「白昼夢が見せる人生の道しるべ」8番出口 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
白昼夢が見せる人生の道しるべ
主人公の二ノは煮え切らない男。いい年していまだに派遣の仕事で食いつないでいて、身を固めることもなくふらついている。そんな彼が突然別れたばかりの彼女から子供が出来たことを告げられる。
元カノは二ノに突きつける、自分と子供を引き受ける覚悟があるのかと。目の前で赤ん坊を抱えた母親に暴言吐き散らす不届き者に対して自分は傍観者面しながら周りは誰も注意しないんだ、などと批判だけは一人前の二ノ。突然の元カノからの告白にも狼狽えまくる。
元カノは試している。この男がそこまでの覚悟を持ってるかどうか。二ノは人生の選択を迫られる。ここが真の男となれるかの正念場だ。
彼女との電話が電波が途切れて不通になると同時に彼は地下道の迷路に閉じ込められてしまう。まるでロールプレイングゲームのように規則に従わなければそこからは脱出できないという。
何度も同じところをぐるぐる歩き続ける二ノ。観客もいい加減飽きてきて眠気に襲われる。仕事終わりに二本立て続けに見たからか、さすがに睡魔には勝てずにうつらうつら。
でも映画鑑賞百戦錬磨、肝心なところは見逃さない。本作はいわゆる「CUBE」や「プラットホーム」と同じ部類の不条理脱出スリラー。ただ、これら二作に比べるとスケールやエンタメ度合いは劣る。予算の都合か。でも一本の映画作品としては充分な出来。
立場が人を作るというように人間というものは人の親になり始めて成長する。その立場に立たされて飛躍的に成長するのだ。自分は一人前ではないから人の親になんてなれない、ではなくて子供の存在が否応なくその人間を一人前の大人に、親にするのだ。
二ノは白昼夢の迷路の中でこれから生まれてくる自分の子供と出会う。彼はその子とふれあい、その子を助けるために奮闘する。濁流から救おうとその子を抱きしめた時、彼は実感したはずである。これは自分の子供だと。俺はこの子の父親なのだと。人間、迷いは常にある。でも一つの迷いが今消えたはずだ。
すべての条件をクリアした二ノは8番出口ではなく8番入り口に降りていく。彼には向かう場所があったからだ。
彼にはもう迷いはなかった。白昼夢が彼を導いてくれたのだ。もうふらふらした人間ではない、人の親になる覚悟ができた一人前の大人の男がそこにいた。
いま彼の目の前にあの不届き者がいる。いまも赤ん坊を連れた母親に暴言を吐き続けている。彼はその男に向かって言うだろう。お前は生まれた時から大人なのか。お前にも赤ん坊の頃があっただろう、お前も大声で泣きじゃくり母親を困らせただろうと。
その現場にいたら私は居ても立っても居られずそう言うだろう。
おはようございます。
丁寧なお返事ありがとうございます。
無限地獄に落ちてループ続けるのかと、
不安になりました。でもレントさんが、
そこまでは監督は意図しておらず、2度、赤ちゃんを
怒鳴る男のシーンがあるのは、映画的な演出である、
私も2度見ないとここがポイントだと気づかなかったと
思います。
レントさんは、あの場面で、あの男に“注意、警告“を
ちゃんとする覚悟がお有りなんですね。
私もそう言える人間になりたいです。
予告では全く予想のつかない内容でした。
半信半疑で見に行ったのですが、
見に行って良かったです。
ありがとうございました。
レントさん
共感ありがとうございます。
今読ませて頂いていて、疑問が浮かんだんです。
ラストで8番入り口を降りて行って、同じ電車に乗る、
朝9時40以前に乗っていた電車にまた乗る?
って無限ループがまだ終わってないのでは?
同じ電車には乗れませんよね。
彼女の病院へ向かうところだとしたら?
あの2回目の赤ちゃんが五月蝿いと怒鳴る男のいる
電車は、いったい何?
回想?
なんかラストが訳わからなくなったんですけど、
この疑問、変ですか?
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