「スズキタゴサク演じる佐藤二郎の怪演」爆弾 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
スズキタゴサク演じる佐藤二郎の怪演
呉勝浩・原作で、『2023年・このミス大賞』に輝き、直木賞にもノミネートされた同名小説の映画実写化。原作は発刊当時に既読。都内各所に爆弾を仕掛けた犯人と刑事との、息詰まる駆け引きの中で繰り広げられる、クライム・サスペンス。海外ドラマで人気を博した『24』の様な、現在進行で事件が展開される中で、1分1秒を争う時間との闘い、犯人と警察との手を汗握る攻防に、息を呑んで一気読みした作品。そんな話題小説の映画化とあって、公開を楽しみにしていた。
また、本作の爆誕事件の背景には、現代社会の片隅に置き去られて生きる事を余儀なくされた人々の、悲痛な叫びと哀愁を突き付けてくる。と共に、実は誰しもが持ち合わせている、心の奥底にある歪んだ欲望を、必死に覆い隠しながら生きている、人としての本性である性(さが)をも匂わせているとも感じた。
酒屋での騒動で逮捕された男は、自分を『スズキタゴサク』と名乗る、みすぼらしい酔っ払いの初老の男。しかし、その男の取り調べが始まると、「霊感がする」と言って、「10時に、秋葉原で爆破事件が起こる」こと予言。実際にその時刻に爆破事件は起きてしまう。その後も立て続けに、予言通りの爆破が都内各所で起こる。警察は、この一連の爆破の犯人は、このスズキタゴサクであると確信する。しかし、取り調べの刑事達はクイズを出しながらのスズキタゴサクのふざけた証言に翻弄され、取り調べも遅々として進まず、苛立っていた。
爆弾犯なら何の為に逮捕されたのか? 爆破の目的は何なのか? 果たしてスズキタゴサクは本名か? 等の様々な謎に包まれてたままでいた。一向に拉致の開かない取り調べの中、スズキタゴサクと交渉を進めていた類家刑事は、本爆破事件が、過去に起こった警察のある不祥事と関連している事を掴むのだが、都内全域を巻き込んだ爆破事件は、更にエスカレートしていく。
とにかく、本作は佐藤二郎という役者の凄味を感じ、スズキタゴサクになり切った存在感と威圧感を、前面に打ち出した怪演振りが、冒頭からラストまで映し出されていた。犯人としての喜怒哀楽を、台詞や表情だけでなく、その空気感まで巻き込んでしまう演技に、丸呑みされた感覚。また、山田裕貴も、佐藤二郎の怪演振りに対当するだけの、頭の切れの良さを持ち合わせた刑事を演じ、この2人が対峙するシーンは、火花がバチバチとぶつかる本作の見所となっている。
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