「前作との関連は、キャラ、思想、社会的風潮と意外とあるので、可能なら予習しておこう」ベテラン 凶悪犯罪捜査班 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
前作との関連は、キャラ、思想、社会的風潮と意外とあるので、可能なら予習しておこう
2025.4.17 字幕 イオンシネマ久御山
2024年の韓国映画(118分、G)
前作『ベテラン』の続編で、約10年後を描いた犯罪映画
監督はリュ・スンワン
脚本はリュ・スンワン&イ・ウォンジュ
原題は『베테랑2』で「ベテラン2」、英題
は『I, the Executioner』で「私、処刑人」という意味
物語の舞台は、韓国のソウル
広域捜査隊の強力班第2チームの面々は、闇カジノの摘発に向けて潜入捜査を行なっていた
紅一点のボン刑事(チャン・ユンジュ)が主婦賭博団に扮していたが、闇カジノの経営者が顔見知りのトクチル(ヒョン・シンボク)だったためにあっさりとバレてしまう
それと同時に警察も踏み込むことになり、大捕物はうだつの上がらないものになってしまった
その頃ソウルでは、「正義部長TV」というウェブチャンネルが流行っていて、その配信者であるパク・スンファン(シン・スンファン)が取り上げた人物が殺されるという事件が続いていた
彼は、司法が捌けなかった犯罪者を番組上で吊るし上げるのだが、そこで取り上げられた人物は謎の男によって「被害者が死んだのと同じ状況」で殺されていた
スンファンは男を「ヘチ」と名付け、その名前は一般化していくことになったのである
強力班2チームはその捜査も行なっており、チーム長のジェピョン(オ・ダルス)をはじめとして、ドチョル(ファン・ジョンミン)、ドンヒョン(オ・デファン)、シヨン(キム・シフ)とボン刑事が捜査に当たっていた
彼らは一連の事件を同一犯であると考えていたが、捜査隊の隊長ジョンシク(チョン・ホジン)は「もっと広角的な目線で」と捜査に発破をかけていた
物語は、ある路上の事故で収監されていたチョン・ソグ(チョン・マンシク)が刑務所から出てくるところから動き出す
ある家族と駐車場で口論になったソグは、相手を突き飛ばし、それによって被害者が死んでしまうという事件を起こしていた
懲役3年が軽いのではと考えられていて、そのことが「正義部長TV」にて発信されてしまう
ソグもヘチのターゲットになる可能性が指摘され、ドチョルたちは身辺警護を行うことになったのである
ドチョルは、前作の事件にてドチョルたちの捜査対象になっていた人物で、その警護は気が進まなかった
そんな折、ドチョルを匿っている場所が漏れてしまい、やむなく場所を変えることになった
そこには多くの市民たちが押し寄せ、さらにスンファン以外にもたくさんの動画配信者がごった返して来た
そんな中で、ヘチがこの場に現れるのではないかという噂が流れ、場はさらに混沌としたものになった
そして、ソグを狙う男が発見されたのだが、それを制圧したのが交通整理のために派遣されていたパク・ソヌ(チョン・ヘイン)だった
ドチョルはその腕前を見て、強行犯係に加えてはどうかとチーム長に進言し、それが叶って、人手不足の第2チームに加わることになったのである
映画は、その後も「正義部長TV」を絡めた事件が起こり、その中で夫と車に乗っていて助かった外国人妻のトゥイ(トゥイ・ミン)の事件が取り上げられていく様子が描かれていく
トゥイは保険金詐欺を指摘されていて嫌がらせを受けていたが、それを社会福祉士をしているドチョルの妻ジョヨン(ジンギョン)に相談を持ちかけていた
さらにドチョルの息子ウジン(ビョン・ホンジュン)も学校で問題を起こしていて、自殺騒動まで起こしてしまうのである
物語は、かなり多くの事件がサクサクと押し寄せる展開で、そこまで混乱しないものの、集中力を要する内容となっていた
登場人物が物凄く多く、前作の因縁が絡んでくるところがあり、さらに「司法や大企業に対して無力だった」という過去も関連してくる
そんな中で、「私刑」というものが行われるようになり、それが許容されていく社会が描かれていく
その渦中にドチョルは放り込まれ、自身の正義感というものが試される、という内容になっていた
社会問題化する私刑を描きつつ、その方向に傾倒する国民を描いていて、それに対して警察は何をすべきなのかが問われている
彼らは逮捕するまでが仕事だが、その先に犯人がどのような処罰を受けるのかまでは関わることができない
悪事は誇張されて伝達されるために、加害者に対する印象は最悪なものとなり、それが経済的な疲弊を起こしている国民の捌け口となりつつあったのである
前作を見ていないとわからないということはないが、物語的には連続していて、前作の警察の無力さというものがさらにエスカレートする世界になっているので、予習ができるならしておいた方がいい
闇カジノの経営者、路上暴力犯は前作に登場する人物なので、彼らとの関わりは思った以上に重要となっている
さらに、新しく配属されるソヌは「先の事件に感化されて警察に入った」という経緯があるので、そのあたりの重みを感じる上では必要な120分と言えるのではないだろうか
いずれにせよ、前作同様にかなり泥臭い内容になっていて、犯罪捜査に対してスカッとするかと言うと微妙なラインを突いていると思う
前作では、金持ちが失態を犯しまくったことで何とかなったものの、今回は身内の出来事がメインになっていて、その爽快感というものはメインヴィランの思うツボのようなものだと思う
今回は、ドチョルがその感情の矢面に立つ格好になるのだが、ほとんどの観客は一般人なので煽動する側に当たる
それゆえに、叱責されるべき世論とか同調者という側面が否めないので、普段ヘイトを吐き捨てていたり、自分とは無縁の事件でウサを晴らそうとする人にとっては耳の痛い内容になっている
そう言った意味において、あらゆる社会的な出来事を冷静に見られる人は良いと思うのだが、そうではない人にとっては不快な作品になっているのかなあ、と感じた
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