劇場公開日 2025年5月16日

「温故知新ホラー」ノスフェラトゥ kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0温故知新ホラー

2025年6月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

斬新

多くのホラー作品に影響を与え、ルーツとも言われている1922年製作のF・W・ムルナウ監督の「吸血鬼ノスフェラトゥ」を、自身の幼少期に多大な影響を受けたと公言している「ライトハウス」「ノースマン」のロバート・エガース監督がリメイクした。
ムルナウ作品のストーリー、設定、展開をほぼ踏襲しているため、ストーリーや設定の古さや不自然さを指摘する声が多くあまり評判が良くないが、個人的にはロバート・エガースらしい作品でかなり楽しめた。おそらく「ライトハウス」的なダークで変質的な世界観を受け付けない人には向かない作品で、好き嫌いが分かれる作品であろう。
不動産業のトーマス・ハッター(ニコラス・ホルト)は、自身の城を売却しようとしているオルロック伯爵(ビル・スカルスガルド)のもとへ出かける。トーマスの不在中、新妻であるエレン(リリー=ローズ・デップ)は夫の友人宅で過ごすが、ある時から、夢の中に現れる得体の知れない男の幻覚と恐怖感に悩まされるようになる。時を同じくして、トーマスやエレンが滞在する街にも、さまざまな災いが起こり始める。
ロバート・エガース監督はサイレント映画であった元作を最新の音響、オルロック伯爵の怪物的造形、ゴシックホラーにかかせない重厚な19世紀ヨーロッパの街、幻想的なVFXで現代にアップデートした。自身が敬愛する過去の名作を当時の技術や条件で表現できなかった部分を現在の技術で理想的な形にリメイクするスタイルは庵野秀明監督の創作の指向性に近い。
作品のキャッチコピーに”ゴシック・ロマンスホラー”とあるが、高圧的な男たちからの支配愛と安らぎを与えてくれる夫からの抱擁愛に揺れ動くエレンの動向が観どころとなっている。エレンを演じたジョニー・デップの娘、リリー=ローズ・デップの怪演が見事。
マニアックでダークな面と愛憎劇的なエンタメ面がうまく調和しており、ロバート・エガース監督の新境地と言える。

kozuka
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