「こだわりポイントが響かなかったが、合う人には合うのかもしれません」ChaO Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
こだわりポイントが響かなかったが、合う人には合うのかもしれません
2025.8.21 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本のアニメーション映画(89分、G)
魚と人間が共存する世界を描いたファンタジーアニメーション映画
監督は青木康浩
脚本は木ノ花咲
アニメーション制作はSTUDIO4℃
物語の舞台は、20XX年の香港
魚と人類が共生している上海を舞台に、共生が軌道になった頃をまとめた書籍がナレーションされて始まっていく
新米記者のジュノー(太田駿静)は、目的の船に乗り遅れてスクープを逃したものの、同じ港に停泊していた船に見覚えのある男を見つけた
男はかつて船舶会社で働いていたステファン(鈴木央士)で、彼は人魚のチャオ(山田杏奈)と結婚したことで話題になった人物だった
ジュノーはステファンに接近することができ、当時の話を聞くことになった
数年前、ステファンはシー社長(山里亮太)の下で働くサラリーマンで、夢は「ウォータージェット方式の船舶の開発」だった
現行のスクリュー方式では魚に多大な被害が出て新しい方式を考えていたが、シー社長からは「コストに見合わない」と却下されてしまった
国は人魚王国のネプトゥーヌス国王(三宅健太)との交流を深めようとしていたが、スクリュー方式を変えようとしないシー社長とは相容れずに交渉は決裂してしていた
ステファンは協議を終えて海に戻ろうとする国王を見かけたが、彼が発した波に飲み込まれてしまう
その後、何者かに救出されたステファンは病院で目覚めるのだが、なぜか「人魚姫と結婚すること」になっていて、しかもそれは自分自身が言い出したことだと言われてしまう
ふたりの結婚は人類と人魚の橋渡しとなっていて、さらにウォータージェットの開発の許可も下りてしまう
ステファンは不本意ながら姫との交際を始めるものの、常に魚と結婚できるわけがないと感じていた
物語は、ステファンの日常が背景として描かれ、彼は幼少期に父(岡野友佑)と母(川上ひろみ)を亡くしていた
今は叔父叔母の世話になりながら、親友のロベルタ(梅原裕一郎)とルームシェアをしていて、ロベルタの想い人マイペイ(シシド・カフカ)たちと仲良く暮らしていた
姫と一緒に住むことになったステファンは、献身的に尽くしてくれることを感じながらも、自分の運命が他人に左右されている不具合を感じている
そして、その心理は徐々に行動に現れてしまい、あるセレモニーで起きた事故によって、窮地に陥ってしまうのである
と、シナリオはそこまで悪くないように思えるのだが、実際には「ピンチにするためのエピソードでシナリオを構成している」というのがはっきり見えてしまっていて、無理やりピンチを作り出しているように思える
また、作画などは凄いのだが、そのシーン必要なの?と思うシーンも多く、物語に集中できないほどに散らかっていたように思う
シーン単体としては面白いものの、全体的にはその「遊び要素」がテンポを崩していて、それゆえに散漫になっているように感じた
いずれにせよ、おそらくはマニアしか観ない作品で、夏休み中の公開初週なのに貸し切り状態になっていた
ビジュアルが一般受けする感じでもなく、物語に惹かれる要素が少ないのも難点だったと思う
アテレコに関してはそこまで酷いとは感じなかったが、それ以上にストーリーテリングが微妙で、不要なシーンも多くて、何度か意識を持っていかれそうになってしまった
大オチ(編集長(土屋アンナ)が人魚だった)もサラっとしたもので、ジュノーの告白もなんだかなあという蛇足っぽさもあったと思う
劇場で観たことが語り草になるタイプの作品なので、その流れに乗りたい人は早めに動いた方が良いのではないだろうか
