「無限ループからネクストステージへ」8番出口 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
無限ループからネクストステージへ
改めてニノの人気に驚かされた。
公開されたばかりとは言え、朝一だったのに満員。今年2度目の一番前の席で見たよ。
『鬼滅の刃』の連続首位を阻止出来るかまだ分からないが、全国でも“8”億円のOP成績が見込める大ヒットスタート。
“コナン君”でもない限り名前だけで観客を呼ぶのがなかなか難しい昨今、ニノは稀有なマネーメイキング・スターの一人。
本作の人気と話題はニノだけじゃない。
あの予告編の巧さ。ありゃあ気にもなるし、見たくもなる。
一見、何処にでもありそうな地下駅構内。
だが、一歩そこに足を踏み入れたら…。
同じ通路が延々続く。無限ループ。
抜け出す手段を見つけ、脱出しようとするが…。
昔、『スーパーマリオブラザーズ』でこんな無限ループ面あったね。4‐4と7‐4と最終ステージの8‐4だったね。今でも正しい道順覚えてる。何だか見ながらそれを思い出した。
こんなゲームあったら面白そう…と思ったら、同名ゲームが原作。ちなみにそのゲームについては…いつもながら。
親子や小中学生の客が多かったのは、そのゲーム人気だったのか。
ゲームはループ空間からの脱出のシチュエーションものらしく、ストーリーはナシ。
ストーリーが無いものをどうストーリー性が求められる映画にするか…?
ゲームの設定を活かしつつ、ニノ演じる主人公の男に恋人との不和関係や持病の喘息設定を持たせ、より脱出を望むシンプルながらもストレートな動機(ストーリー)になった。
賛否両論が多かったのでちょいハードル下げての鑑賞だったが、全くのゲームノープレイヤーとしては、この設定を思ってた以上に面白く見れた。
ルール。一、異変を見逃さない事。一、異変を見つけたら引き返す事。一、異変が無かったら引き返さない事。一、8番出口から出る事。
最初は何のこっちゃ。でも幾度もループする内に、このルールをしっかり頭に叩き込み。
ポスターの画像や文字は違ってないか、ドアの数は合っているか、天井の掲示板にもよ~く目を凝らし。だけど、逆さまの“8”には気付かなかった~!
様々なトラップも。コインロッカーから赤ちゃんの泣き声、突然真っ暗、不気味な実験用ネズミ、『シャイニング』のような濁流…。
ゴールを思わせる光や雑踏、思わぬ人物…。これらはズルい!
5番6番まで来て、ミスって、また0番からやり直しの絶望感…。
“8”は見方を変えれば“∞”。
レベルがどんどん上がっていくのはゲームあるある。
見てるこちらも主人公と一緒になってループに閉じ込められた錯覚に陥る映像技術、特に長回しのような見せ方は見事。
川村元気は監督前作『百花』で、原田美枝子演じる母親が認知症で記憶がループするシーンでもこの手法を用い、これをさらに活かせる題材を探していた時、原作のゲームを知ったという。
無機質ながらリアリティーのある美術。
効果的かつ印象的な音響。
VFXや編集も巧み。
劇場大スクリーンで聞くボレロ。この名曲は本当に映画に合う!
シンプルに見えて凝った技術が散りばめられた労作。
個人的には川村元気の監督作ではベスト。
似たようなシチュエーションが続くので人によっては飽きてしまうかもしれないが、飽きさせない為に、見る者を引き込ませる魅力と実力を持っている事が必須。なるほど、ニノは適任。
キャストは少なく、ニノ以外で名のある役者は小松菜奈くらい。だけど、ちょい役。
ニノが出ずっぱりと思ったら、同じ“プレイヤー”は2人いた!
モブキャラかと思った“歩くおじさん”。後半まさかの…!
前半は素敵な不気味な笑顔を見せ、後半は人間味たっぷり。
主に舞台で活躍し、ニノとは話題を集めたTVドラマ『VIVANT』繋がりの河内大和。
本作でまたまた強烈インパクトで注目される事は必至。これからさらに売れるだろうね。
同じくモブキャラと思った“少年”。ニノ視点、おじさん視点、少年視点の三幕構成、それぞれが交錯するのもユニークな作り。
無口な少年。が、鋭い観察眼。ゲームで言う所の“お助けキャラ”のような。
実は少年は…。
このループ空間では“時”も混雑しているのか…? 時に一定の流れは無く、幾つもの時空が入り乱れている…というのを聞いた事がある。
この子役も好演。あの“女子高生”も怖演。
EDクレジットでボレロに聞き惚れていたら、“SPECIAL THANKS”として3人のビッグネーム監督にびっくり!
各々、川村元気やニノと繋がりあり。
川村元気に演出などアドバイスしたという。
入り口はホラー。
出口は…。
恋人との関係緩和、二人で歩むであろうこれから。
開幕シーン。泣く赤ちゃんを抱える母親に怒鳴るサラリーマン。
スマホをいじって無視を決め込む周りと同じだった。
ラストシーン。同シチュエーション。
悩んだ末に…。
夏の終わりに思わぬ拾い物。
無限ループの難ゲームをクリアし、自分のネクストステージへ。
共感ありがとうございます!
夏休み中で親子連れも多かったですが、微妙なお年頃の姉ちゃんが多かったのは二宮和也目当てだったんですね。
元のゲームはプレイ済みなんですけど、注意力が普通にあれば比較的簡単なゲームなので、「これ、どうやって尺稼ぎするのかな?」って疑問に思っていました。
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