「間違い探し」8番出口 AUGさんの映画レビュー(感想・評価)
間違い探し
二宮和也を広告塔にした賑やかし映画と思っておりましたが、いい意味で期待を裏切られました。
まず、雰囲気づくりが非常に良かったです。背景音楽の使い方(特に無音)、主人公の設定(呼吸器系の疾患による呼吸の乱れやそれに伴う薬剤の投入)といった一連の動きが地下道という狭所に幽閉されたと言える閉塞感をより際立たせておりました。
また、カメラワークも非常に一品でした。冒頭の一人称視点→主人公の周りを取り囲むようなカメラアングルは電車通勤の日常から異質な地下道への推移を没入感を与えてくれました。その後も、主人公と観客の視点の相対的な関係がホラー映画なだけあってよく練られおり、常に緊張感を感じるものでした。
物語についても、冒頭の電車内で赤子に対する心無い風当たりを見てみようした行為に続いて、別れるはずの恋人の妊娠をきっかけに揺れ動く主人公、赤子がモチーフの異変/謎の子供との出会い。といった、父親になれるのか?という選択の葛藤が根底にある展開にも心打たれました。中盤から登場した子供についても主人公の過去なのか?未来の子供なのか?主人公の選択によって生まれるはずのなかった別の可能世界の子供なのか?なぜこの迷宮に迷い込みんだのか?...という様々な可能性が渦巻き、個人的には最後まで釈然としませんでしたが、ワクワクしながら楽しめました。また、海辺のシーンで「何が正解か分からないし、引き返すことも出来ない人生」と「何が異変(間違い)か分からない上に間違えると振り出しに戻ってしまう迷路」という一見真逆に見えて共通する煉獄性のようなものを非常に上手くあぶりだしている点が、この映画を単なるインディーズの短いゲームの原作の劇場版にたらしめていない点と思いました。真偽や本編後の主人公達の帰結はさておき、主人公が人生や過去の選択と向き合い、最後には少なくとも前進することが出来たというラストシーンは良かったと思いました。
(濁流イベント前後の地下道の描写から、子供は主人公の未来の子供で、過去の主人公が将来来る厄災から助け/また主人公は子供から助けられたのではないか?と思いました...)
全体として、原作であるゲームの特徴をしっかりと根底に置いていたことも非常に好感が持てました。ちゃんとゲームをプレイした者が知っている「間違い探し」を各所にちりばめてくれる他、序盤の訳も分からずにループしてしまったり、中盤の「異変」を見つけられずに今までの努力が水泡に帰して0番出口へ戻ってしまう様子は、正にこのゲームをプレイしたものが陥るうるパターンそのもの!ストーリーと同時に元々ゲームが持っているエンタメ性をきちんと観客が楽しめるようにしている仕掛けは素晴らしいです。また、クスっと笑える観客目線のツッコミを息抜き的に配置してくれたことも好感です。
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