「贅沢な作品でした」岸辺露伴は動かない 懺悔室 みかづきさんの映画レビュー(感想・評価)
贅沢な作品でした
元々ジョジョが好きで今回の原作も読んでいましたが、1本の映画にするには短いためどのように描かれるのかとても興味がありました。
原作にあたる部分は映画前半でじっくりと描かれています。
この原作再現がとても忠実で、皆さんの演技も素晴らしく、ポップコーンをキャッチするシーンは結末が分かっていてもハラハラしました。
少女の赤い衣装は映画オリジナルですが、不気味な雰囲気が増していてよかったです。
映画後半はオリジナルストーリーですが、原作でも言及されていた娘(マリア)が中心となるため、どのように展開していくのかワクワクしました。
幸せを避け、あえて不吉とされるモチーフを身に着けたり不吉な行動を繰り返す描写や、マリアが現在の職業を選んだ理由など、オリジナルでありながらジョジョシリーズらしさのようなものも感じられ、嬉しかったです。
映画で描かれる『呪い』は恐ろしく、幸せになりすぎてはいけないということで生涯にわたって暗い影を落とすものですが、その呪いさえ吹き飛ばしてくれそうな明るく優しい婚約者・ロレンツォのキャラクターが個人的にとても好きでした。
ロレンツォと泉さんの登場するシーンはずっと癒しでした(笑)。
高橋一生さんの露伴先生は今回も素晴らしく、スタイリッシュでかっこよかったです。
幸運が次々と「襲いかかってくる」展開で、花束や四つ葉のクローバー、豪華な料理やチケットのときはさほど大きな反応を見せませんでしたが、自身の漫画に関わる幸運が起こったとたん感情を露にするシーン、露伴先生の漫画への向き合い方がひしひしと伝わってきてとても好きでした。
結婚式で一芝居打つ場面の、「わかりやすい演技をする露伴先生」の演技も好きです。(笑)
マリアとロレンツォ、そして露伴先生とマリアが出会ったことは『呪い』だったのかもしれませんが、その出会いを『幸運』に変えた彼らを見ていて、こちらも温かい気持ちになりました。運命に立ち向かっていくという点で、ジョジョシリーズ全編へのリスペクトも感じられました。
心に残る台詞や、散りばめられた小ネタも多く、また観に行きたい作品です。