「ヒーローではない。」ベテラン 凶悪犯罪捜査班 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
ヒーローではない。
初めて見た。そして好きだ。
どうやら前作もあるらしく、機会があれば見てみたい。
ベテランの刑事が奮闘する。
特別な能力は何もない。剛腕もなければIQ200の頭脳もない。伝説的は傭兵部隊の一員でもないし、凄腕のスパイだったかこもない。あるのは長年の経験則と刑事の勘だ。
その辺が上手く表現できてて好感度大だ。
逆に今作の犯人は凄腕だった。
頭もいいし、知識もある。若いし動ける体も持ってるし格闘技まで身につけてる。ほぼスキがない。
そんな犯人を40後半くらいのオッサンが追い詰めていく。
画面から必死さが伝わってくる。
確信を持って掴んだ犯人の手は絶対に離さないというような。それだけが、彼の武器だったように思う。
作品はショッキングな作りになっていて、司法が裁けなかった悪を私的に制裁している連続殺人事件の犯人が今回の敵だ。
日本でいうところの仕事人みたいな事で、大衆が彼を奉る姿が巧妙に描かれている。この辺の誤差が面白いなと思ってて…彼ばおそらく殺したいだけの人なのだ。で、これなら殺される資格があるよねって連中を自分の趣向の為に殺している節がある。それなのに、その彼に勝手に理想と価値を塗りたくってるのは大衆なのだ。その大衆はとある発信者に煽られ熱狂していく。
上手く描けてんなぁと思う。
発信者も大衆も滑稽だし、嫌悪感を抱く。
まぁ、それに扇動され騙され貢いでいる連中も馬鹿としか言いようがないんだけどね。
そんな風に描かれてる。
導入はコメディタッチな部分があるも、ちゃんと社会性を盛り込む辺りは流石は韓国。エンタメでありつつも社会への提起を忘れはしない。
刑事が言うのよ。
「なんで皆、他人にそんな興味があるだ」と。
全くもってその通りで…無関心でいろってわけではなく過度に関わったところで得る物などない。もうボチボチ新しい病名なんかが、この行為に付けられるんじゃなかろうかと思う。
お隣もなかなかに派手にやらかしてみるみたいだ。
祭りで賑わう中、配信者が犯人と接触するなんて動画とかなんで撮れると思うんだろう?
俺が知らないだけでyoutuberってのはそんなに信用されてるものなのかしら?
でここからチェイスが始まる。
コレがまた縦横無尽な立体的な構成で楽しかった。最後の階段落ちは凄まじかったなぁ。めちゃくちゃいいスパイスになってた。
あまりアクションはないのだけれど、主張がはっきりと伝わってきて偏差値は流石に高い。
痛そうだし、オッサン負けんなと拳を握る。
犯人の蘇生を試みる編集とか良かったなぁ…。
アレだけで彼の信念が伝わってくる。
刑事が言うのよ、2回も。
「疲れた、チクショー」って。
もうその台詞に全て集約されてるようで格別だった。
あんなに必死になって、息子が殺されそうにもなってるし、トラックの荷台にぶん投げられもした。体は悲鳴しか上げてないだろうし、車同士で正面衝突もしかけた。過剰たと叩かれる事はあっても、身に余る栄誉があるらけでもないし、給料は上がらない。
誰の目にも触れないところで日夜闘い続けてる。
祝勝会が催されるもけではなく、家に帰ってインスタントラーメンを啜る日常、そのラーメンでさえ、家族に啄まれていく。
割に合わないのだ。
けれど、自分の信念は曲がらないし曲がってもくれない。ラストカットの日常が表現している事はホントに大きくてちゃんも物語を締めて着地させたような感じだった。
規模もしっかりしてるし、ディテールは見事だし…暫く韓国映画を上回る事はないように思う。
アイドルをキャスティングして小銭稼いでる場合じゃないぜ、ホントに。
