「すっきり出られませんでした」8番出口 ゾアさんさんの映画レビュー(感想・評価)
すっきり出られませんでした
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不条理ものは、具体的な落ちをつけられると興ざめする事が多い。一方で条理に則った人物成長譚は、背景を緻密に積み上げないと説得力がない。そのせいでこの作品は、すっきりしないものになってしまった。
脱出できない地下通路の不条理さはうまく出来ているが、主人公の描写にその優柔不断な性格や日々の閉塞感を具体的に見せるものがなく、落ちの彼の成長がよくある形をなぞった
だけになってしまっている。早い話見え見え。人物を観客に印象づける具体性がないので、それを乗り越えても身につまされない。濁流に飲み込まれたときに、仏心が生まれたり未来の?幸せ家族の幻影を見ただけでは、説得力は出ません。濁流にしても、他のやり直しギミックよりスペクタクル過ぎて、違和感があり、落ちのために作ったギミックに見える。
いっそ、あの地下道から脱出できないで終わった方がまとまったのではないか。例えば、恋人との電話だけはつながっていて、彼女とのやりとりの中で彼の性格や現状を描き、謎解きと心の成長を絡ませて描けば、不条理劇と成長譚はもう少し融合したのではないかと。
その上で結局で出られないとした方が、絶望的な落ちでも不条理に翻弄される様は全うしたと思う。
オジサンの落ちはニノのために使って、ラスト、新たな犠牲者が入ってきたら前からニノが歩いてくる、なんて方が面白かった。
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