「タイトルなし(ネタバレ)」ノスフェラトゥ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
19世紀、北部ドイツのウィスブルク。
少女エレン(リリー=ローズ・デップ)はかつて、死してなお不滅の存在(ビル・スカルスガルド)と終生の愛の契りを交わしていた。
年を経て、エレンは不動産会社に勤めるトーマス・ハッター(ニコラス・ホルト)と結婚。
新婚早々トーマスは、カルパチア山脈に暮らすオルロック伯爵のもとを訪れなければならなくなった。
伯爵が、新たにウィスブルクに居を構えたい、と申し出、その契約のためだった・・・
といったところからはじまる物語で、あらすじ的にはF.W.ムルナウ監督版を踏襲している。
ただし、冒頭にエレンの物語が描かれていることもあり、物語の焦点はかなり異なる。
ホラー映画としての側面よりも、恋愛映画としてのそれである。
エレンを挟んでの三角関係。
終生の愛の契約を結んだエレンとノスフェラトゥに、人間トーマスが割って入った格好。
それゆえか、伯爵の造形は口髭などでやや人間味を残している。
(ムルナウ版、ヘルツォーク版をよしとする観客には不興を買うでしょうが)
陰の濃い画面、悠揚とした語り。
それでも、伯爵城への行程やデメテル号のエピソードなどは端折った感がするのは、三角関係に直接関係がないからか。
恋愛としても、好き嫌いだけではないあたりが興味深い。
エレンはノスフェラトゥへ終生の愛を誓っており(誓いは契約のもっとも簡素な形)、トーマスはエレンを伯爵に差し出す契約書にサインしている(騙されたといえども)。
関係性が「契約」に基づいており、旧・新約聖書との対比とみると、興味深い。
興味深い点は多々あるが、ハラハラドキドキ、ビックリキャァァを期待したひとには拍子抜け確実でしょう。
個人的には、悶絶レベルのおもしろさでしたが。