「「異変」が導くは出口だけか、それとも資格足り得る自分か…」8番出口 シャルコー_Charcotさんの映画レビュー(感想・評価)
「異変」が導くは出口だけか、それとも資格足り得る自分か…
個人的に感じたこの作品のテーマとしては「変化」について語っているように強く感じました。その理由として、第一に挙げられるのが「8番出口」と呼ばれるループする迷宮であり、なぜなら、この迷宮に迷い込んだ前後で主人公の内面が大きく変化しているのがわかるからです。
まず初めに、前提としてこの迷宮から脱出するためのルールが「異変を見つけたら引き返す」、「異変がなければそのまま進む」となっており、ここで触れられている「異変」には大小存在し、特に大きい「異変」の時は迷い込んだ人間との関わりがより強いものとなります。
今作、8番出口に迷い込んでいる人間が3人しかいないのでサンプルがそんなに多くはないのですが、彼らのリアクションから察するに恐らく迷い込んだ人間の深層心理が具現化し迷宮自体が個々人のためにパーソナライズ化されているのがうかがえます。特に主人公の「迷う男」は、映画の始まりに満員電車に乗っており、そこから8番出口に迷い込むまでに彼に関する属性や彼が影響を受けているものが複数ちりばめられているのですが、その中でも特に印象的なのが8番出口に迷い込む直前に直近別れてしまったであろう彼女から子供ができたという報告を受け、それが「迷う男」の不安や悩みとなり「異変」として形を成して襲って来ます。他には、お母さんに構ってほしくてあえて迷子になった「少年」に対してはお母さんが「異変」として現れたり、「歩く男」の場合は、6番出口までたどり着き残すところ2つとなったのにもかかわらず失敗してしまい進捗がリセットされ、心が折れてしまった彼の目の前にその瞬間一番に欲しいものが「異変」として現れたりと巧妙にも8番出口という迷宮はループに陥れようとして来ます。
ただ、こうやって何度も襲ってくるパーソナライズされた「異変」を見る中で、個人的に「異変=個人の心の機微」なのではないかと強く感じるようになりました。そう捉えると、この8番出口自体が迷い込んだ人間の「心」を表し、ループという仕様がその人間の繰り返す「日常」であり、当人が望む望まないにかかわらず訪れた「変化」に呼応する形(当人のリアクション)で「大小の異変」として表現されているように考え、その「異変」に気づける人間が「迷う男」のように現実を受け入れ変わることができ、気づけなかった人間が「歩く男」のように現状認識ができずループにハマり「日常」を繰り返すだけになってしまうのではないかと感じました。
正直に言うと、私はホラーが苦手と言うこともあって、冒頭鑑賞しているときは「見に来なきゃよかった」という後悔の念の方が強かったのですが、後半に行くにつれて上記で一部触れたような人間ドラマ模様が垣間見えていき次第に心打たれて、まさか感動させられるとは思わず最後は大変満足させていただきました!
共感ありがとうございます!
私は元になったゲームをプレイしていたので、比較的単純なゲームをどうやって映像に落とし込むか興味があったのですが、尺稼ぎ部分もありますがまとまっていると思いました。60分ぐらいの小作品の方がカンヌで公開する事を前提に考えたら海外では受けが良かったのかも知れないです。
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