「先に原作ゲームをプレイか動画で確認したほうが良い」8番出口 ヘルシー太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
先に原作ゲームをプレイか動画で確認したほうが良い
鬼滅や国宝等と中々豊作の今夏だけど、またしても傑作がでてきた。原作ゲームを知っている方々はご存じだろうけど、非常にシンプルでプレイ時間は下手すると30分も満たない短編ゲームものだ。ストーリーもオチも無いゲームをどうやって1時間半ものの映画に仕上げたのかと思い、映画館に足を運んだのだけど、圧巻の一言だった。
まずは主演の二宮の演技が良い意味で痛々しすぎた。喘息持ちで元恋人のデキちゃった発言でメンタル崩壊寸前の主人公が「8番出口」の中に迷い込んで絶望感を味わう姿がとにかく胸を抉っていく。原作ゲームは非常に淡々とした雰囲気の中で何も言わない主人公目線(プレイヤー)が進行しているけど、映画では感情を持った主人公が只管絶望感に押し潰れないように足掻いて脱出する物語だ。そして、怪奇現象である8番出口もまた映画では感情を持つ主人公、または映画特有の他の登場人物に対して、1番触れてほしくない、あるいは偽りの希望を抱かせて、絶望感を合わせてくる。8番出口は迷い込んだ者の弱みに付け込んだ変異で迫ってくるのだ。それがまた視聴者に容赦ない絶望感を抱かせてくる。兎に角、没入感が凄まじくあっという間の1時間半だった。
ゲーム以外では今作の監督が執筆した小説版があるらしいんだけど、自分のオススメとしては原作(直接プレイかプレイ動画視聴)→映画→小説という流れが良いと思う。なぜならば、映画の内容は程よく自分で考察する余地があり、まずは自分である程度考察して小説で答え合わせをするのがオススメだ。あるいは敢えて小説を見ずに自分なりの答えを見出したままで自己完結するのもまた一興だとも思える。
欠点と言えば、明確な説明は無く、謎が解明されたわけではないから、ハッキリとした答えを求めている人に対しては不向きの作品だろう。それが賛否両論の要因の一つかもしれない。しかし、明確な答えが存在しているものは大した存在ではないと思う筆者にとっては定まった答えはノイズでしかない。謎だからこそ8番出口は超常的な現象に足り得ており、傑作だと確信している。
ちなみに1番騒がれている歩く男こと「おじさん」も凄い。何が凄いかというと本作最大級のネタバレになるため、実際に見て確かめてほしい。少年やその他のキャストも説明が難しく、ネタバレにつながることから以下同文。原作にお馴染みの変異はいくつか再現され、映画特有のアレンジも加えられており、絶望感が与えられるようなタイミングで発生させていることが憎い演出となっている。さらに映画オリジナルの変異もいくつかあり、その中には登場人物に合わせた悪意のある変異であることから、それも実際見て確かめて欲しい。ネタバレ厳禁で自分の目で確認しなければ、カタルシスを二度と味わえなく後悔すること間違い無しだ。
