劇場公開日 2025年10月31日

「爆弾は」爆弾 紅の猫さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 爆弾は

2025年11月17日
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鑑賞方法:映画館

たまたま捕まえた酔っ払い「スズキタゴサク」が爆弾の爆発を「霊感で分かるんですよ」と言い出し、そして本当にそうなった上に相手の素性がどうあっても分からないとなったらどうだろう。
一体目の前にいるコイツはなんだ?と世界の秩序が崩れ落ちるような感覚を味わうのではないだろうか。

本作は爆弾の爆発というタイムリミットが最初から最後まで緊張感から解放してくれない。
観客は爆弾はどこだ?と刑事たちと一緒に探す気持ちになりながら、気がつくと「スズキタゴサク」の笑顔と話術に引き込まれてしまっている自分がいることに気がつくだろう。
「人が死んだって構わないじゃないですか。別に関係ないし。お金を貸してくれる訳でもないし」とうそぶく「スズキタゴサク」。全く共感しなかったという人はいるだろうか。少なくとも私は「まあ、確かにそうだけど」と思ってしまった。世界が壊れたって良くないか?と。

「スズキタゴサク」と相対する刑事達はそれを否定しない。
それぞれがそれぞれのやり方で秩序のなかで踏ん張っている。世界が壊れることを想像することと実際にすることには大きな違いがあると堂々と主張する姿は頼もしく感じる。
しかし、それは誰しも心の中に爆弾を持っていることの裏返しだ。
この映画は観客の心に爆弾を仕掛ける。爆発するのかしないのか。爆発するとしたらいつなのか。それは誰にもわからない。

ただ一つだけ言えるのは爆弾を仕掛けられる前の自分には戻れないということだけだ。
しかし、刑事たちは言う。自分はそちら側には行かないと。
どうしてそう言い切れるのか。更に言えば自分はどうして世界を壊そうとしないのか。
爆弾は自分の中にある。けれども。
その「けれども」は爆弾の数と同じだけある。

紅の猫
さんのコメント
2025年11月18日

爆薬になる前の火薬は大抵の人間が胸の中に秘めているんですよね。環境次第で爆弾魔になる。
頭がキレてある種イイ性格をしている類家に対して、あなたならもっと上手くやるのでは?とタゴサクが語りかけるシーンが印象的でした。
類家は、そして等々力は、このままなら「できてもやらない」を貫き続けるかと思います。彼らには社会的な立場や居場所があり、世間に対してテロを起こすような破滅的事情もメリットも持っていないからですね。
でも、辰馬達のように世間から攻撃され、見捨てられ、家庭という居場所を失くし、頼るものもなく彷徨う立場になったならその先は?それでも「そちら側にはいかない」と言い切れるのか?と言った薄気味悪さがラストシーンにはありました。

汐
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