「過去を未来へ紡ぐ今を。」ペリリュー 楽園のゲルニカ ぱいらさんの映画レビュー(感想・評価)
過去を未来へ紡ぐ今を。
まさかPG12食らうと思わんかったよね。と思ったが描写や昨今の情勢見るにプライベート・ライアンの時のスピルバーグのような制限指定を引き下げるゴリ押し芸は現代には通用しない。理由は作品そのものが武器を扱う好奇心という名の引き金になりかねないから。この作品見てりゃドンパチやろうとも思わんけど、どう感化されるかはその人にならないと分からないものがある。でも、この作品はちゃんと戦争に向き合ってグロい描写したと思う。
戦争に対する価値観が変貌を遂げつつある現代に、当時の戦争経験者も、生存という意味合いで少なくなってきた。80年も経っている。平均寿命だ。
記憶を言葉で語る事が出来る、伝えられる、そんな機会が消えようとしているからこそ本作含め戦争映画というものはジャンルとして成り立つのだろう、と推察する。
本作だが、可愛らしいキャラクターデザインの事などものの10分で忘れるくらいちゃんとリアリティを秘めている。というかキャラクターデザイン以外の"物"があまりにもリアル過ぎる。武器とか戦闘機とか戦艦、それに"ホトケ"さん含めてだ。手榴弾なんかも爆発の演出が音響込みでかなり凝っていて、あーこれは当たったら○ぬなぁ、とアニメながらに現実のリアリティをデザインではなく演出で感じさせてくる。
まぁアニメはアニメなので細かい部分(爆音聞いた後の耳鳴りがなさそう、とかクッソうるさいはずの銃声の後の普通のトーンでの会話など)はその辺省いてはいた。
なので粗はぼちぼちある、が、多分この映画が伝えたいのはそういう所じゃない。映画がいつ終わってもおかしくないくらいに周囲にタヒが溢れていた。それくらい容赦がない。容赦なさ過ぎて人が亡くなって悲愴や憎しみを募らせる時よりも人をやってしまった時の方の罪悪感が勝ってしまっている部分を描写したのは心に来るものがあった。あまりにも生々しい。
そう思えるのも、主演の声優である板垣李光人さんの、決して上手いとは言えない演技のお陰だろう。声優慣れしている中村倫也さんはそれはもう本職顔負けクラスで吉敷を演じて下さったが、板垣李光人さん演じる田丸のおかげで、どこにでもいる大人しそうな人が戦争に放り込まれている臨場感がより際立った。これは最初から最後までそうだった。
お陰でキャラクターに入りやすく、多分見返せばそんなに目を背ける位ではないだろうシーンでも目を背けたくなった。
プロモーションから俳優陣推しが多かったが、本作においてはこれで良かったと思える。
この辺の描写は逆にアニメだからこそ良かったのだと思う。
戦争というものがもしかしたら身近に迫っているからこその本作。この話は過去だからこそ、今という一方引いた視点で鑑賞できる。その過去の人達が命をかけて運んできた平和を、未来へ紡ぐために今を懸命に生きてみようと思わなくもない作品だった。
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