話劇なのに全く退屈せずに観ることができたのは、優れた脚本と俳優陣の演技によるものだったと思います。
迫力のある爆発シーンも良かったです。爆発シーンがしっかり爆発するし、しっかり死体を映すし、しっかり出血する。過激な表現を抑えて爆発の被害は映さないこともできたと思いますが、この映画ではそこを逃げずにしっかり描写してくれました。すごくよかったです。
年末の新作映画ラッシュのせいか、だんだんと上映回数が減ってきていますが、もっと多くの人に見てほしい素晴らしい映画でした。オススメです!!!
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