「戦争そのものに匹敵するくらい、偏った思想の洗脳が恐ろしい」ペリリュー 楽園のゲルニカ かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争そのものに匹敵するくらい、偏った思想の洗脳が恐ろしい
南方に出征した漫画家志望の若者、といえば水木しげるを連想するが、特に関係ないようだ。
漫画家志望というのは、「功績係」として兵隊ひとりひとりの個人の記録を残す役割を託される主人公のための設定。
数でしかない兵隊が、それぞれの歴史と尊厳を持った一人の人間であったことを訴える役割。
3頭身のかわいらしい人物で描かれ、声優も板垣李光人と中村倫也という優しいタイプの人たちがあててマイルドにしているが、それでも残虐で悲惨な有様は目を覆いたくなるよう。マイルドにされたので何とか全部見られるが、実写だったらとても観ていられなかったと思う。これだとお子さんでもなんとか観られると思います。
対照的に風景はリアルで美しい。楽園のような南の島だが、敵味方に分かれて命を奪い合っている日本軍と米軍がそこに描くのは地獄絵図だ。
日本軍はたくましい。武器弾薬糧食尽きたら、なんと米軍の倉庫からの略奪を企てる。島田少尉の陣頭指揮のもと、不可能と思われたが成功してしまい、その後はやり方をより安全で効率的に「カイゼン」しつつ継続的に略奪を続けて、物資に不足しないどころか、食料に至っては全員の2年分を貯めこむという恐るべき成果を上げる。たくましさにちょっと笑ってしまった。それなりに楽しみを見つけて平和に過ごす人たちは、ロビンソン・クルーソーみたいでわくわくして、このまま終戦を受け入れジャングルを出て、武装解除して日本に帰れれば良いのにと切に願ってしまった。
証拠は揃っているのに日本の無条件降伏、終戦を認めない潜伏部隊の上層部。
頭が良く、合理的で人間的にも優れた島田少尉ですら、染みついた皇国思想は絶対だ。
意を決して米軍に投降し終戦の真偽を確認するという吉敷を阻止するために撃ってしまう。
亡くなった吉敷を背負って投降した田丸の話を聞いた米軍担当者が、思わず「クレイジー」と口にする。
皇国思想の洗脳のせいでどれほどの人が死へと追い込まれたのか。
沖縄での日本軍は住民にすら投降を禁じて追い詰め、多数の民間人を集団自決に追い込んだ。「生きて虜囚の辱(はずかし)めを受けず」と叩き込まれたせいでどれほどの死ななくて良い人命が失われたか。部隊撤退の足手まといになるそこそこ重症な傷病兵は、「バンザイアタック」に回るしかない。投降する選択ができれば助かるための一縷の望みは残ったはず。
せっかく地獄の戦争を生き延びたのに、叩き込まれた思想のせいで戦後に命を落とすもの多数。
これに愕然とする。ものすごく嫌な気分になる。
やたらに命を捨てさせる。それが美徳と若者に教え込む。
効果のない特攻をさせ学徒出陣させ、戦後を担う若者の温存を考えなかった国は、日本くらいだろう。(米軍を礼賛する意図はありません。)
太平洋戦争を振り返ってみた時、特異で異様な空気が軍隊を頂点とする日本中にまん延していたことに誰でもすぐ気づく。そして一部の無責任な狂人たちが考え出した根拠が希薄で非合理的ででたらめな「思想」がどんどん肥大していき、全体を相互監視でがんじがらめにして無駄に国民の命を搾取した事実が否応なく浮き彫りになるのだ。
あれは戦時の特殊な事情であり、もうそのようなことはなくなったかと思いきや、昭和天皇崩御の際の「自粛」騒動、「不謹慎狩り」で、日本人の傾向が基本的に変わっていないのが分かりました。
いろいろな情報がお手軽に入手できる現代ではどうなんだろう、少しは変わっているかもしれない。
私には戦争そのものに匹敵するくらい、偏った思想の洗脳が恐ろしい。
自分のしたことを悔い、責任を取った島田少尉。彼は正義を信じて行動した誠実な人。
彼の様な人材を潰してしまったのは何なのでしょうか。
小杉伍長は、戦後になって分かった感覚をすでに持ち合わせていて、現代人が自分たちの感覚で投入したキャラクターに見える。
あのように洗脳から距離を置ける人が当時どれほどいただろうか。
意を決して行動を起こした吉敷は殺され、後ろで震えていた田丸が生き延びる。
こういう図式は何とかならなかったのか。どうせフィクションなのだから、二人一緒に日本に帰る設定にしてもよかったのではないか。
原作はどうか知らないが、旧来の邦画にありがちなパターンから抜けられなかったように感じました。もったいない。
共感ありがとうございます
昔聞いた話しですが、生きて虜囚の辱しめを受けずという戦陣訓を浸透させていたのは日本陸軍はロシアや欧米に対して自軍の装備が貧弱だったからだと。
自軍の貧弱な装備では前線で逃げ出す兵が出ることを恐れたからです。
都合の悪い自分のコメントは消すし、問題提起には反応しないんですね。
あなた達のような、感情論で戦争がなくせると思っている人はいつもそうだ。
むしろそれが人々の分断を呼び紛争に発展するんですね。
いつまでも日本軍は悪、戦争はいけないとだけ言ってるのだろう。そんなことでは戦争はなくならないのに。
だいぶ前ですが、NHKのニュースで原作を取り上げられているのを見て、マンガの存在を知りました。その時は食指が動かずスルーしていたのですが、本作はレビュワーさんたちのレビューを読むうちに鑑賞したくなり、鑑賞しました。観てよかったと思いましたし、深く心に刻まれた作品になりました。
修整するのはいいですが、ペリリューで日本軍が住民を疎開させた事実を消すのは、偏った思想ではないんですかね?
何事も公平に分析しましょうよ。日本軍は絶対悪だと思ってませんか?
パラオでの戦史を公平に分析しましたか?
映画を題材に戦史や安全保障を語るならそのへんちゃんとしましょうよ。
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