「伝えることの尊さを改めて想う。」長崎 閃光の影で penさんの映画レビュー(感想・評価)
伝えることの尊さを改めて想う。
救護を呼びかけても、教会での死を望み、よろめきながら賛美歌を歌い列をなして教会に向かう被災者たち。救護を受入れた被災者たちも、助けられる命の数より、助けられない命の数の方が多いむなしさ。運よく助けられた命も、やがて原因不明(赤痢なのか?の初見が哀しい)の病で亡くなってしまう理不尽。そこに、家族や大切な人の喪失の有無や、敵を許すか許さないかの言い合いなどが加わり、3人の間でも一時的な感情のもつれが生まれます。限界に達する疲労感。そんな様子が日を追ってたんたんと描かれてゆきます。
ふと、カミュの小説「ペスト」を思い出しました。二つは極限状況での人間の選択と行動を描いている点、日常生活の中、短期間で大量の人命が失われるところを描いている点、連帯と責任がテーマになっている点等で共通しています。
ちなみに、お隣の佐賀県出身だった私の母は、この時、主人公たちとほぼ同年代の17歳で、知り合いが被爆して亡くなったと言っていましたが、そんな母が好きだった作家が、やはりカミュでした。
冷戦時代、7万発を数えた世界の核弾頭も冷戦終結後は減少に転じ、1万5千発程度で安定していましたが、近年は戦術核の使用をためらわないと脅しをかける国が出てくる中、再び一部の国で上昇に転じているようです。そんな中、唯一の被爆国として、むごたらしい事実は事実として、しっかり記録し、後世に伝えて行く必要性は、以前にも増して増大しているように思います。そうした情勢にもしっかりと向き合っている良い作品だと思いました。
原爆による死者は、長期推計で、長崎10万人以上(当時の人口24万人)、広島20万人以上(当時の人口35万人)だそうです。戦後80年。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りします。
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