「とことんカオスなパラレルワールド」ChaO 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
とことんカオスなパラレルワールド
絶対に普通のアニメなんか作るもんか、との気迫を感じるカオスな作品。独特のデッサンで描かれた、街ゆくモブキャラまで寸尺バラバラ、見たことも無い映像感覚。それでも、人魚姫はちゃんと美しい。もしかしたら、水中ならば人魚になれるという早変わりマジックの魔法なのかもしれないけど。
ちゃんと伏線が張られていたっぽいけど、カオスなシーンの連発について行くのが精一杯で、押しかけ女房の人魚さんがどういうことなのか検討がつかず、このまま、あやふやな結婚生活で話が終わるのかよ、と不安で仕方が無かったのですが、ちゃんと山あり谷もあり、幼い頃の記憶に振り返ったあたりで納得。ちゃんと映画がなりたってるんだなと胸を撫で下ろしました。
カオスといっても、ちゃんと説明がついていて、冒頭で「あ、そこは人魚専用ですよ」の警告に合点がいきました。これ、物凄く上手いと思う。人間と人魚、どういう関わり合いで世界がなりたっているのか、その一言のセリフで全て説明しきっている。そのお陰で、期待して先を見ることができました。
カオスといっても、他では類を見ないほどユニークでエネルギッシュでオリジナリティー溢れるアニメーションだったと思う。エンドロールで作画工程が紹介されているのは、余程スタッフがその苦労を語りたくて仕方がなかったのか。一番好きなのは、水中にあって人魚の姿のChaOとキスをするけど、一瞬で水が途切れてお魚に戻ってしまうところとか。他にも細かく見ていくと面白いシーンも満載。いつも出勤時に瓶を手渡す細かいネタ振りとか、カップを見ずに砂糖を床に注いでしまうのはちょっとやり過ぎかなあ。ティースプーンでコーヒーを飲むのは、小さい頃に自分もやってたのを思い出しました。主人公が子供の頃を辿るシーンだから、と言うわけでも無いだろうけど。
この作品の魅力を端的に言えば、「自分のことが好きでたまらないヒロイン」という設定でしょうか。そういう設定、うる星やつらに通じるところがあるなあ。やっぱり幸せなラブストーリーは華やかでいいですね。締めくくりは幾つものカップルが生まれる末広がりエンド。めでたし、めでたし。
