劇場公開日 2025年10月31日

「小説と違って映画の観客には推敲する時間ないのですよ」爆弾 クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 小説と違って映画の観客には推敲する時間ないのですよ

2025年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

斬新

ドキドキ

 原作ありで相当に評価されたとか、その映画化ですが、さて映像化して吉と出るか凶と出るか内容によるでしょうが、本作の場合は少々無理があるような。セリフの洪水から観客が推敲する時間がないのです、本でしたらテンポは読者にあるわけで、ましてや「これ誰だっけ?」となっても読み返せるわけで。さらに追い打ちをかけるように登場人物の多いこと、もう訳わかりませんとなりがちで。

 映像化する者の技量と言うより、ミステリーの謎解きの構造的な問題でしょう、やはり映画化向きとは言えない作品と言えます。そんな場合は映画化において視点をがらりと変えるとか、思い切った翻訳を施すとかの手はあるのですが、原作ファンからはお叱りを覚悟しなければなりませんがね。本作はそんな飛躍をせずに忠実(原作読みませんので分かりませんが)に映画化のよう、だから前述の不満に繋がってしまう。しかし、だからこそ、本作は映像化によって役者の演技を堪能させることが出来た!

 言うまでもなく佐藤二朗と言う名バイプレーヤーの独壇場が見せ場とすることが出来たわけです。いえ、彼だけでなく山田裕貴も渡部篤郎も染谷将太もスリリングな熱演が観客に十分に響きました。ただ、あまりに登場人物に相応しい役者を揃えすぎ、それぞれに見せ場を用意せざるを得なく、なにしろ映画ってのは時間に制約があるからこそ、漫然と拡げすぎてしまった。寛一郎や伊藤沙莉は主役級の役者であって脇にキャスティングすべきではなかった。却って散漫となったのはそんな豪華過ぎるキャスティングのせい。だって、もし脇役らしい役者にサラリと演じてもらえれば割愛すべきシーンを省略出来、主題にもっとフォーカス出来たはずでしょ。

 ここまで描いても2時間17分必要なわけで、辻褄あわず、伏線回収もなく、不完全燃焼まで完遂してたら、3時間超えとなってましょうね。取り調べ質と言う密室劇と爆発の大掛かりなパニック描写を交互に提示し、その塩梅が見せ所ですが、それは現在のことであって、過去となる長谷部及びその家族のハナシのフラッシュバックのトーンをもう少しタッチを変える工夫が欲しかった。爆発CGもハリウッドと比べるのも失礼ですが、煙ばっかしで貧相なのが残念です。それにしても、そういった過去の悲劇に基づく復讐にしては、規模が大きすぎ理解がついていけません。ラスト近くの急展開も納得出来ない脆弱を抱えてますよね。

 さて、前述しました佐藤二朗という役者、「あんのこと」「変な家」と実質主役級の作品の多いこと。ひっぱりだこと言っても過言ではないでしょう。本作では殆ど座ってばかりの演技で、強烈なアップに支えられたモンスターぶりは近年の出色なのは間違いありません。昔の「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター並みの怪物役を圧巻の汚らしさで演じきった。とは言え、のらりくらりと言葉を弄する事が頭がいいだけで説明つくのか怪しげで、所詮エンターテインメントの小細工と思ってしまったら本作は楽しめませんよ。

クニオ
m_satodaさんのコメント
2025年11月3日

観客が推敲?
推敲は著者がするものでは?

m_satoda
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。