「原作のキレが良すぎるせいで蛇足感がある」岸辺露伴は動かない 懺悔室 ほたるさんの映画レビュー(感想・評価)
原作のキレが良すぎるせいで蛇足感がある
原作は短い読み切り作品なので、映画の尺に合わせるためにストーリに肉付けがされて主人公の露伴先生たちも出番が増えている
が、どうしても尺の都合や主人公たちの露出という都合があっての肉付けに感じてしまい蛇足に感じる展開が多かった
そもそも原作の話は直接露伴とは関係なく、個人的には好奇心から非日常を覗き込んだ露伴に世にも恐ろしいものが目の前を通り過ぎるという不気味さと不用意に人の秘密に踏み込んだ後味の悪さが醍醐味な物語だと思うので、ここまでがっつり介入してしかも解決に関わってしまうと作品としては全然違うテーマにはなってしまう
もちろん原作と同じものを作らないとダメというわけではないが、わたしの中での岸辺露伴はここまで積極的に人のために動く人間ではないので原作でただ男を見守って帰ってきた露伴を知っている身としてはそこには違和感を感じた
また話のオチも原作程のビックリ感はなく、まあそういう展開で終わるのねという予想でもできたので、やはり原作で最期に男が去っていくシーンほどのキレ味の良さと驚きは感じない
ただ、これらは全て原作の懺悔室の話を事前に知っており、そこと比べてしまう視点で見た話なので、原作を関係なしに見た場合では感想は変わるかもしれない
それでも展開のテンポはヴェネツィアの風景や景色を見せる必要があったのか長めでやや冗長に感じたが、脚本の筋とは別にしたシーンごとの岸部露伴の行動やセリフ回しなどの解像度は高く、こういう状況なら岸辺露伴ならこういうことを言うだろうなというニュアンスはとても満足できた
露伴シリーズではないがジョジョシリーズで出てくるミラグロマンのような現象に岸辺露伴が出会ったらおそらくこうなるだろうと思えるようなシーンもありそのあたりは面白かった
総評するとタイトルのような一言にはなるが、高橋一生主演のドラマ化自体は悪くないと思う
個人的な好みとして背中の正面やザ・ランのように50分程度の尺でテンポよくまとめていればもっと面白かったのではないかという感想になる