「一本の映画として本当にいい映画だった。」長崎 閃光の影で sokenbiteaさんの映画レビュー(感想・評価)
一本の映画として本当にいい映画だった。
とても誠実な映画だった。
起こったこと、その中にいた人たちをそのまま、余さずに映画に刻みつけるのだという気概を感じた。
それだけに、見ている間は辛かったけど。
ああ、こんなことどうか起きませんように、と願うようなことが、次から次に起こる。
家族は真っ黒になって死に、恋人や同僚は正体不明の病に冒されて死ぬ。
あの爆弾のおぞましさをあらためて思った。
当たり前だがスクリーンに映されているような事態が、何万通りも起きていたのだ。実際に。
これは既に起こった事実なのだから。
年齢を重ねるにつれて、映画や資料映像とかで原爆の投下シーンを見ることが、本当に怖くなってきた。
その向こうで生きていた人々の営みが、日々本当にそれぞれ大変で、それぞれに意味のあるものであったということが、実感としてわかってきたからかと思う。
そしてそれを無惨に蹂躙する戦争行為が、何某かの理屈や事情を盾に、人間が意図してやるものなんだだということも。
この映画でも投下前のシーンがあったけど、ああ、止まってくれ、誰か止めて、と思ってしまう。
あと一週間で戦争は終わるのに。
人間がやってることなんだから、止まる道筋はあったはずなのだ。
「あと一週間早かったらみんな生きとったのに」ってセリフにもあったけど、終戦まで広島からは10日、長崎からは一週間もたっていなかったんだとあらためて思った。
何十万人が死に、突然戦争が終わり、一週間前に落ちた爆弾にやられて地獄のようになった街が残る。
一体何なのだろう、これは。
よく戦争を二度と繰り返さないように、とか、そのために記憶を語り継ぐ、とか言うけど、それはほんとに、お為ごかしや綺麗事ではなしに、ほんとに絶対的に必要なことなのだ。
それを確かな実感をもって、思い出させてくれる映画だった。
ただ、そういう、感じるメッセージとかではなしに、単純に映画としても掛け値なしに素晴らしい映画だったというのは、声を大にして言いたい。
臨場感のあるセット、美しい映像、俳優陣の誠実で確かな演技とそれを引き出す演出。
今年見るべき一本の映画があるとしたらこれだったんだと思った。
もう上映終わり間際だと思うけど、自分はこれ映画館で見れてにほんとに良かったです。